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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編
254/672

二五四話 屋敷への帰還


「が……」


「よぉ、クズ野郎。

今どんな気分か教えてくれるか?」


ノアルの前に現れたヒロムは体を光の槍で貫かれるムクロに向けて言うと首を鳴らした。


彼の姿……それは精霊・フレイとディアナとの「クロス・リンク」による「天剣流星」を発動した状態で、その右手にはムクロの体を貫く光の槍が握られていた。


「ひ、姫神……ヒロム……!!」


「知ってるよな?

オマエら「竜鬼会」はオレを狙ってるんだからな」


「ヒロム……」


ムクロに向けて槍を構えようとしたヒロムにノアルは声をかけるが、なぜか彼は目を逸らしてしまう。


ノアルの声に反応したヒロムは彼の方を見るなり彼が目を逸らしているのに気づいた。


「どした?」


「……いや。

すまない、ここを戦場にするような真似をしてしまって……」


「あ?

んなことかよ……なったもんは仕方ねぇし気にすんな」


「そうか……」


「それより……それがオマエの力なんだな」


ヒロムは全身が黒く染まり、鬼のように変化したノアルの姿について触れるように言うが、ヒロムがそれについて言うとノアルは突然謝り出した。


「す、すまない……。

こんな醜い姿を彼女たちに見せてしまった……」


「……」


「ヤツを倒したらすぐに立ち去る。

だから……」


「言ってる意味がよくわかんねぇんだけど?」


「え?」


どうでもいいよ、とヒロムは槍を振り回すと自身の周囲に無数の光の槍を出現させ、その中でヒロムはノアルに向けて告げた。


「そんなのが醜いって言うならこの世の中大抵のことは醜いことだらけだ。

今のこの世の中に形の定まった綺麗なものなんてないんだからな」


「ヒロム……」


「姿でどうこう言われるならオレの中身は半分人間じゃないんだぞ?

それでもこうして普通に生きてんだから気にするなよ。

オマエがどんな姿になろうとオマエがオマエであることに変わりはないだろ」


それに、とヒロムが一言呟くと、どこからともなくガイ、イクト、シオン、真助、ギンジが現れ、ノアルを守るようにヒロムの隣に並び立つ。


「誰がオマエのことをどう言おうとオレたちはオマエを仲間として認めてるから堂々と胸張ってろ」


「ヒロム……オマエら……」


「ノアルくーん!!」


すると屋敷の方からリサがノアルに向けて大きな声で言った。


「かっこよかったよ〜!!」


「……!!」


リサの言葉、それはノアルの今の姿を軽蔑してるようなものではなく、受け入れてるからこそ出てくる言葉だった。


それを聞いたノアルは驚くと共に少し戸惑うが、それでもリサの言葉に勇気づけられたのかヒロムに向けて強い意志を伝えた。


「そうだな……この姿もオレであることの証明だ。

だったらオレは……信じてくれるもののためにこの力を使う」


「……そうか。

まぁ、理由なんてどうでもいいさ」


それより、とヒロムは周囲に出現させた無数の光の槍の切っ先をムクロの方に向けながら敵に冷たく告げた。


「オマエを生かす気もないからここで倒すけど……文句ねぇよな?」


「は……はは。

まさか大本命が現れるなんて……」


光の槍に体を貫かれたはずのムクロはヒロムの出現に対して嬉しそうに笑みをこぼすが、それを見たヒロムは不快感を露わにしながら光の槍を解き放とうとする。


「気持ち悪いな……」


「ここで倒せば……オレはあの方に認められる……」


「……「覇王竜」か」


「よく知ってるね……。

そう、あの方に認められるためなら……オマエたちを巻き添えにしてでも……」


「悪いけど、死ぬなら勝手に一人で死んでくれ」


ヒロムが冷たく告げると周囲の光の槍を撃ち放ち、放たれた槍はムクロを倒そうと穿ち貫いていく。


「……」


槍に貫かれるムクロの姿を前にヒロムはすでに勝敗は確定したと考えて手に持った槍を消した。


が……


「まだ……だ……」


光の槍に串刺しに近い姿にされているはずのムクロは倒れようとせずにヒロムをじっと見つめる。


そしてヒロムを見つめるムクロは不敵な笑みを浮かべながらヒロムとその隣に並び立つガイたちに向けて言った。


「こんなに串刺しにしたら……オレの体の中に溜まってるウイルスが空気中に逃げちゃうなぁ……」


「まさか……」


「そのまさかだよ「魔人」……!!

オマエが付き従うと決めたその男のせいで……」


「何勘違いしてんだ、テメェ?」


ムクロが声を大にして語る中、それを止めるようにヒロムは冷たく言うと続けて敵に向けて容赦のない言葉を放つ。


「もうオマエがオレたちに勝つことは天地がひっくり返っても不可能なんだよ。

オマエはもう……終わってんだよ」


「まだ終わってない……オレのとっておきが……」


「そもそもオマエのウイルスが蔓延してるのならオレたちはすでにその影響を受けているはずだ」


「は……?」


ヒロムに言われて少し冷静さを取り戻したムクロはヒロムたちの様子を確かめるように目を向ける。


ムクロが言うようにヒロムが放った光の槍が貫いたことで生じた傷からウイルスが放出されているならヒロムたちはその影響を受けていてもおかしくない。


だがヒロムたちには一切の変化はなく、ただ平然と立っていた。


「バカな……なぜ……」


「だから言っただろ……終わってるってな。

オレがただ光の槍を放ったように見えたか?

オマエがウイルスをばら撒く能力ってことくらいシオンの「晶眼」で未来予知したから知ってるんだよ。

だからオレはセラの「天霊」の力を槍に込めてオマエの内側から魔力を無力化させた」


「そん……な……」


「オマエの能力はオレの攻撃を受けた時点で飾りに成り下がった。

だから終わってるんだよ」


「お、オレは……」


「……ノアル、やっちまえ」


任せろ、とノアルはヒロムに言葉を返すと両手の爪を鋭くさせながら走り出し、目にも止まらぬ速さでムクロの周囲を駆けながら斬撃を放つ。


「や、やめ……」


「後悔なら……あの世でしろ!!」


ノアルが足を止めると無数の斬撃が一斉にムクロを切り刻むように襲い、そしてそれを受けたムクロは静かに倒れる。


ムクロが倒れて気を失うと敵を貫いていた光の槍が静かに消えていく。


「……終わった」


ノアルはムクロが倒れたのを確認すると安堵のため息をつき、そして元の人の姿に戻ると体勢を崩して倒れそうになる。


「くっ……」

(体に力が……)


「無理させたな」


倒れかけるノアルのもとにヒロムが一瞬で駆けつけると彼の体を支えた。


「ヒロム……」


「大丈夫……なわないよな。

こんだけボロボロになってたら大丈夫かなんて聞く方が失礼だな」


「……すまない。

「魔人」の力をあそこまで解放したのは久しぶりで加減を誤った」


「そうか。

まぁ、無事ならそれでいいさ」


「ヒロム、ノアルの手当ならオレが引き受ける。

オマエは彼女たちの方に行ってやれ」


シオンが駆けつけるなりノアルに肩を貸しながらヒロムに言い、ヒロムもシオンの言葉に甘えるように頷いた。


「そうさせてもらうよ」


ヒロムはノアルをシオンに任せると屋敷にいるリサたちの方へと向かおうとした。


するとリサがヒロムに訊ねるように言った。


「ねぇ、ヒロムくん。

ユリナは?」


「あ?

ああ……忘れてた、イクト」


「はいよ」


イクトが指を鳴らすとヒロムの影が大きく膨らみ、そこからユリナが現れ、続けてユキナ、チカ、ユウナが出てくる。


「あっ、着いたんだ」


「ユリナ〜!!」


「あっ、リサ〜!!」


屋敷の方から手を振るリサと、それに気づいて手を振るユリナ。


どこか微笑ましい光景にヒロムは安心したような表情を浮かべる。


「ヒロム様」


大気の壁をつくっていた夕弦がそれをやめるとすぐさまヒロムのもとへ駆けつけ、そして彼に頭を下げる。


「すいません。

私がしっかりしていれば……」


「誰も怪我してないんだろ?

ならいいさ」


「ですが……」


「自分の不甲斐なさを悔いるのなら次しっかりやってくれればそれでいい」


「……」


「けど、オマエのおかげで助かったよ」


ヒロムは夕弦に頭を上げさせると彼女に伝えた。


「オマエがいたから安心して留守を任せられた。

夕弦がいたからこそオレはエレナたちを屋敷に残していくことも出来たんだしな」


「……ありがとうございます。

力になれていたのでしたら光栄です」


それより、とヒロムは咳払いをすると気まずそうにイクトに視線を向けた。


なぜ視線をイクトに向けるのか、夕弦は気になってしまってヒロムに質問をした。


「ヒロム様。

イクトが何か迷惑をかけたのですか?」


「あ、いや……まぁ、ある意味では迷惑かけられたな」


「ある意味……ですか?」


いまいちヒロムの言葉の意図が分からない夕弦はこのままでは納得いかないらしく、渦中にあるとされるイクトに真相を訊ねようとした。


「イクト、アナタ何をしたの?」


「え、オレが?

オレは何も……」


「……バッツ」


しらばっくれようとするイクトを見かねた真助が横から呟き、それを聞き逃さなかった夕弦はイクトに問い詰める。


「今の真助のはどういう意味?」


「えっと……」


「どうしてバッツの名が出てくるのかしら?」


「それは……」


「それは後回しだ」


イクトが答えあぐねているとガイが横から話に割って入り、そしてヒロムとイクトを見ながら彼は言った。


「今その説明は後にしていい案件だろ?

まずは確かめるべきことがあるだろ」


「待ってガイ。

私は……」


『しょうがないなぁ』


するとイクトの影の中から漆黒の鎧に身を包んだバッツが現れる。


その姿のバッツを知らない夕弦はイクトの影から得体の知れない何かが現れた程度で警戒して構えていたが、バッツは彼女に向けて自己紹介を簡単に行った。


「この姿ならはじめましてだな。

簡潔に説明するが……オレはバッツで今はイクトの精霊だ」


「は?

何を……」


「理解出来ないのは重々承知してる。

だが女、オマエを安心させるのは後回しだ。

今は「竜鬼会」について確認しなきゃならない」


「……アナタは何がしたいの?」


「詮索したいなら好きなだけしてくれ。

ヒロム、オマエらが手にした情報はどこにある」


「それならガイが案内してくれる」


分かった、とバッツはガイとイクトとともに屋敷の中へと入っていく。


バッツに対する不信感を拭えない夕弦は屋敷に入っていくバッツを睨むような目で見ており、そんな夕弦にヒロムは声をかけた。


「悪いけど、オレたちも全員夕弦と同じことを思ってるよ」


「ヒロム様、アイツは……」


「ただアイツが現れたからイクトは「竜鬼会」の能力者との戦いに勝つことが出来た。

少なくともアイツはオレたちが疑ってもオレたちのために動こうとする。

それに……悲しいことにイクトが受け入れてるからな」


「……信じられないわ。

アイツに殺されかけたのに……」


「だな。

けど……アイツがいたおかげで進展もある」


「そういえば「竜鬼会」のことは……」


「ああ、バッツが現れたからこそ知り得る事実が聞ける今だからこそ真相にたどり着ける」

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