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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編
233/672

二三三話 憤怒の炎


炎を纏い、その力を全身に巡らせる紅牙と蒼牙。


炎を纏う両腕・両脚は炎の爪を抱き、背中には炎の翼を持ち、そして炎の尻尾と角を有した姿。


竜装術。


竜と同等とされる力を身に宿し、それを具現させた姿をした二人からは今まで感じられなかった強い力が放たれていた。


力だけではない。


形を得た炎を纏うその姿は竜のようだ。


「マジかよ……」


紅牙と蒼牙の装いを新たにしたその姿を前にイクトは大鎌を握る手に力が入る。


「これはさすがに分が悪いな……」

(さっき以上の力となると隙をつくとかそんな簡単な話じゃなくなるし、何より体勢立て直すために逃げるのも無理だろうし……。

いやいや、オレがここから逃げたら大将に迷惑かけちまうだけだ)


「……てことはここでどうにかして倒すしかないってことだな」


「考えは定まったか?」


頭の中で考えを整理していたイクトに向けて蒼牙は炎を纏いながら彼に向けて言うと、イクトの思考を追い詰めようと言葉を発する。


「オレたちの力を見て貴様は対策を練ろうとしてるようだが無駄なことだ。

オマエの力は応用が効くらしいが純粋な力の強さでは一歩劣る」


「強気な発言が腹立つな」

(事実だから余計にな……)


イクトは大鎌に魔力を纏わせながら構え、蒼牙はイクトの行動を見ると動き出そうと足を動かす。


「そのやる気……どこから来るかは知らないがすぐに分からせてやるよ。

貴様のその力には限界があることを!!」


イクトに向けて叫ぶと蒼牙は走り出し、炎の翼を大きく広げると加速して飛翔する。


こちらに向かってくる蒼牙を迎え撃とうとイクトは影の腕を出現させ、さらに全身に魔力を纏うと影の腕とともに敵に向かって動き出そうとする。


が……


イクトが動き出したその時、蒼牙はすでにイクトの目の前に立っていた。


「!?」


「何かしようとしたか?」


無駄だがな、と蒼牙が右手をイクトに向けてかざすとイクトは爆炎に襲われる形で吹き飛び、イクトが出現させた影の腕は蒼牙の爆炎の熱によって消されてしまう。


「ぐっ……」


爆炎を受けたイクトは吹き飛ぶ中で大鎌の柄を地面に刺すようにして勢いを殺しながら体勢を立て直して構えようとするが、イクトが体勢を立て直そうとした時には蒼牙はすでに眼前にいた。


眼前に迫っていた蒼牙は右手の炎を強く燃やすとイクトに連撃を放ち、放たれた連撃は炎とともにイクトの体に叩きつけられていく。


「が……」


「次元が違うという言葉について貴様は語っていたが今も語ってくれるか?」


蒼牙はイクトの顔に数発拳を叩きつけると炎の尻尾で薙ぎ払うようにイクトを殴り、さらに炎の翼を翻すことで衝撃波を生み出してイクトに叩きつける。


反撃どころか防御すら出来ないイクトは無防備なまま蒼牙の攻撃を受け、全身はどんどん負傷していく。


「くっ……!!」


「どうした、さっさと語ってみろ。

貴様の持論を交えながら偉そうに語ってみろよ」


「この……!!」


蒼牙の攻撃を受ける中、イクトは何とかして流れを変えようと影の腕を出現させようとするが、出現しようとした影の腕を蒼牙は脚に纏う炎の爪で引き裂いてみせる。


「!!」


「……さすがに見飽きた。

影の腕……それが貴様の得意技なのは理解したが散々見せられたせいで芸がなくなってきたな」


蒼牙はため息をつくと周囲に無数の炎の玉を出現させてイクトを蹴り飛ばし、蹴り飛ばしたイクトに向けて炎の玉を同時に放ってぶつけた。


「がぁぁぁ!!」


「無様だな……」


「オレにもやらせろよ」


すると紅牙が蒼牙の横を通っていくとイクトに襲いかかる炎の玉を全て吸収し、自身の炎と同化させていく。


「紅牙……邪魔をするな」


「おいおい、一人で楽しむなよ。

どうせならオレたちで潰そうぜ」


紅牙の介入に蒼牙は邪魔するなと言いたげな目で彼を見ながら言うが、紅牙の言葉を聞くと諦めたのかすぐに彼に向けて言った。


「……勝手にしろ。

その代わり、「オレたち」と言ったからには残しておけよ?」


「当然だな。

とどめは一生にやろうぜ」


けど、と紅牙は炎の翼を広げると飛翔し、飛翔する中で叫ぶように言った。


「とどめさせる手前までは完膚なきまでにオレが潰してやる!!」


楽しげな笑みを浮かべながらイクトに襲いかかる紅牙は炎の尻尾でイクトの体を絞めると持ち上げ、地面に叩きつける。


「!!」


「蒼牙の炎を食らった今のオレは今までの倍じゃすまねぇから覚悟しやがれ!!」


地面に叩きつけたイクトをさらに上空に投げ飛ばすと紅牙はそれを追いかけるように翔び、翔ぶと同時に加速するとイクトに接近すると両手の炎を大きくさせて巨大な拳に変えてイクトを何度も殴る。


殴り、殴り、殴り……イクトの体に何度も炎の拳を叩きつける紅牙は笑顔を崩さない。


「オラオラどうしたぁ!!」


「ぐっ……!!」

(ダメだ……!!

このままじゃ……)


このままじゃダメだ、頭の中でそう思うイクトだが蒼牙と紅牙の攻撃を受けた体は思うように動かない。


そんなイクトに向けて紅牙は楽しそうにある事を告げた。


「そういやオマエにも弱点があるよな。

とくに今の状態だとな」


「何を……」


「オマエが得意なのは地上戦、つまりそばに影がある場所だ。

けど空中戦などの影のないような場所では身に纏う影以外は出来ないみたいだな!!」


紅牙はイクトの頭上へ向かうように高く翔ぶと体を回転させて勢いをつけるとイクトを地に叩き落とすように踵落としをイクトの体に叩きつけ、それを受けたイクトは受け身を取ることも出来ずに地面に叩きつけられ、起き上がることも無く倒れてしまう。


「あ……」


手に持っていた大鎌を握る力すら無くなったのか手放ししまっており、立ち上がる気配もなかった。


紅牙は着地すると上空に無数の炎の玉を出現させると指を鳴らし、全ての炎の玉をイクトに向けて降り注がせる。


「くらいやがれ!!」


「!!」


身動きの取れぬイクトに襲いかかる炎の玉は爆発を起こし、逃げることも出来ぬイクトを追い詰めていく。


「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」


爆発に巻き込まれるイクトの叫びが爆音とともに聞こえ、それを聞く紅牙は面白そうに笑っていた。


「ハハハハ!!

かつての「ハンター」は地に堕ちた!!」


「……殺す気か?」


蒼牙はため息をつくと炎の尻尾を振り、爆発を起こす炎を吸い込む形で紅牙の攻撃を消していく。


それによってイクトは致命傷にも近いダメージを免れるが、すでに致命傷に達するほどのダメージを受けている彼は倒れたまま動けなかった。


「くっ……」


「さて、貴様もどうやらここまでのようだな」


倒れたイクトを憐れむような目で見ながら蒼牙は歩み寄ると彼に向けて話し始めた。


「素直に依頼をこなし、賞金を稼ぐことに専念しておけばこんな運命には到らなかったはずだ」


「……どういう……意味だ……?」


全身に走る痛みに耐えながら声を振り絞るイクトは蒼牙が何を言いたいのか聞き出そうとする。


「オマエは……一体……」


「ああ、貴様はオレたちを知らないよな。

オレたちは……かつて貴様に倒された「リブラ」の指導を受けていた能力者だ」


「リブラ……だと!?」


「リブラ」。

蒼牙の口から出たその言葉……いや、その名を聞いたイクトは驚きを隠せなかった。


それはなぜか?


その理由はイクトが「リブラ」について知っているからだ。


「アイツに……弟子が……?」


「意外か?

あの人はオレたちに生きるための術を教えようとしてくれていた。

賞金稼ぎになるための戦い方、情報屋になるための諜報活動の全て……あの人はオレたちに全てを教えようとしてくれていた」


なのに、と蒼牙は怒りを抱きながら拳を強く握ると倒れるイクトを睨みながら吐き捨てるように言った。


「貴様はあの人を裏切った!!

あの人が大切にしていた居場所を壊し、あの人の在り方を否定した!!」


蒼牙は怒りを抑えられなくなったのか言葉を発しながらイクトの体に蹴りを入れる。


「あの人だけじゃない!!

貴様は賞金稼ぎや情報屋全員を裏切り、全てを奪った!!

集会所を襲い、あそこにいた人を恐怖に陥れた!!

あの人は……あの人は!!」


蒼牙は強い蹴りを入れてイクトを蹴り飛ばす。


蹴り飛ばされたイクトは地面を何度も転がるようにして倒れ、倒れる中でイクトは「リブラ」という男について思い出していた。


情報屋と賞金稼ぎを両立させていた男。

熱海に設けられた情報屋の集会所を取り仕切っていた男はかつてイクトが姫神ヒロムの命を狙っていた際に真実を知るために敵対した。


そして敵対したがゆえに戦いは起き、戦いの果てにイクトは男を倒した。


倒した、そう最悪の形でだ。


「貴様はあろうことかあの人の力を否定し、あの人の努力を根底から力で覆し、そして……殺した!!」


違う、とイクトは何とかして立ち上がると蒼牙に問いただすように言った。


「オレは殺してない……!!

たしかにリブラと戦ってオレは勝ったけど……」


「直接手を下してないから殺してないってか?

貴様があの時、あんなことをしなければあの人の人生は終わったも等しい!!」


「違う……アイツは……」


「何が違うんだ!!

オレたちに全てを教えてくれていたあの人を殺す原因は全て貴様にあるはずだ!!

貴様が……貴様が真実を知ろうとしたせいで!!」


彼らがあの男の弟子だったということとともに蒼牙が放つ言葉はイクトを例えようのない罪の意識で押し潰そうとしていた。


「オレの……せいで……?」


「貴様が「覇王」を始末していれば……あの人は今も生きていた!!

貴様が手を下してないにしても……あの人はあの日去った!!

貴様が殺したんだ……あの人を、オレたちの師匠を!!」


蒼牙は頭上に蒼い炎の玉を出現させ、さらに紅牙はそれに自身の炎を吸収させていく。


それにより数十メートルはあるであろうサイズの炎の玉が完成し、紅と蒼の炎が入り交じった玉は熱波で周囲のものを焼こうとする。


「仕えるべき存在を間違えたことを後悔させてから殺すつもりだったが……もう貴様を生かす必要もない!!

消え失せろ!!」


蒼牙は超巨大な炎の玉をイクトに向けて放ち、放たれた炎の玉は周囲を焼きながらイクトに迫っていく。


「くっ……」


立ち上がるだけで精一杯だったイクトは避けたくても動けない。


ただ迫り来る攻撃を見ているしかできなかった。


「ここまでか……」

(オレのしたことは……間違いだったのか……?)


イクトの心が折れ、諦めようとしたその時だ。


『BADだな。

これじゃあ楽しめねぇだろ』


どこからともなく声が響き、そして気がつくとイクトから紫色の煙に包まれていた。


イクトを包む紫色の煙はさらに広がると迫り来る炎の玉と接触し、炎の玉を天高くへと打ち上げてしまう。


打ち上げられた炎の玉は天高くに飛んでいくと何も無い天空で爆発を起こして消えるが、炎の玉を打ち上げた紫色の煙はイクトの周囲から消えていない。


「「何!?」」


「……!?」


抗う力がないと思っていた紅牙と蒼牙は驚き、何が起きたのか分からないイクトも言葉を失っていた。


すると紫色の煙がイクトの前で人の形を成すかのように集まっていき、そして言葉を発する。


『オマエがここでくたばると今後に影響が出る。

オレの計画を完成させるためには生きてもらわねぇとな』


形を得た煙はその姿を現すように煙を消していくが、その姿を見たイクトはただ驚くしかなった。


「オマエは……!!」


そこにいるはずのない、もはや存在するしないと思っていたものが現れたのだから……


「なんで……オマエが……!?」


『全ての真実を知るからだ。

そしてそれを……オマエに伝えるためにな』


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