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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編
218/672

二一八話 否定への序章


「早速だがオレに付き合ってもらうぞ」


突然現れた青年……一条カズキはヒロムや真助に冷たい視線を向けながら言うと彼らを視界に捉えて様子を伺うように立っていた。


カズキの登場、それに驚きを隠せないヒロムたちだが、カズキのことを知らないユリナたち三人の少女は誰なのか気になっていた。


「ねぇ、ヒロムくん。

あの人は誰……?」


「アイツは一条カズキ……「一条」の当主にして「十家」最強の男だ」


「あの人が……「十家」の一人……」


「しかも最強って……」


「ヒロム様……どうしたらいいんですか?」


一条カズキに対して不安を抱くユリナたちはヒロムを見つめ、ヒロムは彼女たちを安心させるために何か言おうとした。


「……大丈夫だ。

オレが何とかするから……」


「何が大丈夫なんだ?

まさかオレを倒す気でいるのか?」


ヒロムの言葉を遮るように次々にヒロムを問い詰めるカズキはさらにヒロムに向けて言った。


「オマエのその強さの根源である精霊の力、何かを想う感情が力に変わるその特異性……そしてそれらを駆使して一人の戦士として戦おうとするオマエの姿。

それは認めてやる。

いや……それしか認めることの出来る点はない」


「何?」


「何かを守るため、誰かのために……そんなくだらないことのために戦おうとするその心が気にいらない。

他者への感情など力の前では何の意味も成さない」


「だとしてもオレはコイツらや仲間の「想い」に応えるために戦う。

力の前で潰されそうになるならオレが守る、それだけだ!!」


愚かだ、とカズキはヒロムの言葉に対して一言だけ冷たく告げると全身から殺気を放ち始める。


トウマやバッツ……これまで多くの敵と戦ってきたヒロムたちが圧倒されてしまうほどの強い殺気。


その殺気はヒロムたちの後ろにいるユリナたちも感じ、そしてその殺気を前にしてユリナとチカは怯えてユキナの手を強く握り、ユキナは二人を心配させぬように怯えぬように振舞おうとしているが少し体が震えていた。


「やめろ一条カズキ!!」


ユリナたちが危ない、そう判断したヒロムはカズキにやめるように言うが、相手はそう簡単に耳を傾ける男ではない。


「守りたいものが潰されそうになるなら守るのがオマエの戦いなんだろ?

だったら守ってみろ……他人に縋るのではなく己の力でオレを倒してみろ」


「オマエ……」


「やるしかねぇな、ギンジ!!」


「そうだな!!」


真助は二本の小太刀・霊刀「號嵐」を、ギンジは地面を殴ると自身の武器であるハンマーを出現させてそれを手にして構える。


ユリナたちを心配するヒロムは一瞬躊躇うが、そんなヒロムに向けて真助は強く言い放った。


「迷ってんじゃねえよ!!

守りたいなら構えろ!!」


「……分かってる!!」


アイリス、とヒロムが叫ぶとユリナたち三人の少女の前にヒロムの精霊の一人である「零槍」アイリスが現れる。


「マスター、ここは任せてください」


「……分かってるなら頼む。

ユリナたちを……守っててくれ」


「ヒロムくん!!」


アイリスにユリナたちを守るように指示したヒロムは構えようとしたが、不安を隠せないユリナはそんなヒロムを引き止めてしまう。


ヒロムがユリナの方を見ると、彼女は今にも泣きそうな顔で自分のことを見ていたのだ。


「ユリナ……」


「ま、負けないでね」


「……!!」


今にも泣きそうなユリナは押し寄せる不安に耐えながらヒロムに向けて一言伝え、それを受けたヒロムは拳を強く握るとユリナに……ユリナたちに向けて強く言った。


「任せろ!!

絶対に勝って帰るから待ってろ!!」


「う……うん!!」


無駄なことを、とカズキは冷たく一言放つとヒロムを睨みながら言った。


「一時の安心を与えるだけの飾りの言葉でどうにかなるとでも思っているのか?」


「オマエにとっては無意味な言葉でもオレには意味のある言葉だ。

それをオマエに否定されてたまるか!!」


「そうか。

なら教えてやろう……計画の鍵程度のオマエには超えられない壁があることを」


カズキがヒロムに向けて手をかざし、それを見たヒロムたちは何か来ると思って力強く構えようとした。


構えようとしたその時、ヒロムたちは自分の目を疑った。


「な……!?」


「これは!?」


ヒロムたちはカズキが現れるまで人を迎えに行くために目的地に向かおうと歩いていた。


そのはずなのに……今ヒロムたちはなぜかどこかの建物内にいたのだ。


照明もなく、外から少し差す光だけが照らしている薄暗い建物の中……。


いつの間にかヒロムたちはそこにいたのだ。


そして先程までヒロムたちの後ろでアイリスに守られていたユリナたちはアイリスとともにヒロムから離れた位置で檻のようなものの中に閉じ込められていた。


「ヒロムくん!!」


「ユリナ!!」


「なんでお嬢様やチカがあんなところに……」


「女がいたから負けたなどと言い訳されては興が冷めるからな。

特別に観覧席を用意してやった」


「ここは一体どこなんだ!!」


「うるさい男だな「覇王」よ。

女が無事ならそれでいいだろ」


ふざけるな、とヒロムは「ソウル・ハック」を発動させると全身に白銀の稲妻を纏い、そしてカズキに向かって走り出した。


カズキに向かって走り出したヒロムの後を追うように真助とギンジも走り出すが、カズキは動こうとしない。


「オマエが「十家」最強だとかは関係ない!!

邪魔をするなら……ここで倒すだけだ!!」


ヒロムはカズキに接近すると拳に力を集め、渾身の一撃をカズキに向けて放った。


しかし……


「遅い」


白銀の稲妻を纏いしヒロムの拳、カズキはそれを素手で掴むようにして止めてしまう。


「な……」


「これでオレが倒せると思ったか?

甘いな……」


「だったらオレがやってやるよ!!」


真助は自身の能力「狂」の黒い雷を小太刀に纏わせるとカズキに斬撃を放つ。


放たれた斬撃は迷うことなくカズキに迫っていくが、カズキはヒロムを蹴り飛ばすと斬撃を握り潰してしまう。


「な……んだと!?」


「鬼月真助……オマエの能力がどの程度のものか試したかったが今のでよくわかった。

オマエの実力はその程度だ」


「コイツ……!!」


「まだオレがいる!!」


カズキが真助に気を取られていると、カズキの背後にギンジが現われてハンマーを勢いよく振り下ろして攻撃を食らわせようとする。


しかし……


「人体実験の失敗作に用はない」


カズキは右手人差し指で迫り来るハンマーを弾き、ギンジの額を軽く指で突く。


額を指で突かれたギンジは何か大きな力に襲われて勢いよく吹き飛んでいく。


「うわぁぁぁぁ!!」


「ギンジ!!」


「どういうことだ……!!

なんでオレやヒロムの攻撃が効かないんだ!!」


自分たちの攻撃を通じない、その結果に戸惑う真助だが、そんな真助に向けてカズキは冷たい眼差しを向けながら告げた。


「最強には最強たる所以がある。

オマエたち如きに覆せるほどオレの力は弱くない」


「この野郎……!!」


「だとしてもオレはオマエを倒す!!」


ヒロムは体勢を立て直すとフレイの武器である大剣を装備してカズキに攻撃を仕掛けるが、カズキはそれを何の苦労もせずに素手で防いでしまう。


「くっ……!!」


「それが「ソウル・ハック・コネクト」か。

己の弱さを理解したからこそ完成したオマエにしか出来ぬ芸当。

……だがその程度だ」


カズキは拳を大剣に叩きつけ、そしてヒロムが手にする大剣は一瞬で砕け散ってしまう。


「何だと……!?」


「その程度だと言ったはずだ。

オマエの実力はこうも容易く止められる程度しかない」


「……だからって諦めるわけねぇだろ!!」


ヒロムはすぐに両手に自身の精霊の一人であるマリアの武器であるガントレットを装備してカズキに何度も拳を叩きつけようと殴るが、その拳の連撃をもカズキは右手一つで全て防いでしまう。


「この……!!」


攻撃を全て防がれたヒロムはガントレットに白銀の稲妻を集中させ、さらにその上に龍の形をした魔力を纏わせる。


そして、力を集めたガントレットで敵を倒そうと再びカズキに殴りかかる。


「これでどうだ!!」


「……無駄な足掻きだ」


ヒロムが放った拳をカズキは素手で止めるとすかさずヒロムの拳を掴むように握り、軽く力を入れるとガントレットを破壊してみせる。


カズキはヒロムの拳から手を離すと右手でヒロムの頭を掴み、ヒロムを地面へ叩きつける。


「がっ……!!」


「ヒロムくん!!」


ヒロムが苦戦する姿を目の当たりにするユリナは彼の名を呼ぶように叫ぶが、それをかき消すようにカズキはヒロムを蹴り飛ばしてしまう。


蹴り飛ばされたヒロムは勢いを増しながら壁に激突し、全身に痛みを受けながらゆっくりと地面に倒れてしまう。


「ヒロム!!」


「この……!!」


やめておけ、とカズキはヒロムの敵でも取るかのように動こうとした真助とギンジに告げると続けて言った。


「オマエたちの力ではオレには及ばない。

ましてオマエたちの仕えてる主人はあのザマだ」


「オマエ……何が言いたいんだよ?」


「仕えてるだけのオマエたちはあの男より弱いと言ったんだ。

主人を倒されたオマエたちに戦うだけの力は……」


まだだ、と倒れたはずのヒロムは痛みに耐えながら立ち上がるとカズキを視界に捉えながら構えた。


そのヒロムの姿を見たカズキは少し意外そうな顔をしていた。


「まだやるのか?

オマエの実力とオレの実力がどれだけ違うか理解してるはずだ」


「だからって諦める気はない……!!

オマエが立ちはだかるならオレは戦う!!」


「……一つ教えておいてやろう。

オマエは確かにオレの計画に不可欠な鍵だ。

失うわけにはいかない人材だがそれと同時に……役に立たないのなら始末して代わりを探すことも視野に入れている」


「まるで人が殺されぬように守ってもらってると勘違いしてるような言い方だな……。

まぁそれを利用して作戦立てようとしたことはあるけどな」


「利用して、か。

利用されてるのはオマエだろ、「覇王」。

自分を利用し、全てを否定しようとしたあの男を殺したとしてもオマエはこれからも誰かに利用されるだけだ」


「だとしてもオレは前に進むために戦う!!

オレの全てを使ってでも!!」


ヒロムは決意を固めると白銀の稲妻を大きくするが、そんなヒロムに向けてカズキは呆れながらヒロムに向けて言った。


「力の差を理解していないのか?

どんな手段を持っていてもオマエはオレには勝てない」


「どうかな?

ガイとソラからオマエの能力について聞いた時……オレは新しい力を閃いた!!」


「新しい力だと?」


「見せてやるよ、その新しい力……「アサルト・コネクト」をな!!」


ヒロムの叫びに呼応するように白銀の稲妻が周囲に放たれ、放たれた稲妻は姿を変えていく。


大剣、刀、槍、銃、ハンマー、大鎌、小太刀、苦無、杖、ガントレット、剣……それらの武器は全てヒロムの精霊たちの武器であり、その武器はヒロムの周囲を舞っていた。


それを見た時、カズキはヒロムが何をしようとしているのか理解した。


「精霊の武器を同時に出現させてオレの真似をしようということか……。

付け焼き刃にも程がある」


「付け焼き刃かどうかはその身で味わって確かめろ!!」


ヒロムは自身の精霊であるフレイとマキアが使う二本の大剣を手に持つと走り出し、それに追従するように他の武器も動き出す。


「いくぞ!!

オレたちの力……「ソウル・ハック・アサルト・コネクト」の力を見せてやる!!」


「……ならば見せてもらおうか。

オマエの新しい力とやらを」

(そして見せてみろ。

限界を知らぬオマエのその力を……)

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