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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編
213/672

二一三話 死神狂劇

「狩られたい命から前に出て来やがれ!!」


影の腕が三日月の描かれた仮面をつけた兵士たちに向けて襲いかかっていく中でイクトも大鎌を構えて走り出し、敵を殲滅しようと戦闘に入る。


そのイクトの姿に対してキリハは兵士たちに向けて命令を下した。


「オマエたちの力を見せてやれ!!

その無知な死神と愚かなヤツらの命を奪え!!」


「「はっ!!」」


キリハの命令を受けると兵士たちは短剣を手に持つと走り出し、迫り来るイクトとガイとシオンに接近しようとする。


「ガイ、イクト……そいつらは任せるぞ」


「……分かった」


「さっさと勝ってこいよ、シオン!!」


当然だ、とシオンはイクトの言葉に対して強く返すと雷を全身に纏い、自らに襲いかかろうとする兵士数人を一瞬で蹴散らすとキリハの方へと走っていく。


キリハの方へとシオンが走っていくのを確認した兵士が追いかけようとするが、それを阻止するように影の腕が拳を強く握ると殴り飛ばしてみせる。


「!!」


影の腕の援護を受けたシオンはそのままキリハに接近して襲いかかり、それを見届けたイクトは兵士たちに告げた。


「野暮なことするなよ……。

シオンの相手はあの男……オマエらの相手はオレだろ!!」


イクトの影が大きく広がっていき、そして広がった影から影の腕が現れ、兵士の数の倍以上になった影の腕は敵を捕らえようと動き出す。


が、兵士たちは体に魔力を纏わせると加速し、影の腕を避けながらイクトに対して徐々に接近していた。


「イクト!!」


ガイは敵を刀で斬り倒しながらイクトの方へと助けに向かおうと考えるが、それを阻むように次から次に兵士が行く手に現れる。


「この……!!」


「大丈夫だガイ。

とりあえずそっちにいる分は任せた」


「何勝手なこと……」


大丈夫だよ、とガイを安心させるようにイクトは言うが、無数の兵士たちはイクトが出現させた影の腕を突破してイクトに攻撃を放てるであろう距離まで迫っていた。


四方八方を囲む兵士と囲まれて逃げ場のないイクト。


傍から見れば大丈夫なはずがなかった。


が、そんな状況下にあるはずのイクトは余裕のある表情を浮かべながら大鎌を振り上げた。


そして振り上げられた大鎌は魔力を纏うとその上にさらに影を纏い、巨大な斬撃を生み出していく。


「!!」


何か来る、そう感じた兵士たちは回避行動に移行しようとした。


だがイクトはそんな兵士たちを嘲笑うかのように冷たく一言告げた。


「避けようとか考えてるなら無理だ。

オマエらは今……オレの影の支配の中にいるんだからな!!」


イクトが敵に告げると、回避行動に移行しようとしている兵士たちの背後から彼らが避けたはずの影の腕が迫って来ていた。


「な……」


後方から来る影の腕に気づいた兵士たちは仮面越しでも分かるほどの驚きを見せ、迫る影の腕を短剣を用いて破壊しようとする。


が、イクトはそんな彼らの行動について指摘するかのような言葉を口にした。


「他人の命を狙うにしては危機管理がなってないんじゃねぇの?

あらゆる手を想定して殺しに来ないと……逆に殺されるぞ」


影の腕はイクトの言葉を合図にするかのように次々に分裂して数を増やし、増えた影の腕は敵である兵士たちの体を掴み、手や足を強く握ると身動きが取れないように拘束していく。


「くっ……!!」


「この……!!」


ムリだ、とイクトは大鎌が纏う力を強くさせながら頭上で大きく振り回しながら兵士たちに告げる。


「そいつは掴んだものを離さない。

そして拘束を振り解こうとすれば……」


イクトの言葉の最中に影の腕に拘束される一人の兵士の体の骨が砕ける音が鳴り響く。


「ギャァァア!!」


「……骨砕いてでも動き止めようとするからって言おうとしたのに。

まぁ……いいか!!」


イクトは大鎌を握り直すと体を回転させ、さらに大鎌に纏わせた力と斬撃を身の丈以上の大きさの巨大な斬撃に変化させながら周囲で影に拘束される兵士たちに狙いを定める。


「さぁ、斬られて倒れろ!!

黒滅斬衝・大旋天!!」


イクトは回転しながら巨大な黒い斬撃を周囲に無数の斬撃に変えて放ち、放たれた斬撃は兵士たちを次々に斬り倒していく。


が、その中には斬撃の直撃を免れた者が何人かおり、助かったと内心安心したよう様子を見せていた。


しかしそれで終わるわけもなかった。


難を逃れた兵士たちを拘束する影の腕はその力を強めていくと兵士たちの手足の骨を握り潰し、骨の砕ける音が周囲に響いていく。


「ギャァァア!!」


「影殺劇・狂骨滅葬」


イクトが指を鳴らすと倒れる兵士も含めて影に捕らわれた兵士たちの骨が砕ける音が次々に響き、さらに影の腕が巨大な腕となると敵を次々に叩き潰していく。


無数の影の腕が繰り広げる惨劇にも似た攻撃、その攻撃を前にして兵士たちは呆気なく倒れていくが、増援の兵士が新たに姿を現す。


「まだいるのかよ」


「懲りないヤツらだな……」


ガイは刀で斬り倒そうと構えようとするが、イクトはそれを止めると彼に言った。


「任せときなさいって」


イクトは自分の影を大きく広げるとなぜかそれに目掛けて大鎌を振り下ろして斬撃を放つ。


放たれた斬撃は影の中に吸い込まれるように音もなく消えるが、何も起きない。


「おいイクト。

何を……」


「黒滅斬衝・柳葬!!」


するとイクトの影と周囲に倒れる兵士の影から無数の影の刃が放たれ、それらは増援として現れた兵士たちの体を貫いていく。


恐ろしいことに敵を貫いた刃は周囲の兵士を巻き込むように無数の刃を放ち、そして周囲の兵士を倒していく。


「ぐぁぁぁあ!!」


無数の影の刃に貫かれた兵士、そして影の腕によって再起不能にまで追い詰められて倒れた兵士……。


それらのことを全てイクトがたった一人でやったのだ。


「……さて、終わりか?」


イクトは大きく広げた影を元のサイズに戻すなり大鎌を握り直しながらキリハに冷たい視線を送りながら言った。


キリハはシオンの攻撃を防ぐ中でイクトに向けて強く言った。


「何故だ!!

オレの知る「死神」にこんなこと出来るはずがない!!

まして殺しを躊躇うようなヤツが躊躇いもなく……」


「何言ってるんだよ?

殺しが出来るってことは生かすことも出来るだぜ?

生殺与奪、生と死の隣り合わせの事象を管理するのが死神の務めだ」


それに、とイクトは首を鳴らすとキリハに向けてある事を指摘するように言った。


「オマエの知る情報……古いんだよ。

大将のことはともかくガイやシオン、オレのことなんていつの情報なのか耳を疑っちまうぜ」


「情報に間違いはない!!

間違うはずが……」


「だとすればオマエの中のオレたちの評価を改めるんだな」


黙れ、とキリハはシオンの攻撃を避けるとイクトに対して叫ぶように言った。


「その手で家族の人生を狂わせた雑魚が偉そうに語るな!!」


「家族の、ね……。

だから戦うんだよ。

同じ過ちを繰り返さぬようにオレは前に進むための道を切り開くためにな!!」


「ふざけ……」


「どこ見てやがる?」


イクトの言葉に苛立ちを隠せないキリハはそれを顔に出すが、油断したのかシオンの攻撃が迫っているのに気づかずに殴り飛ばされてしまう。


「!!」


「他人を挑発する暇があるなら目の前の敵倒せや、ボケが」


「くっ……アンタらは……オマエらはここで殺す!!

来い!!」


キリハが指を鳴らすとさらに兵士が現れる。


が、それを見たガイは刀を鞘に収めると体勢を低くしながら抜刀する構えを取った。


「……悪いなイクト。

少しはオレにもやらせろよ」


ガイは一歩前に踏み出すなり音も出さずに消え、そして気づけば新たに現れた兵士たちの背後で刀を抜刀して立っていた。


いつの間に、と兵士たちがガイの出現に驚く中、目にも止まらぬ速度の無数の斬撃が兵士たちを一掃していく。


「夜叉殺し・月凪。

雑魚相手には味わう暇もない剣技だ」


ガイは刀を鞘に収めながら言い、カチンッと刀がさやに収まる音を立てると兵士たちは一斉に倒れる。


おお、とイクトはガイの技に感激して拍手をし、シオンもその様子を見てどこか誇らしげに思いながらキリハに言った。


「これがオレたちの実力だ。

身の程知らずのガキでも理解出来たよな?」


「ちっ……!!

雑魚を数匹倒した程度で!!」


キリハは全身に魔力を纏うとシオンの背後へ一瞬で移動し、そして二本の短剣を手に持つと後ろからシオンの首を切り落とそうとした。


が……


シオンはそれを一切目視することなく回避し、雷を拳に纏わせるとキリハの顔面に拳を叩きつけて殴り飛ばした。


「がっ……!!」


「……オマエ、ギンジより弱いな」


「さすがシオン。

やる時はしっかりやるね」


キリハを殴り飛ばしたシオンは敵の実力に呆れてしまい、そんなシオンのもとへとガイとイクトは駆けつけると敵を倒そうと構えた。


殴り飛ばされたキリハは血を吐き出すとシオンたちを睨みながら立ち上がり、そしてイライラしながら彼らに言った。


「バカにしやがって……!!

オレの想像より強いからってそんなに嬉しいか?」


「いやいや、オマエがオレたちのことどう評価してるかとか関係ないし。

事実としてオレたちの方が強いだけだ」


「竜装術を与えられた能力者って言っても大したことの無いヤツだな。

弾馬銃哉の方が強かったからな」


「……オマエらァ!!」


イクトとシオンの言葉に苛立ちが限界に達したのかキリハは身に纏う魔力をさらに大きくし、そしてシオンを見ながら言った。


「……オマエだけでも殺す。

オレの方が優れていることを証明するためにな」


「……コイツ、精神安定してなくない?」


「どうでもいい。

倒せば関係の無いことだ」


「これ以上は好きにさせない。

……オレの力を見せてやる!!」


するとキリハのもとへと風が集まり始める。


何かをしようとするのは分かるが、一体何をしようというのか?


それが分からないガイとイクトは構えて警戒するが、シオンは雷を全身に纏うと走り出した。


「シオン!!」


「敵が何かをするのを待つくらいなら何もさせないように倒す方が早い」


ガイはシオンを止めようとするが、シオンは敵を倒そうと止まらずに走っていく。


(至近距離で雷を叩き込む。

そして直後に拳の連撃を食らわせれば……)


「アンタ……本気で走ってるのか?」


シオンが頭の中で倒す方法を考えていると、いつの間にかキリハが自分の横を通り過ぎていた。


「!!」


いつの間にここまで来たのかと驚いて足を止めてしまうシオンだが、そんなシオンの体に無数の斬撃が襲いかかる。


そしてキリハはシオンを見ながら告げた。


「……少し力を使えばこれだけの力の差が生まれる。

楽に死ねる方法で死ねばよかったのにな……」


「な……」


「シオ……」


シオンの名を叫ぼうとするガイとイクトの横をもキリハは通り過ぎて行き、そして二人もシオンと同じように斬撃に襲われてしまう。


「「!!」」


「……情報通りじゃないか。

オマエらの力はオレには及ばない。

この「刃爪竜」の力の前ではな」


「この……」


「手を出すな」


シオンはガイとイクトに一言告げると雷を強く纏いながらキリハの方を見ながら構え直した。


その姿を見たキリハは笑みを浮かべながらシオンに向けて驚きの一言を発した。


「そうでなくちゃな……。

でなきゃ証明出来ない……純血のアンタよりハイブリッド種で生まれたオレの方が優れていることを!!」


「純血……だと?」


「ああ、そうだ。

オレの中には「月閃一族」の血が流れている!!」

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