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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編
202/672

二〇二話 難解な心


「今朝はすまなかった」


話を終え、リビングから出たヒロムとガイ、ノアル。


どこかへ向かう中でガイはヒロムに謝罪をした。


「今朝のことか?」


「ユリナに聞かれてた……」


「ああ、おかげでシンクのところ行く前に怒られた。

勘弁して欲しいよまったく……」


「悪かった。

オレの注意不足で……」


気にしてないさ、とヒロムは優しくガイに言うと続けて話した。


「いつかは話さなきゃならなかったことだし、ちゃんと説明する余裕がなかったからしなかったオレのせいでもある。

だから気にしなくていいさ」


「けど……」


「あんまりしつこく謝られると逆にイラッとするからほどほどにしてくれよ?」


「あ、ああ……悪い。

けど……どうなるんだ?」


「敵のことか?」


「オマエのことだよ。

その……体の四割はすでに人間じゃないんだろ?

何か異変は起きてないか?」


ヒロムの体を心配するガイだが、心配そうなガイに反してヒロムは呑気に欠伸をしていた。


「ふぁ……さぁな。

いつも通りだけどな」


「そうか……」


「別にオレは気にしてねぇよ。

オレが自分で選んでこうなったんだからな」


「怖くないのか?」


するとノアルが話に入ってくるとヒロムに質問した。


「人であった自分が人で無くなっていくことへの恐怖はないのか?」


「恐怖、か……そんなのはないかな。

どっちかと言うとこの先ユリナたちと今までのように接していいのか不安になるくらいだ」


「なぜ彼女たちのことを?」


「……アイツらが接してくれてたのは人間のオレだ。

人間で無くなりつつあるオレは恐怖の対象だと思うからさ」


「……ならオレも怖がられてるんだな」


「ノアルは能力のせいだろ?

だから見た目も中身も人げ……」


「それならオマエも同じだ」


ヒロムのノアルに対する言葉を遮るかのようにガイはヒロムに向けて伝えた。


「姿や中身が変わってもオマエはオマエだ。

精霊になりつつあってもオマエであることに変わりはない。

ユリナたちもきっとそんなこと気にしてないさ」


「……だといいけどな」


「それにオマエが何を言おうとアイツらがそう簡単に離れてくと思うか?

簡単に離れるようなら今までオマエを支えてくれてないだろ?」


「たしかにな……。

物好きなヤツらだから」


「そうさせてるのはオマエの存在だ。

オマエのために何かしようとしてるアイツらを信じてやれよ」


「……分かってるさ」


ガイに言われてどこか恥ずかしいのか照れながら返事をするとヒロムは足早に歩いていく。


「ちょっとアイツらの様子見に行くか……」


「オレたちはついて行かない方がいいか?」


好きにしろ、とヒロムが言うとガイはノアルとともに後を追った。



***


同じ頃のユリナの部屋。

正確にはヒロムの屋敷に宿泊するにあたってユリナが借りてる部屋だ。


ユリナはそこにヒロムとともに屋敷に来たユカリとミサキを招き、女子同士の楽しい会話をしていた。


そこには三人の他にリサとエリカ、チカ、エレナ、アキナ、ユキナ、レナ、そしてハルカがおり、女子だけのトークはかなり盛り上がっていた。


「あら、ヒロムさんの魚嫌いはまだ健在なんですね」


「そうなんです。

ユカリさんも経験あるんですか?」


「ええ、ありますよ。

夕飯に美味しいお魚料理をご用意したのですが、部屋に入るなり「魚臭い」って鼻を指で摘みながら嫌そうな顔で言われました」


「今魚の臭いだけでヒロムくん機嫌悪くなるんですけど、昔からなんですか?」


「昔からですよ。

ねぇ、ミサキ?」


「そうね、あの人は出会った時から魚だけは死んでも食べないって言ってましたからね。

そういえばヒロムさんにコーヒーと一緒にラスクを出したのですがすごく喜んでくださったんです」


「そうなんですか!?

作り方教えてもらえませんか?」


「うふふっ、構いませんよ」


「ありがとうございます!!

あっ、そういえば……」


ユリナとユカリが楽しそうに話す中でミサキも混ざり、そこでさらにヒロムの話は盛り上がっていくが、ハルカは一人唖然としていた。


「あの……」


「どうかしたのハルカ?」


「何よハルカ。

まさかまた水差すつもり?」


「え、ええ……あの……何でそこまで姫神くんのことで盛り上がれるの?」


「「「??」」」


ハルカの何気ない一言、ヒロムの話でここまで盛り上がれることへの疑問の一声だが、ユリナたちは……ハルカ以外は何を言っているんだと言う顔をしていた。


そしてハルカに向けてユリナとリサが言った。


「ヒロムくんの話楽しくないの?」


「楽しめるような話してないよね……?」


「ハルカの話よりヒロムくんの話の方が面白いのに?」


「リサ、アナタ失礼よ」


「何、またヒロムのことで文句あるの?」


「そ、そういうわけじゃないんだけど……」


ユリナとリサの言葉を前にしてどこか納得いかない様子のハルカにレナはガンを飛ばすかのように冷たい視線を向け、ハルカは慌てて訂正しようとした。


「よ、よく分からないのよね。

姫神くんの何がいいのかが……」


何でなの、とハルカの言葉にユリナ、エレナ、リサが不思議そうな顔しながらハルカに向けてヒロムについて話していく。


「ヒロムくんカッコいいと思わないの?」


「それならシオンくんの方がカッコいいと思う」


「ヒロムさんはすごく真面目な方なんですよ?」


「真面目な人は授業中寝ないしユリナにノート書いてもらったりしないと思うけど……」


「ヒロムくんが優しいのも分からない?」


「なんでリサにかぎってはそんな挑発的な言い方なのか知らないけど……彼のどこから優しさが感じられるの?」


三人の抱くヒロムの話を聞いてもハルカは首を傾げながら不思議そうな顔で返答し、それを聞いたユリナたち三人はため息をついてしまう。


その三人の反応にハルカは思わず焦ってしまう。


「えっ……もしかして私がおかしいみたいなことになってる?」


「ハルカ……ヒロムくんに対して変な偏見抱いてるならやめた方がいいよ?」


「偏見も何も彼の私に対するあの態度はどう見ても酷いと思うんだけど……」


優しく諭そうとするユリナに向けてハルカは冷静に返すとこれまでのヒロムと自分のやり取りをいくつか振り返った。


「ちょっと注意したら私の事バカって言ってくるし情緒おかしいとか言われるし、親切で注意したのに偉そうって嫌そうな顔されるし、私が何か言うとすぐ舌打ちするし……彼ってば私が何か言うとすぐにバカにしたような言い方するのよ?」


「で、でもハルカもヒロムくんが嫌がってるのにしつこくしてるんじゃないの?」


「違うわよエリカ。

ユリナが頑張ってるのに彼は真面目に勉強しないからダメなのよ」


「でも私はヒロムくんのためにやってるから気にしてないよ?」


「ほら、ユリナがこう言ってるんだからいいじゃない」


「ダメ、しっかりしないといい大人になれないわよ」


「ひ、ヒロムさんは立派な方です!!」


「え、エレナさん……?

少しは厳しくするのも優しさだと思うよ?」


でも、とユキナはぬいぐるみを抱き抱えるかのようにユリナを抱きしめながらハルカに向けて言った。


ユキナが話そうとする中でユリナはユキナの腕から逃れようとするが、一度捕まえたユリナを逃さぬようユキナはしっかりと抱きしめていく。


「たしかにたまに冷たいところあるけど、表に出さないだけで私たちのことしっかり考えてくれてる優しい人なんだよ。

じゃないと普通はこんなに愛してもらえないわ」


「たまにっていうか私には冷たすぎると思うのだけど……」


「理由もなくヒロムは人を嫌いにならないわ。

そんな人だったら私は嫌われてるだろうし」


「……むしろユキナさんはなんでそこまで姫神くんのことを溺愛してるの?

ユキナさんにかぎらずユリナたちもだけど……」


「それは……」


ハルカの疑問にアキナが答えようとすると誰かが部屋の扉を軽くノックした。


それによって話は途切れてしまうが、ノックの音を聞くなりユリナはユキナを離れさせるとなぜか嬉しそうに扉の方へ向かっていく。


「今開けるねヒロムくん」


「えっ!?

姫神くんって何でわかるの!?」


「今のはヒロムのノックの仕方だからね〜」


「ふふっ、今のは間違いないわね」


「ユキナさんもユカリさんも当たり前のような言い方しないでくれません!?

ノックなんて皆同じだから区別なんて……」


「邪魔するぞ」


ハルカが話してる途中、ユリナが扉を開けるとヒロムが中に入ってくる。


その後に続くようにガイとノアルも部屋に入り、リサやユキナたちはどこか嬉しそうにヒロムの方に視線を向ける。


そんな中、ハルカだけはまるで不審者を見るような目でヒロムを見つめ、その視線に気づいたヒロムは嫌そうな顔をしながら彼女に向けて普段通りの言葉を言った。


「何か文句あんのか暴言女」


「はぁ!?

今の聞いたでしょユリナ!!」


「えっと……ヒロムくんも悪気はないから許してあげて」


「私が悪いことになってる!?

しっかりしてよユリナ、厳しくするのも……」


「ヒロム、今日は大変だったね?」


ハルカが話してる最中にもかかわらずユキナは立ち上がるなりヒロムのもとへ駆け寄っていき、彼に抱きつくと頭を撫で始めた。


「今日はゆっくり休んでね?」


「ユキナ……あのうるさいのが突っかかってくるから後にしてくれ」


「ねぇ姫神くん、全部聞こえてるわよ?」


「ヒロムさん、何かお飲みになりますか?」


「ああ……じゃあコーヒーで頼むはユカリ」


「はい、少しお時間いただきますね。

そちらのお二人はどうされますか?」


「オレらも同じで」


分かりました、とユカリは席を外すとキッチンに向かっていくが、ハルカは彼女の行動と平然と進んだ物事に異議を唱えた。


「ちょっと待って!!

家主の姫神くんが何もしないのに当たり前のようにユカリさんがコーヒー淹れにいったのおかしいでしょ!!

あと雨月くんも流れに乗るように普通にしてるけど!!」


「落ち着けハルカ。

オマエの言いたいことはよく分かるよ」


ハルカが不満を持つ中、それに同情するようにガイは彼女にあることを伝える。


「けど……ユリナたちのこれは口で言ってどうにかなるものじゃないんだよ。

ヒロムのために何かしたい、ヒロムのために時間を使いたい……ヒロムがいるかぎりその想いを止められないんだよ」


「ええ……で、でも……」


「それにこんなので騒いでたら一番ヤバイのに出会ったらオマエ倒れるぞ?」


「一番ヤバイの……って何?

まだ他にも姫神狂信者がいるの!?」


「さっき来てただろ。

ユカリたちが来る前に師匠……スバルさんが連れてきた二人が」


「アイツらも来てたのか?」


「ヒロムが到着する三十分ほど前にな。

ヒロムがいないって寂しがってたからな」


「そ、そうか……」


ヒロムとガイ、二人が何者かについて話をしている時だった。


「ヒロくん……」


一人の少女が部屋に入ってくるとヒロムの姿を見るなり彼に駆け寄り、そして大胆に抱きついた。


長い髪の少女の突然の行動、それはハルカを驚かせる。


「ええ!?」


突然のことでハルカは驚くのに対して、周囲は誰も驚かない。


そしてヒロムも抵抗しようとしない。


「……久しぶりだな」


「久しぶり……会いたかった」


「う、雨月くん……この人は!?」


驚きを隠せないハルカはガイに誰なのか尋ねると、ガイは簡単に説明した。


「彼女もエレナやユキナと同じようにヒロムと婚約者の一人として共同生活をしていた人物だが……ヒロムへの愛はおそらくハルカが見てきた中で一番ヤバいと感じると思うぞ」

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