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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
竜装魂霊編
199/672

一九九話 双王の議


鬼之神麗夜殺害容疑によりテロリストとして始末することになった「竜鬼会」。


その「竜鬼会」について話をするためにヒロムが暮らす屋敷に「月翔団」団長の白崎蓮夜や「月翔団」に属する各部隊の部隊長が集まるという。


そこに合流して話に参加するため、ロビンの用意した車にて向かっていたヒロムたち。


弾馬銃哉との激闘のあった姫咲女子学園を出発してから一時間ほどで屋敷に到着、車を降りたヒロムはシオンとノアル、ユカリとミサキを連れて屋敷に入ろうと庭園を歩いていた。


「面倒だな」


屋敷に迫る中でヒロムは嫌そうに呟き、それを聞いたノアルは彼に向けて言った。


「ここに集まって話をするということは「竜鬼会」を危険視しているということじゃないのか?」


「危険視してるから何なんだって話だ。

そもそもそんな話、今更しても意味無いだろ?」


「だが敵は……」


ヒロムの言う通りだ、とノアルの言葉を遮るようにシオンはヒロムの考えを補足するようにノアルに言った。


「敵がヒロムや「姫神」を狙っているから今からどう対策をとるか話そうってのが間違ってる。

敵が動き出してるのに今更話をしても後手に回るのは変わらない。

動き出してる敵の方がこちらより数手先にいるとなれば無意味だ」


「無意味ではないだろ?

敵の動向を探ることでそれに合わせた作戦が立てれる。

だとしたら……」


「ノアル、忘れてるようだから言っておくが「竜鬼会」はただの敵じゃない。

鬼之神麗夜を殺害し、そして今まで動きを悟られなかったテロリストだ。

こちらが動向を探るのなんて見通してるだろうし、そういう意味では話し合う時間が敵の自由を増やす隙になる」


「あの……」


ヒロムたち三人が話をしているとユカリとミサキが困惑した様子でヒロムに声をかける。


「ヒロムさん、私たちはどうすればいいですか?」


「ああ……」

(どうすればって言われてもな……)


どうすればいいですか、そう聞かれてもヒロムはすんなり答えられない。


移動前に彼女たちは何が起きてるのか教えてほしいと言っていたがそれも移動中の車内で弾馬銃哉や鬼之神麗夜などのヒロムを狙う存在についてある程度話した。


さらに詳しく説明したいところだが、今から行う白崎蓮夜や「月翔団」の部隊長との話に参加させることは出来ない。



(多分蓮夜との話は理解が追いつかないんじゃなくてユカリたちにとっては重すぎるだろうからな……。

とはいえ強引に連れて来ておいて話し終わるまで待てって言うのも……)


「ヒロムくん!!」


どうしたものかとヒロムが悩んでいると、後ろから誰かが名前を呼んだ。


女の声、若い女の声でヒロム自身聞き慣れている声だった。


声の主が誰なのか分かったヒロムはユカリたちに対する返事を後回しにするように後ろを振り向いた。


振り向くと彼のもとへと声の主が駆け寄って来ていた。


「ユリナ……。

どうやってここに?」


「さっき愛華さんが病院に来て送ってくれたの。

ヒロムくんは用事が済んだら直接ここに帰るからって」


(ロビンが連絡してくれたのか……?)


「それでね……」


「ああ、ユリナ。

話を聞きたいのは山々なんだが、蓮夜のヤツから呼び出し受けてるんだ」


「あっ……そうなんだ……」


ヒロムに声をかけた少女……ユリナの言葉を遮るようにヒロムは急いでる事を伝えると、話をしたかったユリナは残念そうな顔をしてしまう。


悪気はないつもりだが、ヒロムはどこか申し訳ない気持ちになっていた。


そんな中、ユカリとミサキがユリナに歩み寄るとヒロムにある提案をした。


「ヒロムさん、この方とお話しててもよろしいですか?」


「え、ああ……別にいいけど」


「あっ、はじめまして、私は蝶羽ユカリです。

隣にいるのは春花ミサキ、私たちのことはユカリとミサキって呼んでくださいね」


「え、あ……姫野ユリナです」


「ユリナですね。

せっかくですのでお話しませんか?」


「は、はい……」


少し強引なユカリにユリナは少し戸惑いながらも返事をし、ユリナの返事を聞くとユカリはミサキとともにユリナを連れて屋敷の方へと先に向かっていく。


「……相変わらず思い立ったら迷わないヤツだな」


「だがおかげで助かったんじゃないか?」


ユカリの行動力にヒロムが感心しているとノアルが横から話しかける。


ノアルに言われるまでもなくそれを感じていたヒロムは頷くと二人を連れて屋敷に入ろうと再び歩き出す。


「これで冷酷な話になっても問題無さそうだな」


「冷酷な話に……?」


「ああ、何せテロリストを始末するって話だからな」


ーーーー


ヒロムたちは屋敷に入るとそのまま迷うことなくリビングに向かった。


そしてヒロムがリビングの扉を開けて中に入ると、そこにいた全員の視線がヒロムに集まる。


ガイと真助、イクトがソファーに座っている中でその後ろに並ぶように夕弦と栗栖カズマが、そしてガイたちと向かい合う形で反対側のソファーに「月翔団」の団長を務める男が一人座り、その背後には数人の男や女がいた。


団長である男の後ろにいるということはここに招かれた「月翔団」に属する部隊を率いる部隊長だろう。



「……歓迎されてないなら帰るけど?」


「バカ言ってねぇで座りやがれ」


茶化すようなヒロムの言葉にリビングにいた男・白崎蓮夜は冷たく告げ、ヒロムは言われた通りにガイの隣に座るようにソファーに腰掛け、シオンとノアルは座ろうとせずに壁にもたれ掛かるように立ったままでいた。


ヒロムが座った中、シオンはある事に気づくとガイに訊ねた。


「おいガイ。

ソラはどうした?」


「ソラは……今「七瀬」にいる」


「何だと!?

どうして……」


「それも含めてオマエらに確認することがある。

黙って聞いてろ」


ソラがどこにいるのか聞いて驚くシオンに蓮夜は冷たく告げるとヒロムを見ながらある事を質問した。


「ついさっき連絡があったんだが……なんで「七瀬」の人間が姫咲女子学園に来てるんだ?」


「……何が言いたいんだ?」


「質問に答えろ。

何で「七瀬」の人間があそこに来てる?」


「……向こうが後ろ盾になってくれるって提案してきたからだ。

オマエらだけだと「十家」に干渉されたら何もかも持ってかれるだろうしな」


「オマエ……分かってんだよな?

その「七瀬」も「十家」の一角を担ってんだぞ?」


「担ってるからやめとけ、てか?

オレは「七瀬」を特別視してはいない。

最終的に「十家」全てを潰す上で今は利用出来ると思ったから交渉したんだよ」


「相談してからでも良かったんじゃないのか?」


「相談?

何をだ?」


蓮夜の言葉に首を傾げるヒロム、すると蓮夜の後ろに立つ一人の男が咳払いをするとヒロムに告げた。


白髪にガタイのいい男、歳はおそらく四十代後半。

その男はヒロムの態度に少しだけ不満を抱きながら告げた。


「坊っちゃん、お言葉だが「七瀬」に情報を与えることになるからこそ蓮夜に相談してから行動しても間に合ったはずだ。

なのに独断で敵に恩を与える真似をするなんて……」


「お言葉だが獅童さん、鬼之神麗夜や「竜鬼会」の情報を持ってきたのは鬼桜葉王だ。

どう動こうにもすでに「一条」がヤツらについて知ってることに変わりはない」


「それは……」


「それに鬼之神麗夜が殺害された理由を知るには弾馬銃哉が不可欠。

その弾馬銃哉が口止めのために殺害される可能性は否定出来ない。

だからこそ利用した」


ヒロムの言葉に男は……獅童士門は異を唱えるような言葉を言わず、ただ蓮夜に話を任せるように彼を見た。


その視線を感じた蓮夜はため息をつくとヒロムに言った。


「オマエの言い分は分かった。

だが後ろ盾を得て何をする気だ?」


「同じことだよ。

鬼之神麗夜は獅角とのつながりを持っていた。

それは言い方を変えれば「八神」と組んでたことになる」


「それは黒川イクトから受け取った写真とデータで知っている。

だからどうしたって話だ」


「……分かってねぇな。

今「七瀬」の後ろ盾がなかったとしてみろよ。

ヤツらが襲って来て迎撃した時に「八神」が干渉してきて手出し出来なくされたら何もかも取り返しがつかなくなる」


「まさかヒロム……。

敵が権力に守られても手出し出来るようにするために同じように権力を持つものに守られようとしてるのか?」


その通り、とヒロムの考えに気づいたガイの言葉に向けてヒロムは言い、そしてそのままガイたちと蓮夜や獅童、他の部隊長に説明するように話した。


「敵は「装鬼会」、戦闘に手馴れたようなヤツらだ。

そんなヤツらが竜装術を人為的に得てオレを殺し、そして「姫神」を乗っ取ろうとしてるかもしれない。

そんなヤツらがもし「八神」の権力で正当性を主張出来るような環境下で攻撃してきたらヤツらがテロリスト扱いするオレたちがテロリスト扱いで粛清される」


「敵をテロリストとして殲滅し、オレたちの正当性を主張出来るようにするんだな?」


「さすが蓮夜、分かってるじゃねぇか。

つまりはそういう事だ。

オレもアンタも「竜鬼会」を危険視しているし、母さんのパーティーを荒らされるくらいなら早急に手を打ちたいと思ってる」


「……敵が潜伏している場所さえ分かれば明日の夜明けとともに襲撃するか?」


「ああ、オレたちだけでな」


「……何?」


突然のヒロムの発言に蓮夜は不満を持ち、それについて言及しようとする。


が、それよりも先にヒロムは蓮夜に理由を説明した。


「鬼之神麗夜の目的は今言ったようにオレの殺害と「姫神」の乗っ取りだった。

けど、あの男が殺害されたってことは「竜鬼会」のは別の目的がある可能性がある。

それを知らないままオレら「天獄」と「月翔団」が同時に動くのは危険すぎる」


「だからってオマエらだけでやるには問題が……」


「考えならある。

ヤツらに遅れを取らず、その上で対処する方法がな」


ヒロムの判断に素直に賛同出来ない蓮夜は問題点を挙げようとするが、それよりも先にヒロムが言葉を発し、そして全員に自身の考えを説明した。



ーーーー

「……」


「……」


「……以上がオレの考えだ」


「な……」



ヒロムの説明を聞いたガイたち「天獄」のメンバーはそれについて何かを言うことはせず、蓮夜や部隊長たちは驚いた顔をしていた。


「本気かオマエ……!?」


「坊っちゃん、それはいくらなんでも……」


「危険すぎるか?

だがヤツらがオレを狙ってることを知ってるのならそれを利用する」


「……ヤツが上手く動くと思うか?」


「おいおいガイ、オレが闇に囚われたときに助けに現れたんだろ?

だったら問題ないさ」


「……リスクが高い気もするけどな」


「リスクなんてこの一件に関しては何をするにしてもついてくる。

だったらヤツの言葉を信じて利用するだけだ」



ヒロムはガイに言うと、ある男の言葉を思い出していた。


『オマエは選ばれた「鍵」だ』


「……アイツの計画は何かは知らないが「竜鬼会」を倒す上で利用する最後の手段にはなるはずだ。

何せオレは計画を担う「鍵」らしいからな、あの男……鬼桜葉王が言うにはな」


「……利用出来るものは利用する、そういう作戦なのはわかった。

だが行動を起こす際には多少なりともこちらも干渉させてもらうからな?」


「構わないさ。

蓮夜がそれで納得してくれるなら手を組んでやるよ」


「上からなのが腹立つし、不確定要素の鬼桜葉王に頼ろうとする魂胆も気に入らねぇが……そのやる気だけは認めてやる」


ヒロムと蓮夜は互いに相手を見つめると頷き、そして相手に向けて伝えた。


「やるぞ蓮夜……裏切り者を始末するぞ」


「当然だ。

誰に喧嘩売ったか思い知らせてやるぞ」

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