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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
心想恋華編
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一七五話 starved dark


ヒロムやユリナたちの前に現れたヒロムを狙う男たち。



そんな敵からヒロムたちを守るように現れた長い金髪の少女の精霊「天剣」フレイと長い紫色の髪の精霊「天妖」ラミアは目の前の敵を倒そうとしていた。


「さて……ラミア。

マスターに任されたからにはしっかりやり遂げるわよ」


「分かってるわ。

でもその前に……」


マスター、とラミアは敵に向けて構えながらヒロムに対して質問をした。


「どうして約束を破ろうとしたのです?」


「それについては謝るけど、オレにも限界はある。

ユリナたちを守りながら戦うとなればリスクは背負うべきだと判断した」


「……マスター、アナタは今日私たちを休ませる代わりに自分も休むと言ってましたよね?

だから戦闘を避け、「ソウル・ハック」の力も使わないと私たちと約束したのに」


「状況に応じて判断しようとした。

それだけだ」


「その結果私たちを悲しませても?」


ラミアの言葉にヒロムは次に何を言うか迷い、言葉を詰まらせてしまう。


ラミアの言葉を横から聞いていたフレイは少しだけ小さなため息をつくとヒロムに伝えた。


「マスターがユリナたちを守りたいように、私たちもマスターを守りたい。

ですから何かあったのならお呼びいただければ駆けつけます」


「フレイ……」


「だからマスターはみなさんのそばにいてあげてください。

ここは私とラミアで終わらせます!!」


「……言いたいこと横から取らないでよね」


「あら、ごめんなさい。

でも、異論はないでしょ?」


「当たり前よ」


「じゃあ、行きま……」


ちょっと待って、とレナは戦おうと意気込むフレイとラミアを止めるとラミア方を指さしながらヒロムに質問をした。


「誰なのあれ?」


「誰って……今聞く必要あるか?」


「あるわよ!!

フレイは前に会ったから知ってるけど、もう一人の方は知らないわよ!!」


「……マスター、適当に説明しててくれます?

私もフレイも敵倒したいんで」


「ああ、任せろ」


「では……」


ふざけやがって、と金属バットに炎を纏わせた男は苛立ち混じりにフレイとラミアに文句を言った。


「オレらの相手をお姉さんら二人がしてくれるのか?

悪いがこの数をたったの二人で倒すなんて不可能だと思うんだが」


「あら、そうでしょうか?

私の目から見れば……アナタたちが束になっても私もラミアも傷を負う気配は全くないんですけどね」


「……調子に乗るなよ。

姫神ヒロムのことをマスターって呼ぶってことはお姉さんら精霊だろ?」


「はい。

私もラミアも精霊ですが、それがどうかしましたか?」


「やっぱりか。

いや、強がりはそこまでにした方がいい。

たかだか精霊がオレらに勝てるはず……」


「言葉を選べ、三下風情が……!!」


男が言おうとする言葉をかき消すようにラミアが冷たい眼差しで敵を睨みながら発した言葉は周囲の空気を重くし、そして殺気が全てを飲み込もうとしていた。


さらにラミアの感情に呼応するように彼女の体から闇が放出され、放出された闇は蛇の形へと変化していくと無数に分裂していく。


無数の蛇の形となった闇は敵を睨み、蛇に睨まれた敵は全員怯えたかのように動きが止まってしまっていた。


「群れを成さねば敵に挑めないアナタたちに私たちが苦戦するとでも?

アナタたち如きが私たちを圧倒出来るとでも?

甘いことを言うのね……耳障りな戯れ言が聞かされる身にもなってもらいたいわね!!」


ラミアが叫ぶとさらに全身から闇が溢れ、それを目の当たりにした敵は少しずつ後退りをしていた。


「……フレイ、悪いけど私一人でやるわ」


「アナタがそうしたいのなら構わないけど……何かあれば加勢するわ」


ラミアは闇を纏いながら有無を聞くことなくフレイに告げ、それを聞いたフレイも文句を言うことも無く承諾しつつも万が一の行動を伝えた。


「……いいわよ。

アナタが加勢するほどの敵が残ってればね」


フレイに向けてどこか嫌味のような言い方をしたラミアはゆっくりと敵に向かって進み始める。


フレイとラミアの一連の会話、それを聞いていたユリナは不安そうにヒロムに問題ないのかを尋ねた。


「ヒロムくん……あの新しい精霊さん大丈夫かな?」


「ラミアのことか?

問題ねぇよ」


余裕なのね、と横からユキナが話に入ってくる。


「あの人、フレイより強いの?」


「いや……フレイと実力に差はない」


「じゃあ……」


「ただ、ラミアはフレイと違って容赦情けはないタイプだ」


「……マスターのためなら何でもやるのが私なのよ!!」


ヒロムの一言に付け加えるようにラミアは強く言うと走り出し、それを見た敵はどうしようかと混乱し始める。



が……


「オマエら、怯むんじゃねぇ!!」


炎を操る男は味方を鼓舞するかのようにバットを地面に叩きつけながら叫んだ。


「敵は精霊二体!!

勝ち目がないなら宿主を狙え!!

宿主を失えばコイツらは消滅する!!」


「……そんなのさせるわけないでしょ?」


男の言葉に怒りを隠せないラミアは蛇の形をした無数の闇を一斉に解き放ち、敵に襲いかからせる。


「マスターに害を成すなら、ここから生きて返す価値もない!!」


「来るぞ!!

迎え撃てェ!!」


「「おおおおお!!」」


炎を操る男の叫びを合図に敵は動き始める。


「どけどけどけ!!」


「ぶっ潰すぞ!!」


「やれるのなら……やってみなさい!!」


迫り来る男たちに蛇の形をした闇が襲いかかろうと噛みつき、避けるのが間に合わなかった数人の男が噛みつかれて闇に飲まれていく。


が、それを余所に他の男たちはラミアを倒そうと武器を構えて走って接近してくるが、ラミアは両手に闇を纏わせると迫り来る敵を次々に殴り倒していく。


「この女ァ!!」


大柄な男が鉄パイプを振り上げるなりラミアの頭蓋を背後から砕こうと勢いよく振り下ろすがラミアは後ろを一切見ずにその攻撃を避けると男の頭上へと跳び、男の頭を掴むと勢いよく地面へと叩きつける。


「ごふ……!!」


「うるさいのよ。

攻撃するって教えてるようなものよ」


「この野郎が!!」


大柄な男を倒したラミアを追い詰めようと男たちは彼女を取り囲むが、ラミアは何も焦ることなく闇を周囲に放出していた。


「逃げ場はねぇぞ精霊!!」


「逃げ場……?

それはアナタたちでしょ?」


「何?」


「アナタたちはもう終わってるのよ」


ラミアが指を鳴らすと男たちの足元に彼女が放出していた闇が広がっていき、気づけば彼らは闇に脚を拘束されて身動きが取れない状態になっていた。


「な、何だこれは!?」


「動けねぇ!!」


「この……ふざけやがって!!」


「さて、そろそろ遊びは終わりよ」


ラミアはさらに闇を大きく放出し、敵を拘束する足元の闇もそれに呼応して大きくなり、ラミアを中心とした巨大な闇の円が出来ていく。


「この……!!」


炎を操る男はラミアの闇から免れたらしく闇の円の外におり、どうにかして仲間を助けようとするが彼の力では仲間を救い出せなかった。


「さぁ……懺悔の用意をしろ!!」


ラミアが天へと手をかざすと闇が膨れ上がり、敵を次々に闇の中へと飲み込んでいく。


膨れ上がる闇を前に炎を操る男は慌てて後退し、男と同じように闇から免れていた敵は様子を伺うように距離を取り始める。


「受けろ、常闇の終わりを!!

飢えた蛇の雄叫びを!!

スターヴ・ディストピア!!」


ラミアの叫びに応えるように膨れ上がった闇の中から無数の蛇が現れ、蛇は一斉に闇に飲まれた敵に食らいついていく。


「がぁぁあ!!」


「あああ!!」


「フィナーレよ!!」


ラミアが合図を出すように指を鳴らすと膨れ上がった闇と闇の円は一点に集まって巨大な球体へと姿を変え、そして音を立てることなく炸裂して飲み込んだ敵を次々に吹き飛ばしていく。


全身に牙で噛まれた傷、そして炸裂した闇により火傷にも似たような傷を負って倒れていく男たち、その男たちは攻撃を受ける前に比べると少し痩せているようにも見えた。


その変化には炎を操る男はすぐに気づいた。


「貴様……何をした?

なぜコイツらはこんなに弱っている?」


「傷のせいよ。

ダメージを受けたからね」


「ふざけるな!!

何か姑息な手を……」


「別に?

ただ少し生命力を吸収しただけよ」


ラミアの口から何の前触れも無く出た言葉、その言葉を聞いた男とその仲間たちはゾッとしていた。


少し生命力を吸収した、それは今までに経験したことがないことなのだろう。


「お、オマエ……」


「安心して、アナタたちも終わりよ」


ラミアが言うと、男たちの影から静かに闇が姿を見せ始める。


「な……しま……」


しまった、そう思った男たちは今すぐ逃げようとするがそうもいかない。


逃げようとした時には闇は大きくなると帯状になって彼ら全員の体を締め上げていく。


「ぐっ!!」


「次からは相手を選ぶ事ね。

まぁ……次なんてないでしょうけどね」


「お、オマエェェエエ工!!」


「……懺悔の用意をしなさい。

スターヴ・ディストピア!!」


彼らを拘束する闇が膨れ上がると同時に炸裂し、同じように負傷して倒れていく。


味方を鼓舞していた炎を操る男もラミアの力の前に倒れ、彼の仲間である敵は皆倒れていた。


何人もいた男たちがラミア一人に倒されたのだ。


「……呆気ないわね」


ラミアはため息をつくと敵に背を向け、どこか物足りなさそうな表情を浮かべながらヒロムのもとへと向かっていく。


そんなラミアの姿にユリナたちは言葉を失っていた。


「……」


「……」


「すご……」


「あれがラミアの実力なんですねマスター」


「ああ、たしかに納得だな。

幼い頃に精神世界に封印されるのも、闇を司る理由もな」


「何を話してるのです?」


ヒロムとフレイがラミアの実力について話しているとラミアがヒロムに尋ねた。


「私のことですか?」


「まぁ、な。

気は晴れたか?」


「……物足りないわ。

昨日の敵の方が手応えがあった」


当たり前だろ、とラミアの言葉に対してヒロムは言うと続けて話した。



「コイツらは誰かに雇われた不良とかだ。

目的は分からないがオレを殺すよう指示受けただけみたいだしな」


「マスターを狙うにしては用意がなってませんね。

金属バットに鉄パイプ……マスターがその気なら素手で折れますよね?」


「ああ、その気にならなくても折れる」


((金属素手で折るってどうやって!?))


ヒロムとフレイが平然と話を続ける中でリサとアキナは心の中で驚くがそれについて何か言うことはしなかった。



言ったところで意味が無いと思ったのだろう。


そんな中、ユリナはラミアに質問をした。


「あの……生命力って命を奪うんですか?」


「え?

ああ、あれは敵を混乱させるための嘘。

スターヴ・ディストピアが奪うのは相手の魔力だから命に問題は無いわ」


「そ、そうなんだ……よかった」


どうして、と安心するユリナを不思議そうに見つめるラミアは彼女に質問をした。


「相手はマスターを殺そうとした。

本当なら死んでもいいくらいよ」


「だ、ダメですよ!!

そんな簡単に命を……」


「その命をマスターは今さっき狙われていた。

同じことじゃない。目的が違うだけでやようとしてたことは」


「でも……」


「おいおい、姫神ヒロムの精霊とは思えねぇ言葉だなぁ」


ユリナとラミアの会話を止めるように聞こえてきた声。


それに反応してフレイ、そしてラミアは構えて声の主を探そうとするが、姿はなく気配もなかった。


「どこにいるの……?」


「マスター、彼女たちを……」


「大丈夫だ。

それより……姿を見せろ、鬼桜葉王」


「……へぇ、よく気づいたな」


ヒロムの言葉に反応するように彼の目の前に音もなく鬼桜葉王は現れ、彼に挨拶するように手を振った。


「よぉ、昨日ぶりだなぁ」


「……コイツらはオマエの差し金か?」


「いいや、面倒なヤツからの贈り物だな」


葉王は周囲に倒れる男たちを見るなり憐れむような視線を送りつつ指を鳴らすとともに男たちを音もなく消していく。


「まぁ、このことでオマエに話があるんだけどなぁ」


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