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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
心想恋華編
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一七四話 enemy escort


日も暮れ始めた夕刻の時。


ヒロムの屋敷のキッチンにはガイ、ソラ、真助が集まっており、三人は何やら話し合っていた。


「晩飯の用意を引き受けたが……何にする?」


「ガイ、そういうのは考えがまとまった上で引き受けろよ」


「オレは魚が……」


ダメだ、と真助の提案をガイとソラは声を揃えて冷静に却下する。


提案を却下された真助はため息をつくと二人に言った。


「ヒロムの魚嫌いは承知済みだが、用意するオレらに選択権があるならアイツ用に別の料理を用意しておけばいいんじゃないのか?」


「分かってないな、真助。

それをやったソラは三日間まともに口を聞いてもらえなかったんだぞ」


「今やったらオレらはこの屋敷に入ることを許されなくなるかもな」


「……それは危険だ。

分かった、魚はやめておこう」


真助が諦めてくれたことによりヒロムが大嫌いな魚料理を作るという案は白紙になったが、これでまた振り出しだ。


「ところで得意料理は?」


「簡単な洋食と直火焼き肉」


「直火焼き肉って能力フル活用してるじゃねぇか」


「悪いかよ。

そういう真助は?」


「大抵の料理なら何とか、な。

ガイは?」


「和食、だな。

あと蕎麦」


三人は得意料理を答えたものの、それによって何を作るか決まる訳でもない。


何なら成果なんて何も無い。


「……ダメだな。

得意料理というよりは得意料理のジャンルだ。

これじゃ何作るか決まらないな」


「ピザでも注文するか?」


「お嬢様方の口に合うのか?

それに金はどうする?」


「フレイにでも頼めば……」


ダメですよ、と入り口からフレイがこちらの様子を見ながらソラの提案を却下するように伝えた。


「ちゃんとした料理をお願いしますよ」


「……出前でもピザは料理だろ?」


「手作りなら構いませんよ?」


「……分かった、出前はなしだ」


「はい、分かりました」


「もう行くのか?」


はい、とフレイはガイの言葉に対する返事をすると続けて彼に言った。


「そろそろマスターも帰られる頃ですからラミアたちと迎えに行ってきますので、留守はお願いしますね」


「ああ、気疲れしてるだろうから頼むぞ」


行ってきます、とフレイは三人に頭を軽く下げるとキッチンから去っていく。


「気疲れ、か。

大したことしてねぇだろ?」


「どうかな……?

今日に関しては真面目に努力しようとしてたからな」





***


ショッピングモールの帰り道。


ユリナたちの願いを叶え、全ての要件を済ませたヒロムはユリナたちとともに屋敷に向かって帰っている途中だった。


が……



「……疲れたな」


ヒロムは小さな声で呟くとユリナたちには気づかれないようにため息をつこうとするが、ため息はすぐにユキナに気づかれてしまった。


「どしたの?

疲れたの?」


「……まぁ、な。

というか、人の考えを……」


「読まなくても普通に分かるよ?」


ユキナの言葉に何かを言うわけでもなくヒロムはただ納得して話を終わらせる。


というか、そもそもユリナたちの中から一人にだけ気づかれなくするならヒロムにとっては造作もないことだが、彼女たちは今全員で八人いる。


今朝は六人だったのが今では八人だ。


そんな中で「疲れた」なんて言葉を言えば誰かしらは聞いてしまうだろうし、気づかれないようにため息をついたとしても誰かしら反応してしまうに違いない。


ただそれを考えるとユキナの言うように考えを読む技術がなくとも簡単に分かってしまえるのだろう。


「……まぁ、何でもいい。

オレとしてはユリナたちが楽しめたならそれで満足だ」


「私と再会出来たことは?」


「驚いた反面、懐かしいとは思ったよ」


良かった、とヒロムの言葉を聞いたユキナは嬉しそうに微笑むとヒロムの腕に抱きつき、そして大胆に胸を彼の腕に押し当てるのだった。


それによりヒロムの腕には柔らかい感触が伝わり、ヒロムの心臓の鼓動は僅かながら早くなりつつあった。



「……近過ぎないか?」


「これくらいがいいの。

もしかして……照れてる?」


「いや……リサたちの目が気になるから言ってるだけだ」


ヒロムの言葉を聞いたユキナは不思議そうな顔をするとともにリサたちの姿を確かめるように彼女たちに視線を向けた。


ヒロムの言葉通りであり、リサたちは羨ましそうにユキナをじっと見つめているが、そんな中でユリナとエレナは気まずそうにしていた。


「あれ?

二人は嫉妬してないの?」


「一応してます。

ヒロムさんに近づきたいとは思いますし……」


「なら行動に移さないと。

何も始まらないよ?」


「えっと……私もエレナちゃんも恥ずかしさがあってね」


「気にし過ぎじゃない?

ヒロムは愛を示せば応えてくれる良識人だし、イケメンなんだから早く手を打たないと損しちゃうよ?」


「手を打つって言われても……」


どうすればいいの、と言いたげな顔でユリナとエレナが疑問を抱いているとそんな二人に向けてリサが説明した。


「二人も大胆に抱きついて体押し当てればいいのよ」


「嫌われませんか?」


「大丈夫よエレナ。

ヒロムくんも世間的に見れば思春期の男の子……つまり、胸や尻が大好きで触れたら顔に出さなくても喜ぶんだから」


「おい、オレをただの変態みたいな言い方するな」


「で、でも……」


「リサの言葉を真に受けるな。

オマエはオマエらしくしてればいいんだよ」


「は、はい!!」


「まぁ、ヒロムくんったらカッコイイ」


茶化すな、とヒロムは一言リサに言うと彼女の額に軽くデコピンをし、それを受けた彼女は少しだけ申し訳なさそうに微笑みながら軽く頭を下げた。


「まったく……。

ユリナ、オマエも……」


ユリナにも軽くではあるが注意しようとしたヒロムは彼女の方を向くのだが、その視界に捉えた彼女はヒロムも驚くような行動を取ろうとしていた。


「……何してんだ?」


「え!?」


ヒロムの声に驚いて少し甲高い声になってしまったユリナ。


その彼女はリサのアドバイスを信じているのかユキナが抱きついていない方の腕に手を伸ばし、隙あらば抱きつこうとしていたのだ。


が、ヒロムの声に驚いてしまった彼女は咄嗟にそれをやめて何も無かったかのようにそっとヒロムへと伸ばした手を自分の方へと戻し、そしてゆっくりと離れようとした彼女だが、ヒロムはそれを逃がさなかった。


「何もないかのように逃げるな」


ヒロムは離れようとするユリナに手を伸ばすと彼女の手を掴み、そして自分の方へと引き寄せた。


突然ヒロムの行動、そしてそれによって距離が急に縮まったことによりユリナの顔は誰が見てもハッキリと分かるほどに真っ赤になっていた。


「あ、あ、あああの……!!」


「あ?

リサの言葉真に受けてやろうとしたのを今になって恥ずかしくなったのか?」


「そ、そうじゃなくて……」


「何?

どうかし……」


「ヒロムくん、とりあえず手を離してあげて!!」


ユリナの変化について気づかないヒロムは不思議そうにしていたが、エリカが慌ててユリナの手からヒロムの手を離させ、そしてユリナを落ち着かせようとヒロムから少し離れさせた。


「?」


「ヒロムくん、不意打ちはダメ。

ユリナが死んじゃうから」


「いやいや、そんな大袈裟な……」


「とりあえずユリナが油断してる時はダメだからね?」


「お、おう……」


エリカが何を言ってるのかよく分かっていないヒロムはわけも分からず返事をしてしまうが、何かおかしなことをしたのか首を傾げて悩んでいた。


そして先程ヒロムに手を握られたユリナはまだ顔を赤くしており、それを見たリサとアキナは少し呆れていた。


「自分から抱きつこうとしてたよね?」


「でもヒロムからだと恥ずかしいんだね」


「「不思議だね」」


リサとアキナが声を揃えて言うとそれを聞いたユリナはさらに顔を赤くしながらエレナの後ろへと隠れてしまう。


「……ったく、何してんだか」


「よぉ、お兄さん。

ちょっといいか?」


ユリナたちを見てヒロムが小さくため息をついていると、突然ヒロムに向けて誰かが声をかけてくる。


声のした方をヒロムが振り向くとその先には十人ほどの男が並んでいた。


男たちはその手に金属バットや鉄パイプを持っており、明らかに怪しかった。


「誰だオマエら?」


「オレらのことは気にしなくていいんだけど、お兄さんが姫神ヒロムで間違いないか?」


「……そうだとしたら?」


「悪いな……ここで死んでくれねぇかな?」


男たちは不敵な笑みを浮かべながらその手に持った金属バットや鉄パイプといった武器をヒロムに向けて構え始める。


危険を感じたヒロムは腕に抱きつくユキナを少し強引にではあるが離れさせるとユリナたちに告げた。


「……オレが何とかするからどこかに隠れとけ」


「ダメだよヒロムくん!!

今フレイたちはみんな家にいるんだから……」


「相手が能力者じゃない不良ならオレ一人でどうにか出来る」


「おいおい、お兄さん。

バカにし過ぎだぜ?」


一人の男が指を鳴らすと、列をつくる十人の背後から続々と同じように武器を持った男たちが現れる。


そして、男の中の一人が首を鳴らすと金属バットに炎を纏わせていく。


「多勢に無勢、か」


「悪いな、オレらはアンタを殺せば大金貰えるってことで頼まれてるんだよ。

だから抵抗しないでくれるか?」


「オマエらにそれを頼んだのは「八神」なのか?」


「それは答えれねぇ……だって知ったところでアンタはここでオレらに殺されるんだからなぁ!!」


かかれ、と金属バットに炎を纏わせた男が合図を出すと一斉にヒロムに襲いかかろうと走り出す。


「……はやく行け!!」


「で、でも!!」


「はやくしろ!!」


ヒロムが逃げるように言ってもユリナたちは男たちに怯えて動く気配がない。


そんなユリナたちの事など構うことも無くヒロムを殺そうと男たちは迫りつつある。


「く……こうなったらやるしかねぇ!!」


ヒロムは拳を強く握るとユリナたちを守るように構え、そして意識を集中させて敵となる男たちと戦おうとする。


(ここで長引くとユリナたちが危険だ。

約束は破ることになるけど……仕方ねぇよな!!)


「いくぞ!!

ソウル・ハッ……」


ヒロムが「ソウル・ハック」を発動させようとした時だ。


上空より二つの光がヒロムたちと男たちとの間に勢いよく落ち、光の中よりそれぞれ少女が一人ずつ姿を現す。


一人は長く美しい金髪の大剣を手にした少女、もう一人は美しくも妖艶さを感じる紫色の長い髪の少女。


「ダメですよ。

約束は守らないと」


「何者だ!?」


敵である男たちは二人の少女の出現により一度動きを止めて警戒するが、対するユリナたちは彼女たちを見るなりどこか安心したような表情を浮かべ、ヒロムはため息をついた。


「……ナイスタイミングだ」


「お帰りが遅いので心配になっただけです。

ですが……マスターがまた無茶しようとしてたので慌ててしまいました」


「マスターはそこの子たち守っててくれればいいから。

ここは私とフレイが引き受けるわ」


「そうか……相変わらず頼もしいなフレイ!!ラミア!!」


「「当然です!!」」


ヒロムの言葉を受けて二人の少女は……ヒロムの精霊である「天剣」フレイと「天妖」ラミアは誇らしげに言うと敵に向けて構えようとした。



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