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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
心想恋華編
172/672

一七二話 wake up


「やっと見つけた!!

絶対逃がさないわよ!!」


薄紫色の髪の少女はヒロムたちを見ながら言う。


が……


「……」


「……」


誰一人彼女の言葉に反応しない。


どう反応していいのか分からないだけなのか、それとも彼女の見た目からかかわらないほうがいいと判断したのか……



理由は定かではないが、誰一人反応を示さない。


「……って無視するな!!

聞こえてるだろ!!」


反応もない中彼女は言うが、それでも誰も反応しない。


と思われたが、彼女の姿を見たユキナは面倒くさそうにため息をついた。


「うるさいな〜……」


「ていうかユキナ、見つけたなら連絡しなさいよ!!」


「そんなこと聞いてないけど?」


「言ったわよ!!

見つけたら連絡しなさいってちゃんと言ったわよね?」


知らない、とユキナは彼女の言葉に冷たく返すとヒロムに助けを求めるように強く抱きつく。


が、その行動が彼女をさらに熱くさせてしまう。


「ていうかなんでさっきからヒロムに抱きついてんのよ!!」


「別にいいでしょ?

久しぶりに会ったからこうしてるだけだし」


「いいわけないでしょ!!

というかヒロム、アンタも嫌なら嫌で抵抗くらいしなさいよ!!」


「……出会うなりうるせぇな」


彼女の言葉にヒロムは面倒くさそうな反応を見せていると、ユリナがヒロムに声をかける。


「ねぇ、ヒロムくん。

あの人がユキナさ……ユキナが言ってたレナさん?」


「そうだよユリナ。

あのうるさいのがレナなんだよ〜」


「ユキナ!!

初対面の人にウソ教えないで!!」


「えっと……少し静かにした方が……」


「ユリナの言う通りだよ?

レナってばうるさい」


「う……うるさいなら少し静かにするけど……」


だけど、とレナと呼ばれた彼女はヒロムに近づくなりユキナを強引に引き離させるとユキナに注意した。


「私のことうるさいって言うならアンタも弁えなさい。

分かったわね?」


「はいはい……これ以上言わないでくれるなら了解します〜」


ユキナは面倒くさそうに返事をするとなぜかヒロムの手を握り始め、それを見た少女は強く言い放つ。


「言ったそばから何してんのよ!!」


「何?

弁えろって言われたから弁えてますけど?」


「弁えるのならせめてそういう事をやめなさいよ!!」


「うるせぇ!!」


ヒロムの前でユキナと少女が揉めそうになっているとヒロムが一喝し、それによって彼女たちは静かになっていく。


ヒロムはため息をつくとユキナの手を離させ、そして少女の額にデコピンをする。


「痛……何するのよ!!」


「うるさい、この次はないからな?」


「わ、分かったわ……」


冷たい眼差しとたった一言で少女を黙らせると、ヒロムは少女とは初対面であるユリナとリサ、エリカに彼女について説明した。


「コイツは狂美(くるみ)レナ……だ」


「ちょっと、もっとちゃんと説明しなさいよ!!」


「うるせぇな。

狂うほど美しいって書いてクルミ……それがコイツの名前、狂美レナ」


「名前以外に紹介することはないの?」


「……見ての通りうるさい」


「他にはないのかしら?」


ない、とヒロムは彼女……狂美レナに向けて言うとあくびをする。


ヒロムがまともに紹介しないと分かったからかレナは咳払いをするとユリナたちに自己紹介を始めた。


「私は狂美レナ。

ヒロムが言ったように狂うほど美しいって書いてクルミって呼ぶ珍しい名前なの。

ちなみにヒロムとの関係は……」


「ヤンキーっぽいね」


「ヤンキーじゃないの?」


レナの話を無視してリサとエリカは彼女の外見について話していたが、それを聞いたレナは反論するように二人に言った。


「言っておくけど、別に私はヤンキーじゃないから。

ただ動きやすい服を選んでるだけよ」


「服の選び方がヒロムくんと一緒……」


「でも女の子なんだからせっかくだしオシャレした方が……」


「ちゃんとしてるじゃない」


ほら、とレナは二人に向けて背中を向けるとジャージに注目させた。


が、それを見せられたところでリサもエリカも何のことか分かっていないらしく不思議そうな顔をしていたため、レナは分かるように口で説明した。


「背中にハートマークがあるでしょ?

ワンポイントでオシャレしてるのよ」


「いやいや、その辺の発想もヒロムくんと一緒!!」


「ていうかそのハート、矢に貫かれてるけど!?」


「何よ……あんまり可愛くないの?」


「いや……その……」

((可愛い以前にセンス無さすぎ……))


「可愛いと思います!!」


「「え!?」」


レナのセンスに戸惑うリサとエリカの横からユリナが元気よく感想を述べ、それを耳にした二人は驚きの声を出してしまう。


「?

何か変だった?」


「えっと……ユリナは可愛いと思ったの?」


「うん、個性的ですごくいいと思うよ?」


「あ……そう……」


忘れてた、とリサは心の中で呟くと同時にユリナのある事を思い出した。


いや、昔からの付き合いだからこそ知っていることだ。


(ユリナってファッションセンス壊滅的だったわ……)


「あら、アナタこれの良さがわかるの?」


ユリナのファッションセンスの無さに悩まされるリサの事など気にすることも無くレナはどこか嬉しそうにユリナに話しかける。


「スゴく似合ってると思わない?」


「いいと思います!!」


「アナタ……よく分かってるじゃない!!」


ユリナに褒められたのがよほど嬉しかったのかレナは笑顔を浮かべながらユリナを抱きしめ、彼女に頬ずりをしてしまう。


突然のレナの行動に驚くユリナはどうしていいのか分からずヒロムやリサたちに助けを求めるように視線を送るが、リサたちはなぜか目を逸らしてしまう。


「えぇ!?」


((ごめん、ユリナ。

その人のセンスに共感出来ないから助けられない))


(すみません、ユリナ。

私にはレナを止めれません……)


(私……レナ苦手なのよね……)


(ユリナ……助けてあげたいけど私じゃムリだよ……)


「……レナに懐かれた時点で終わりよ」


リサ、エリカ、チカ、アキナ、エレナが各々が思うことを心の内で呟くだけで留めた中でユキナは冷たく言い放つが、ユリナの一言で機嫌が良くなったレナにはユキナの言葉は聞こえてなどいなかった。


「ねぇ、アナタ名前は?」


「あ、あの……姫野ユリナです」


「ユリナ、ね。

アナタとは仲良く出来そうだわ。

よろしくね!!」


「こ、こちらこそ……」


初対面の相手に見せるものとは思えぬほどの笑顔を浮かべながら嬉しそうにするレナに対してユリナはどこか気まずそうに引きつった笑みを浮かべていた。


するとユリナの様子を見てヒロムはある事をレナ尋ねた。


「今日は珍しい組み合わせの二人だけで来たのか?」


「……そうよ。

ヒロムの姿が見えたから二人で二時間くらいずっと探して見つからなかったから二手に分かれたのに……ユキナってば全然連絡しないし、ユキナ見つけたと思えばヒロムたちといるし……!!」


「二時間って……帰った可能性は考えなかったのか?」


あっ、とヒロムに指摘されるなりレナは考えもしなかったと言いたげな反応を見せ、それを見たヒロムは深くため息をついた。


「……ったく、少し考えれば分かるだろ。

今回はたまたま映画見てたから良かったけど、閉店まで探す気だったのか?」


「そ、そこまではしないわよ!!

さすがにそこまでバカじゃないし……っていうか電話したのに何で出なかったのよ?」


「悪い、音消してて気づかなかった」


「音消してた!?

映画終わったら電話かかって来てないかも見てないの!?」


「そんな面倒なことするわけねぇだろ」


「……忘れてた。

アンタってそういう人間だった」


それで、とヒロムの人間性に今更ながら呆れさせられるレナにヒロムは再び質問をした。


「これからどうするんだ?」


「どうする……っていうか何も考えてないわよ?」


「というか、何でここにいるんだよ?

オマエもユキナもここから少し離れた所に住んでるはずなのに……」


「連れてきてもらったのよ。

今週に仕切り直しになったパーティー前にアンタに会っとけ、て」


「誰に?」


「誰……って愛華さんとスバルさんよ」


レナの口から出た二人の人物の名、一人はヒロムの母親。


そしてもう一人はヒロムもよく知る「月翔団」に属す女性で、そして何の理由があるのかは分からないがガイを鍛えた謎多き人物だ。


いや、ヒロムはその謎については白崎蓮夜や愛華と同じくらいには把握してるつもりだ。


(スバルが動いてるのが気にはなるが……母さんがこうして二人をオレのところに連れてこようとしたのは昨日の一件があったからだろうな。

そうなれば母さんが何を求めてるかは簡単にわかるな……)


なぜ二人がユキナとレナをここに連れてきたのか、それを悩むことも無くヒロムはその答えを導き出すとユキナとレナに一つ提案をした。


「母さんの考えは何となく分かった。

パーティーの日までウチに泊まれよ」


「え、いいの?」


「アンタってそんなに積極的だった?」


「悪いな、理由は何であれそうしなくちゃいけないことになってるみたいだ。

とりあえず拒否権は与えねぇけど、どうする?」


ヒロムの問い、それを受けてユキナとレナは迷うこともなく答えを伝えた。


「いく」


「断る理由なんてないわ」


「……分かった。

じゃあ……」


「あの……ヒロムさん。

ユリナのお願いは……」


分かってるよ、とヒロムは心配そうに尋ねてくるエレナに伝えるとユリナの方を見ながら言った。


「さぁ、ユリナ。

ついにオマエの番だ」


「う、うん!!」


***


同じ頃のショッピングモール屋上駐車場。



その角には貯水用タンクが設置されている。

本来なら人が入れぬようにされているのだが、貯水用タンクの上には一人の青年が座っていた。


その人物はヒロムもよく知る人物だ。


青年は何かをするわけでもなく、ただ空を見上げていた。


「……呑気なもんだなぁ、あの男も。

昨日あんだけ暴れてるのに休むことも無く動くとはなぁ」


このショッピングモールに似つかわしくない風貌、そして気の抜けた言葉からは到底予測も出来ぬあの化け物のような強さ。


そもそもなぜこの男がここにいるのか?


「さて……少し計画を進めるとするかぁ」

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