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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
心想恋華編
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一七〇話 wonder girl


「な、なな、何してるんですか!?」


突然現れた水色の長い髪の少女の行動戸惑うユリナは慌ててヒロムに抱きつく彼女を離れさせようとするが、彼女は離れようとしない。


「離れてください!!」


「え〜、この子なんか怖い……」


「急に現れてヒロムくんに抱きつくアナタの方が怖いです!!」


「ちょっと!?」


こちらのこの騒動に気づいたリサはエリカとともにこちらに駆けつけるなりユリナに加勢するようにヒロムに抱きつく少女に注意した。


「アナタね、周りの目を少しは気にしなさいよ!!」


「私は別にどう見られても気にしないわ」


「なんで見ず知らずのアナタが急に抱きついてるのよ!!」


「むしろ私はなぜ顔も知らないアナタたちに色々文句言われなきゃいけないのよ」


リサとエリカが順に注意をしても彼女は何食わぬ顔でヒロムに抱きついたまま離れようともしない。


「お、落ち着……」


「ヒロムくんも少しは抵抗して!!」


ユリナたちに何かを言おうとしたヒロムだが、そんなヒロムに向けてユリナは強く言うとさらに彼に抱きつく少女に質問した。


「アナタは誰なんですか?

初対面の相手に急に抱きつくなんて失礼ですよね?」


「いや、ユリナ……。

コイツは……」


「ヒロムくんは静かにしてて。

とにかく、早く離れてください」


「ええ〜……。

せっかくこうして温もりを感じてるのに」


どうかしたの、とアキナがチカとエレナとともにこちらにやって来るとユリナは助けを求めるようにアキナに訴えた。


「アキナ、この人何とかしてくれない?

急にヒロムくんに抱きついて……」


「……ユリナ。

その子はそういう子なのよ」


「そういう子なのよじゃなく……え?」


アキナの発した一言、それを耳にしたユリナとリサ、エリカは目を丸くしたような表情で一瞬戸惑ってしまい、そして真相を探ろうとユリナはアキナに質問をした。


「この人、知り合い?」


「ええ、ヒロムもよく知ってるわよ」


「でも……」


「……説明しようとしても落ち着かねぇから」


呆れた様子でヒロムはため息をつくとユリナたち三人に少女について説明した。


「コイツは……ユキナだ」


「ちゃんと説明してよ〜」


「……美神ユキナ。

これで勘弁してくれ」


いいよ、と少女は……美神ユキナは微笑むとヒロムの頭を撫でると抱きつくのをやめる。


そしてユキナはユリナたちを見ながらヒロムに質問した。


「ところでこの子たちは?」


「えっと……姫野ユリナと桃園リサ、高宮エリカ。

オレの……ことを慕ってくれてるヤツらだ」


「ヒロムくん……」


ヒロムの言葉に嬉しかったのかユリナたち三人は頬を赤くし、そんな三人を見たユキナはヒロムに向けて伝えた。



「へぇ〜……意外」


「何がだよ?」


「あんなに人のことに興味のなかったヒロムが今じゃ人の気持ちを理解してるなんて……成長したのね〜」


ユキナは微笑みながらヒロムに言うと再びヒロムの頭を撫でるが、それが嫌なのかヒロムは避けようとしてしまう。


「あら、嫌だった?」


「ガキじゃねぇんだから当たり前だろ」


「照れなくてもいいのよ?」


「照れてねぇよ!!」


「あ、あの……」


ユリナはヒロムとユキナの会話に割って入るように声をかけるが、せっかくのヒロムとの時間を邪魔されたのが嫌だったのかユキナはため息をつくと嫌そうに反応した。


「……何?」


「あ、あの……ヒロムくんとはどういう関係なんですか?」


「どういう関係って……ひとつ屋根の下で一夜を明かしたことのある婚約者よ」


「「こ、婚約者!?」」


ユキナの言葉にリサとエリカは声を揃えて驚いてしまうが、ユリナだけは違った。


彼女だけはユキナの言葉に対して疑問を持っていたのだ。


「婚約者ってアキナたち三人のことじゃないんですか?」


「三人?

ねぇ、ヒロム……この子は何を言ってるの?」


疑問を抱くユリナの言葉を聞いたユキナは彼女の言葉の意味が理解出来ず、それについてヒロムが知ってるのかどうかを確かめようとした。


「というか、なんで婚約者のことをこの子は知ってるの?」


「……エレナたちのことは共同生活してたことを含めてだが少し説明した。

ユキナのことは……ややこしくなるから言ってなかったんだよ」


「なるほど〜。

じゃあ説明してもいい?」


任せる、と少し投げやりにも思えるような返事をするヒロムの言葉を受けてユキナはユリナたちに「婚約者」について説明した。


「私は愛華さんに選ばれて婚約者になった三番目の女なの」


「三番目……?」


「ヒロムくんの婚約者は三人だけじゃなかったの!?」


「……ヒロムは一度も三人とは言ってなかったわよ」


驚くユリナとエリカにアキナは「婚約者」について詳しく説明し始めた。


「ヒロムが婚約者のことを説明した時、アナタたちに言ったのはなぜ婚約者が出来たのかとエレナが最初、私が二番目、最後がチカってことだけだったでしょ?」


「う、うん」


「さらに詳しく言うとここにいるユキナは三番目……ユキナとチカの間には他に五人いるのよ」


「えっと……」


「それって……」


「つまり……」


ユリナたち三人は恐る恐る確かめるようにアキナに尋ねようとし、それを察したアキナはただ一言で伝わるように要点をまとめて伝えた。


「ヒロムの婚約者はここにいない人も含めれば九人いるのよ」


「「「九人!?」」」


アキナの口から出てきた数字を耳にした三人はショッピングモール内で他にお客がいるということを忘れて声を揃えて驚いてしまい、そして三人はそれが本当なのかヒロムを見て確かめようとするが、ヒロムはどこか申し訳無さそうな顔で目線を逸らしていた。


つまり……


「本当のことなんだ……」


「嘘……」


「さすがお金持ち……なのかな?」


「でもヒロムさんの婚約者の件はあくまで精霊以外の心の支えになれる人を探すためでもあったので……えっと……」


驚き、そして言葉を失うユリナたち三人に説明するためにエレナは必死に言葉を探しながら話そうとするが、そんなエレナをじっと見つめながらユキナは不思議そうな顔をしていた。


「……どうかしましたか?」


さすがにその視線に気づいたエレナも一旦説明するのをやめてユキナに真意を聞こうとしたが、ユキナの口から出たのはエレナどころかその場にいた誰も想像していないものだった。


「エレナ……また大きくなった?」


「もしかして胸見てたの!?」


「相変わらずだなぁって思ったからね〜。

さすがは男を魅了するボディだね」


「……そんなつもりはありません」


「まぁ私もエレナには負けてるけどアキナには勝ってるかなぁ〜?」


「言っておくけど私は負けてないからね?」


「ていうかオマエらが揃うとなんでそっちの話題になるんだ?」


話が大きく脱線していることにヒロムはため息をつきつつ呆れていると、ユキナはヒロムになぜここにいるのかを今になって質問したのだ。


「今日はここで何してるの?」


「今になってそれ聞くか!?

……所謂、デートだよ」


「デート?

ヒロムが六人連れ回して?」


「一応、な。

そういうオマエは一人で何を……」


「今日はレナと買い物に来てたの。

で、レナがヒロムとアキナを見つけたっていうから二手に分かれて探してたの」


「何、レナが来てるの?」


するとなぜか突然アキナがものすごく嫌そうな表情をし始め、それを見たヒロムは少し呆れていた。


「まだ仲悪いのか?」


「まだ、というか仲は良くなったわ。

けど……苦手なのよ、レナは」


どんな人なの、とリサがアキナに質問をするとアキナは少し考えてからユキナとこのショッピングモールへと来ているはずのレナという少女について説明した。


「薄紫色の髪で、スタイルはリサと同じくらい。

服装の好みが変わってなかったら……多分男っぽい格好してる」


「あ、外見の特徴じゃなくて……どんな人なのか、人柄を聞いたんだけど……」


「……難しく考えるのが苦手なタイプね。

あと自信家で強気、負けず嫌いですぐに手が出る」


「うん、危ない人なのは分かったわ」


違いますよ、とチカはアキナの言葉を修正するようにリサに説明した。


「レナは少し不器用で思ったことをそのまま口にしてしまうところはありますが、根は真面目で優しい方なんですよ」


「そ、そうなんだ……」

(二人の説明聞いても全然分かんない……)


「探さなくてもいいんですか?」


「う〜ん……そのうちどっかから出てくるわよ」


チカはユキナに向けてレナを探さなくても大丈夫なのかを問うが、ユキナは面倒くさそうにあくびをすると適当な返事を返し、そしてヒロムに寄り添うとまた抱きつこうとしていた。


「それより……久しぶりに会ったんだからもっと甘えてもいいんだよ?」


「いや、大丈夫だ」


「もう、遠慮しなくていいんだよ?

私はヒロムが望むことなら全てやってあげたいんだから、ね?」


「……気持ちだけで十分だよ。

さすがに人目があって恥ずかしい」



「なら屋敷に連れて行ってくれればお風呂も入れてあげるしご飯も食べさせてあげるわよ?」


「……結構だ」


「気にしなくても……」


「ヒロムくん、そろそろデートの続きしない?」


ユキナの邪魔をするかのようにエリカがヒロムに告げ、エリカに言われてヒロムも咳払いをするとユキナに一つ提案した。


「悪いなユキナ。

これからまだユリナたちの願いを叶えるデートの続きをしないといけないんだ。

問題ないならついてくるか?」


「ヒロムくん、ストップ」


「こっちに来て」


するとリサとアキナがヒロムの体を引っ張るとそのままユリナやユキナたちから少し離れた位置へと連れていき、そして彼に忠告した。



「ヒロムくん、今日のデートは私たち六人のお願いを叶えてくれるデートだよ?

あの人が来たらそれどころじゃなくなるでしょ?」


「リサの言う通りよ。

ユキナが一緒だとこれから願いを叶えてもらうユリナとエレナも気まずいと思うわ」


「考えすぎだろ?

それにここで断ったら余計面倒くさそうなことにならないか?」


「それは……そうかもしれないけど。

だけどユリナのことも考えてあげて」


「こればっかりはユキナに優しくしなくてもいいんだから」


「……二人とも酷い〜」


するとユキナがヒロムたち三人の話に入るようにやってくるのだが、なぜか彼女はユリナを抱きしめながら来ていたのだ。


抱かれている当の本人も状況を把握出来ず、戸惑った様子でヒロムに助けを求めようと視線を送っていた。


「何してる……?」


「この子可愛くてつい……。

あっ、ついて行くけど邪魔はしないわよ?

それくらい我慢出来るもの」


「……どうする?」


ヒロムはユキナの同行について反対派のリサとアキナに結論を求め、二人もユキナの言葉を聞いて考えが変わったのか少し呆れながらも頷くとアキナはユキナに伝えた。


「ついてきてもいいけど、過度なスキンシップは禁止だからね?

みんなその条件でデートしてるんだから」


(オレそれ初耳なんだが……)


「了解〜。

じゃあ、さっそく行ってみよ〜」


「せめて私を離してください!!」


目的地へ向かうように急かすユキナに抱かれたままのユリナは開放されたいという思いとともに叫ぶが、ユキナは離そうとせず、ヒロムやアキナたちとともに次なる目的地へ向かい始める。


「わ、私は人形じゃないよ〜!!」

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