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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天獄激闘編
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一五八話 相反の力


紫色の稲妻を纏いながら手をかざしたヒロムの周囲に無数の粒子が集まり始め、さらに紫色の稲妻がラミアの体にも現れ始める。


「崇高なる輝きよ、王の魂の中で眠る大きな力を守り続け、その時の中で光と闇を調和する!!

聖と魔の力、二つ交わりし時、その内に眠る力は混濁して反転する!!」


ヒロムの全身に駆ける紫色の稲妻に追従するかのように白銀の稲妻が現れ、二つの稲妻は粒子を吸収しながら光と闇となり、魔力の剣を生み出していく。


「世界の理は彼女に委ねられる……!!

導け、「導姫」セレナ!!」



ヒロムが魔力の剣に向けて白銀の稲妻と紫色の稲妻を解き放つと、剣は闇と光を同時に放出しながらそれを吸収し、一人の少女へと姿を変えていく。


水色の長い髪を束ね、青いドレスのような装束に身を包んだ彼女は美しく、その手には剣を持っているが、その剣が少し異常だった。


剣からは闇と光の力がどちらも強く感じ取れ、そしてヒロムが放った二色の稲妻が時折姿を見せていたのだ。


「お呼びでしょうか、マスター」


「早速で悪いけど、「クロス・リンク」をやる」


「……分かりました」


させるか、と飾音は闇を纏いながらヒロムの行動を阻止しようと接近するために動き出すが、白銀の稲妻を纏ったフレイとメイリン、ベルナの三人が行く手を阻むように構えると飾音に攻撃を放ち始める。


「マスター、こちらはお任せください!!」


「足止めはしとくから」


「だから早く決着つけてよね!!」


「……任せとけ」


フレイたちが飾音の足止めに向かい、ヒロムはラミアとセレナをそばに置いてトウマを見つめた。


視線の先に少年からは怒りと憎しみを強く感じ、背中に纏う六枚の光の翼を広げた天使にも見えるその姿の相反する力を抱いているように見えた。


そして彼の視線は迷うことなくヒロムに向けられ、その視線からも強い憎悪を感じ取れる。


「……天使にはほど遠い憎しみに囚われてまで力を手にしたかったのか?」


「オマエこそ……何も無いくせに借りものの力でどうしてそこまで強がれる?

この世界は力が全て……それを理解していないのか?」


してるさ、とトウマの言葉に対してヒロムは一言返事をすると、さらにトウマに向けて語った。


「散々見てきたから分かってる。

能力を持つだけでどれだけ評価されるか、どれだけ期待されるか……力を見る度に力を求める姿も見てきた。

オレには何も無い……だからこそ同じように醜く求めようと抗った」


「求めようと求めずともオマエは「無能」……世界にとって不要な存在だ!!」


「……だから分かった。

何も無いからこそ……そばにいてくれる仲間の大切さ、戦えることの素晴らしさ、そして……誰かの想いに応えることの難しさを」


ヒロムはこちらの戦いをずっと見守っているガイたちに視線を向けると、続けてトウマに向けて語る。


「オマエらがオレを見捨てた中でオレのことを信頼してくれたヤツらがいてくれた。

だからこそオレは強く生きれた……そして、強くなろうと思えた」


「ふざけたことを言ってくれる……!!

仲間なんて生温いものに縋ってるだけのオマエにオレの何が分かる!!」


「分からねぇよ、オマエのことなんてな。

知りたくもないのは事実だ。

オレにとってオマエはオレの全てを証明するために倒すだけの存在だからな」


けど、とヒロムは紫色の稲妻を強めるとトウマに向けてハッキリと告げた。


「今のオマエは力に溺れて見るべきものが見えていない……それだけはハッキリと分かるよ」


「見るべきもの……?」


「それを教えてやるよ……「クロス・リンク」!!

「天妖」ラミア!!「導姫」セレナ!!」


ラミアが闇となり、セレナが光となると二つの力はヒロムの周囲を舞い、ヒロムはその中でさらに稲妻を強めていく。


「闇夜に染まれ、光輝を抱け我が魂!!」


ヒロムの全身を闇と光が包み込むと、その中から紫色の稲妻が解き放たれ、闇と光を体に取り込みながらヒロムがゆっくりと歩きながら姿を見せる。


「……天妖導魔!!」


新たなヒロムの「クロス・リンク」、その姿はこれまでのものとは雰囲気が違った。


闇を彷彿とさせる紫色のロングコートを纏い、両手は紫色のグローブを着用、コートの下には青い装束を着ており、腰には膝くらいまでの長さはある青いローブを巻いたその姿はスリムさを引き立たせる中でこれまでにはないどこか冷たくも妖しい力をその身から放っていた。


「……さて、トウマ。

最後の兄弟喧嘩を始めようぜ」


ヒロムは不敵な笑みを浮かべるとともに全身から闇を放出するとトウマを見つめ、それと同時に勢いよく走り出す。


「最後の兄弟喧嘩……?

オマエと兄弟だと思いたくもない!!」


トウマは飛翔するなり光の翼を大きく広げ、そして翼から無数の光の矢をヒロムに向けて放ち始める。


放たれた矢は強い光を放ちながら力を増すかのように加速してヒロムに迫っていく。


その過程で矢は鋭さを増し、そして回転を始めるとさらに加速して敵を貫こうとするかのように襲いかかっていく。


が、ヒロムはそれを視認しているにもかかわらず避けることもしようとせずにトウマに向けて走り続けていた。


「避ける気もないとは……よほどその力に自信があるようだな!!」


「力?

悪いな、当たらねぇから避けねぇんだよ」


ヒロムが走り続ける中で彼に向かって光の矢は接近するが、ヒロムの言葉が再現されるかのように光の矢はヒロムに当たることなく通り過ぎ、そして何も無いところで炸裂して消えていく。


「!!」


「どした?

当たらなくて驚いてるのか?」


「ただのまぐれだ!!」


トウマはヒロムに攻撃を命中させようと今度は光の刃を翼から放っていくが、ヒロムはそれを距離を詰めていく中で蛇行するように避けていく。


「な……」


「当たるわけねぇだろ?

今のオマエの……殺意剥き出しの攻撃なんざスキだらけなんだよ!!」


ヒロムは闇を纏うなり加速し、トウマの背後へと姿を現すと殴り、さらに連続で蹴りを放っていく。


「ぐっ……!!」


「たしかにオマエの能力はスゴいかもしれない!!

だけど感情に流されやすいオマエのその心は力を発揮させようとしない!!」


「だとしても!!」


トウマはヒロムの蹴りを防ぐと殴り返し、光のつ翼を羽ばたかせて衝撃波を放つが、ヒロムはそれを拳で防ぎながら闇を蛇の形へと変えていく。


「オレはオマエを殺す!!

「八神」のため……全てはオレが強くあるために!!」


「オマエの強さのためにオレが死ななきゃならない理由はない!!」


「現にオマエは「八神」の兵器として利用されるために生かされていた!!

それでも誰かのために戦おうなどと理想を抱くか!!」


「オマエのその考えだって理想でしかないだろ!!」


トウマが顔を殴ろうとした拳をヒロムは掴み取ると蛇を操作して光の翼に噛みつかせ、翼の中へと闇を注ぎ込んでいく。


「!?」


「オレを利用したいならやってみろ!!

ただし……オレはその野望ごとオマエらを潰す!!」


ヒロムが強く叫ぶと共に蛇は翼を一枚噛みちぎり、さらに光の翼は突然黒く変色すると塵のように散りながら消滅してしまう。


「な……」


「悪いが強くなってるのはオマエの力だけじゃない……!!

オレの中の精霊たちも闇を超えたオレとともに強くなってるんだよ!!」


ヒロムに拳に紫色の稲妻を纏わせると何度もトウマを殴り、さらに蛇は尾でトウマを縛り上げると何度も回転してから地面へと叩きつけてみせる。


「が……」


「ただオレを殺して強さを証明したいだけのオマエにはない強さを見せてやる!!」


ヒロムは魔力で剣を作り出すと手に取り、闇を纏うとともにそれを翼に変え、さらに剣に白銀の稲妻を纏わせる。


「……なぜだ……なぜ闇と光の力を同時に……」


「たしかにラミアの力は闇だ。

オレの中にあった強力すぎるあまりに封じられていた力そのものだ。

そしてセレナの力は光でありながら闇でもある」


「何……!?」


「ラミア、メイリン、ベルナ……この三人は闇に対して高い適正値があったが、セレナは元々聖騎士の精霊だったがために適正値は低かった。

それ故に……オレの力になるためにセレナは堕天の道を選び、闇と融合した光を操れるようになった」


ヒロムが剣を構え、飛翔すると白銀の稲妻が激しさを増しながら闇とともに大きくなり、そして紫色の稲妻を放出するとそれを無数の蛇に変えていき、蛇はトウマの体を拘束して動きを封じていく。


「な……これは……」


「セレナは結果として闇を制御する力を得た……だからこそこのラミアの強すぎる闇を使いこなせる!!」


ヒロムはトウマに向けて急降下すると闇を強くしながら周囲に放出し、そして加速すると回転しながら迫っていく。


トウマは何とかして自身を縛る蛇を引きちぎろうとするが、それに反応するかのように蛇は縛り上げる力を強めていく。


「この……」


「さよならだ……トウマ!!

オマエの全てを終わらせる!!」


ヒロムはトウマに接近すると同時に連撃を放ち、そこから放たれた斬撃と稲妻がトウマに襲いかかり、防ぐことも抵抗することも出来ないトウマは全てをその身に受け、吹き飛ばされてしまう。


「がっ……」


「オマエとの戦いもこれで……」


「「きゃあ!!」」


トウマを倒した、そう思っていたヒロムのもとへとフレイたちが飛ばされて来て、彼の前で倒れてしまう。


「フレイ!?

メイリンとベルナまで……」


「……助かったよ、そっちに気を取られてくれてな」


ヒロムのもとへと向かってくる飾音、その飾音の体からは得体の知れぬほどの闇が放たれていた。


「な……」


「ありがとう、と言っておくよ。

おかげで欲しかったオマエの力の一部を吸収出来た……」


だから、と飾音は音もなく消えてしまい、それとほぼ同時にヒロムは何かに殴られて天へと打ち上げられる。


「!?」


「お礼に殺してやるよ!!」


姿を見せた飾音は何度もヒロムを殴り、さらに姿を消すと目にも止まらぬ速さでヒロムを攻撃し続ける。


「この……」


ヒロムは飾音の攻撃を受ける中で闇を放とうとするが、飾音はそれを片手で消し去ると右手に闇を纏わせてヒロムを殴り飛ばしてしまう。


「ぐぁっ!!」


殴り飛ばされたヒロムは倒れてしまい、そして「クロス・リンク」が解けてしまう。


「なんだ……この強さは……」


「分かったよ、ヒロム……オマエが兵器にならずトウマも使い物にならないなら……オレが最強の兵器になれば良かったんだよ!!」


「……はぁ?」


「最初から全てを奪ってオレだけが強くなれば良かったんだ!!

そうすれば「八神」は最強になれたんだぁ!!」


狂気に満ちた笑みを浮かべ、そして狂った思想を露わにする飾音のその姿を目の当たりにしたヒロムはただ呆れるしかなかった。


強さに囚われ、そして理想を求めるが故に周りが見えなくなって暴走したがために今の飾音は見るに堪えない。


「……トウマを倒しても、アンタがいる限りは平和な生活なんて無理があるな……」

ヒロムは立ち上がるとため息をつき、そしてあることを考えた。


(……使うしかないか……奥の手を……!!)


「フレイ……ラミア……。

悪いが、オレの力になってくれるなら……力を貸してくれ!!」


ヒロムはフレイとラミアに向けて言うと全身に稲妻を走らせる。


「オレの全てをかけてでも勝利してみせる……!!」



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