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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天獄激闘編
149/672

一四九話 絶対的力


「オレが自らが潰す」


飾音、バッツ、トウマ、さらには「四条」の強化兵である能力者の集団を前にして一条カズキは全員を一人で倒すと宣言したのだ。


さすがに無謀すぎると思ったガイたちは困惑を隠せないが、それを聞いた鬼桜葉王は頷くとともにシンクに歩み寄る。


シンクは自身の身を犠牲にしてまで発動した力により全身が氷に蝕まれており、その体は氷の彫像のようになりつつあった。


「また派手なことをしてるなぁ……」


仕方ない、と葉王が指を鳴らすとシンクの全身を蝕む氷が砕け散り、綺麗に消滅してしまう。


「……!?」


「これで問題はずだ。

まぉ、命は粗末にするなよォ?」


「オマエ……何を……」


シンクは限界に達した肉体のダメージによって声が出ない中で葉王の真意を確かめようとするが、葉王はシンクに背を向けるとヒロムに向けて手をかざした。


「さて……やるか」


葉王が強くヒロムを見つめると、ヒロムは音もなく葉王の前へと移動する。


いや、移動させられたの方が正しいのかもしれない。

葉王の前へと現れたヒロムはなぜ自身がそこに移動したのか分からずに困惑したような顔をしており、そんなヒロムを葉王は勢いよく殴り飛ばした。


それは飾音たちの方でも周囲を取り囲む強化兵である能力者の方でもない、誰もいない方向へだ。


「……まぁ、時間は稼いでおく」


葉王はカズキに向けて言うとヒロムのもとへと走っていく。


それを確認したカズキは頷くが、そんな中で双座アリスは確認した。


「……オレはどうすればいい?」


「好きにすればいい。

ただし、計画の邪魔だけはするなよ?」


「……ならアイツはオレが引き受ける」


アリスはカズキに告げるとともにトウマとの距離を詰め、彼に蹴りを食らわせると大きく吹き飛ばしてみせる。


「な……」


「さて、「八神」の実力見せてみろ」


トウマに追撃を加えようとアリスは走り出し、そしてトウマに襲いかかっていく。


「くっ……余計なことを!!

だが数はこちらに分がある!!

やれ、強化兵ども!!」


飾音の指示が「四条」の強化兵である能力者たちに伝わっていき、彼らは武器を構えるとカズキに狙いを定め始める。


が、カズキは一歩も動こうとせず、ただ腕を組んで立っていた。


「……」


全く動く気配がない。


それを見た飾音は自身のことを完全に見下していると判断し、そしてそれによる怒りにより叫び出した。


「さっさと殺せ!!

ガキが調子に乗ればどうなるかを教えてやれ!!」


飾音の言葉を受けて強化兵である能力者たちは動こうとした。


が、そんな彼らの頭上から無数の刀剣が雨が地に降り注ぐかのように勢いよく襲いかかっていく。


「う、うわぁぁぁ!!」


迫り来る無数の刀剣が彼らを襲うと共に貫き、次々に地へと倒れさせていく。


ガイたちを包囲するように整列し、カズキを倒そうと武器を構えていた彼らのほとんどが天より襲いかかってきた刀剣により倒され、壊滅的な被害を受けてしまっていた。


そんな中で何とか攻撃から免れた能力者たちはカズキに向けて武器を構えながら走るが、カズキは腕を組んで立ったまま動こうとしない。


「……」


「スキだらけだ!!」


能力者たちはカズキを背中から襲おうと距離を詰めようと走ってくるが、それでもカズキは動かない。

いや、動く気配がない。


「……」


「その命……」


「うるさいぞ、砂利」


カズキが一言呟くと大地が大きく揺れ、それと同時に地面が隆起するかのように大剣が出現してカズキに向けて走ってくる能力者たちを貫いていく。


大剣によって能力者が倒れる中、カズキの左右を挟むように二人の大男が現れる。


体長二メートルはあるのではないかと思われる大男は拳を強く握るとカズキの頭を叩き割ろうと拳を叩きつけるが、二人の拳はカズキに触れることなく何かに弾かれ、気づけば彼らの腕は無数の剣に貫かれていた。



「がぁぁあ!!」


「耳障りな音だ。

聞くに値しない……雑魚が」


カズキが軽くため息をつくと天が泣き、そしてそれは雷鳴へと変わると巨大な落雷となって大男二人に襲いかかる。


天から彼らに直撃するまでの時間は瞬きすら許さぬほどはやく、爆音が轟くとともに彼らは雷を全身に受けて黒く焼け焦げて背を地面につけるように倒れてしまう。


「脆弱なくせにオレを倒せると思ったのか?」


カズキは呆れた口調で言うと飾音を見つめ、そしてただ冷たく彼に告げた。


「死体を増やしたくなければかかってこい」


「このクソガキが……!!

いつまでも偉そうにしやがって……射撃部隊!!」


飾音が苛立つ中で指を鳴らすと新たな能力者たちがカズキの背後に現われて機関銃を構え始める。


「撃ち殺せ!!」


飾音の言葉を合図に能力者たちは機関銃の引き金を引き、避ける隙間もないほどの量の弾丸を雨の如く放ち始める。


が、それでもカズキは腕を組んだまま避けようともしなかった。

おや、それどころか呆れた様子でため息をついていたのだ。



「……理解力がないヤツだな」


カズキがつぶやく中で雨の如く放たれた弾丸は彼に迫っていくが、彼に命中することなく、目に見えぬ何かにぶつかったかのように次から次に砕けて消えてしまう。


「その程度じゃオレは倒せない。

それに、貴様らは射撃というのを分かっていない」


カズキの言葉に反応するかのように彼の周囲に無数のミサイルポッドが現れ、それらが機関銃を構える能力者たちの方へと向けられる。


「人を撃ち殺したいならこれくらいやってみせろ」


ミサイルポッドから勢いよくミサイルが放たれ始め、放たれたミサイルは能力者たちに容赦なく襲いかかる。


「う、うわぁぁぁあ!!」


迫り来る無数のミサイルを前にして錯乱し始めた能力者たちはどうにかして逃れようとミサイルに背を向けて走り始めるが、そんな彼らが逃げるのを待つことも無くミサイルは彼らに襲いかかるとともに大きな爆発を起こしていく。


「ぎゃぁぁあ!!」


「あぁぁあ!!」


ミサイルに襲われる中で鳴り渡る悲鳴、そしてそれを消そうと爆炎が悲鳴のもとである能力者を焼き消していく。


「……他愛もないな」


「いつまで余裕なのかなぁ!!」


するとバッツがカズキの前に現れるなり殴りかかるが、バッツの拳は届くことなく何かに弾かれてしまう。


「……!?」


「貴様か……。

精霊でありながら強欲に力を求めた愚かな道化が今更オレに何の用だ」


「決まってんだろ!!

テメェの能力を奪うために……」


「無駄だ」


カズキが一言冷たく言い放つと、バッツの体が無数の剣に貫かれていく。


いや、貫かれていたの方が言い方としては正しいかもしれない。


何故ならバッツの体はいつの間にか剣に貫かれていたのだから。


「が……」

(ありえねぇ……!?

オレは一切集中を切らさなかった……なのにどうして……!?)


「自分が強い、相手の力を奪えば誰にも負けない……そう思っていたのか?

たかだか精霊の力如きで奪われるほど弱い力は持ち合わせていない。

貴様如きが強者にでもなれると思ったのか?」



腕を組んだまま次々にバッツに向けてカズキは言葉を放ち、そして気づけばバッツは大きく吹き飛ばされていた。


カズキは一切動いておらず、腕を組んだままいる。

が、それでも彼がやったということはわかる。


「こ、この……」


無数の剣に貫かれたままの体でありながらバッツは何とか受け身を取って構えるとカズキの方を見るが、その瞬間、バッツは絶望というものを思い知らされる。


「バカな……」


カズキの頭上には無数のグレネードランチャーが展開されており、さらにバッツの頭上には数百のミサイルがバッツに狙いを定めながら滞空していたのだ。


「こ、こんなこと……」


これまでヒロムやガイたちの敵として絶望させる側にいた彼はここに来て初めて思い知ったのだ。


己の力の限界と、人が味わう絶望感を……


「消えろ」


カズキが呟くとともにグレネードランチャーが火を吹き、さらにミサイルがすべて同時にバッツに襲いかかる。


「がぁぁぁあ!!」


グレネードランチャーとミサイルによる爆撃にバッツは抗うことも出来ず、バッツの体は爆炎に飲まれていく。


「バッ……」


飾音が慌ててバッツ助けに向かおうとするが、そんな飾音の行動を妨害するかのように二本の刀が彼に襲いかかる。


「そんなもの……!!」

飾音は風を一点に集中させて剣をつくると迫り来る二本の刀を防ぎ、バッツのもとへ向かおうとする。

が、不可能だった。


二本の刀は誰かの手に握られることも無く意思を持つかのように飾音に襲いかかっているが、その動きはまるで誰かが手に取って剣術を披露してるかのように華麗な動きかつ力強さを感じられた。

「これが……」


「貴様らとオレの力の差だ」


そして二本の刀は飾音の風の剣を破壊し、さらに飾音は何かに襲われて吹き飛ばされていく。

「クソ……!!」


吹き飛ばされた飾音は何とかして体勢を立て直すが、ふのバッツの方を見ると彼は目に映った光景に言葉を失っていた。


「バッツ……!?」


飾音の目に映ったバッツの姿、それは肉体全てが爆炎によって焼け焦げ、それがバッツであると認識票るには難しいほどに人としての原型を保っていない炭のようになっていたのだ。


「相手を間違えるからこうなる。

貴様らは無駄に命を落とす、それだけだ」


カズキが冷たく告げると共に無数の雷がバッツであった炭の塊を粉砕し、さらに飾音の周囲で大きな爆発かま発生して彼を巻き込んでいく。


「があぁぁあ!!」


一方的、それしか言い表せそうに無い。

先程までガイたちを圧倒していた飾音たちを突如現れた一人の男が一方的に蹂躙している。


カズキがやってみせた一連の出来事は一人の能力者の力とは思えず、そしてカズキの攻撃によって戦場は地獄絵図のように酷いものへと変わっていた。


そして、何より……


何より恐ろしいのは、カズキは腕を組んだままの姿勢を崩すことなく立ったまま、その場から動くことなく迫り来る敵を全て倒しているのだ。


「一条」の当主、「十家」最強の実力。

その力を目の当たりにしたガイたちは心の奥底から圧倒的な力の差と先の見えぬ絶対的な恐怖に襲われていた。


「あ、あれが……能力者……!?」


「格が違う……。

あんなのを……オレたちは倒そうとしてたのか……!?」


「……さて」


ガイたちの言葉をかき消すかのようにカズキは小さく呟くと、ようやく動き始める。


爆炎に飲まれていく飾音に背を向けるとガイたちのもとへと歩いていき、そして迷うことなくある人物のもとへ向かっていく。


「計画のためにはあの男は不可欠。

それを取り戻す方法は一つある」


「くっ……」


迫り来るカズキを前に構えようと考えるガイだが、今目の前で見たカズキの力に対して少しの恐怖心があるのか、体は動こうとしない。


「……安心しろ。

今のオレは貴様らを殺す気は無い」


「今は、か……」


「それに貴様らにとっても重要なはずだ。

「覇王」を元に戻す方法はな」


「どうする気だ……?」


決まっている、とガイの質問に対してカズキは自身が歩み寄ったある人物を見ながら告げた。


「全ての希望はオマエに託されている……精霊・フレイよ」


ある人物、それは主であるヒロムが闇に支配された姿を見てショックを受けて何も出来ずにいたフレイだった。


「私……ですか?」


「ああ、今こそ貴様の真価を発揮する時だ」


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