表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天獄激闘編
137/672

一三七話 因縁の対決


時は遡り、二日前。


ソラとシンクが屋敷に来て、そして今回の作戦を決行すると決めた日の夜。


ヒロムはシンクからトウマの能力について確認するように話を聞いていた。


「……なるほど。

トウマの能力は精神状態が安定してないと機能しないのか」


「ああ、オレが確かめたから間違いはないが……おそらく対策は用意されてるはずだ」


「だろうな。

散々バカにしてきたオレでも倒せる糸口が見つかったとなればアイツも何かするだろうしな」


シンクの話から何か対策を練ろうとしたヒロムだが、ふと疑問に思ったことを質問した。


「アイツの「天霊」は全部の能力を防げるのか?」


「全部かは分からないが……アイツの光の矢を氷で防ごうとしたら氷が消されたしな。

アイツの光に触れれば消されるのは確かだな」


「光に触れれば、か……」


「それは語弊がありますね」


すると二人のもとへ光とともにセラが姿を見せる。


その瞬間、ヒロムはあることを思い出した。

そう、それはセラがパーティー会場で現れてバッツの攻撃を防いだ時の言葉だ。


『マスターのかつてのご兄弟と同じ力ですが、本質が違います』


セラの言葉、それはセラの「天霊」の能力はトウマと同じ力だと認めているのだが、本質というのが気になるのだ。


「なぁ、セラ」


「わかってますよ、マスター。

今から説明させていただきます……あっ、少し氷を出してもらえますか?」


セラは急にシンクに氷を求め、シンクはそれに協力するように右手から氷を出すと彼女に手渡した。


それを受け取ったセラは「天霊」の能力について説明を始めた。


「まず「天霊」の能力は光を操り、それを用いることで魔力や能力による攻撃を無効にします」


セラは左の人差し指に光を纏わせると氷をつつき、氷は光に触れたことで音もなく消えていく。


「それは分かってる。

オレもトウマと戦ってこの目で……」


「話を聞いてください、シンク。

バッツとの戦闘中に私が「本質が違う」と言ったのは力の起因する動機です」


「動機……?

それはオマエがヒロムの力になりたいとかアイツがヒロムを殺したいってことと関係あるのか?」


「はい、その通りです。

私の「天霊」はマスターへの敵意や悪意を持つ魔力や能力を無効化することに長けていますが、おそらく彼の力は自身の敵を殲滅するために根本から無効化できる可能性があります」


「可能性、の話か……」


「そうですね……ですが根本的な無効化できる点は変わりません。

今ので氷もアナタがマスターに対して攻撃するために作ったものでなくても消せたのは無効化するという根本的な機能が作動したからです」


「……つまり、力を無効にする点は変わらないってか」


ですが、とセラはシンクの言葉を訂正するように語り始めた。


「彼の力には穴があります」


「穴?」


「今言ったように私の力はマスターへの攻撃を無効にします。

これはマスターへの敵意や悪意を感じることで機能するからこそ発動します。

彼の場合……情報が少ないがために断定は出来ませんが、彼の能力は全てを無効にできてもできない場合があります」


「……?」


「どゆこと?」


「……シンク、アナタの氷が消えたのは彼がアナタの氷の能力を「知っていた」からではないでしょうか。

全てにおいてメカニズムは存在します。

そのメカニズムを理解していない能力無効にできない可能性があります」


「……なるほど、そういうことか」


セラの説明から大体を理解したシンクは「十家」について語り始めた。


「全てにおいて優れているなら「十家」内の序列が三位で止まるわけないからな。

「十神」と「一条」の能力を防げないからこそ三位ならば、その仮説は納得出来る」


「はい、その通りです。

ですが確かめないことには……」


だったら、とヒロムは何か閃いたような顔でシンクに話した。


「オレならそれを再現できるかもしれない」


「何か方法があるのか?」


「アイツが理解してなきゃ消せないのなら、その理解が追いつかない現実を見せればいいってことだろ?」


「その方法があるならな」


「あるさ。

オレには……いや、オレたちにはな」


ヒロムの言葉から何を言ってるのか理解できなかったシンクは首を傾げるが、理解出来たセラはシンクへ説明した。


「マスターにのみ出来る奇跡の力なら出来るかもしれません」


「奇跡の力……もしかして「ソウル・ハック」か?」


「そうです。

マスターの「ソウル・ハック」は私たち精霊との共鳴状態を今の状態よりさらに高めることができる力です。

このメカニズムは口で言うのは簡単ですが、全てを理解するのは不可能だと思います」


「だけど、決定打に欠けないか?」


「いいや、シンク。

決定打ならいくらでもある」


「……そうか!!」


そういうことか、とヒロムが何を言いたいのかを理解したシンクはそれを確かめるようにヒロムに向かって尋ねた。


「オマエが精霊二体と力を合わせる「クロス・リンク」ならトウマを倒せるかもしれないんだな?」


「ああ、オレにしか出来なくてオレでなければ出来ない「クロス・リンク」ならトウマと対等に戦えるかもしれない」


ヒロムの脳裏に葉王の言葉が蘇る。


『どんなに力をつけてもオマエにも勝てない、そしてオレらにも勝てない。

それが今の八神トウマの置かれた状況だよ』


(葉王がこれを理解していてアレを言ったのなら、とるべき手段はこれしかない)


「そうなったらトウマはヒロムがやるべきなのか……」


「悪いな。

今まで色々用意してくれてたのにさ……」


「別にいいよ。

オマエの望みが叶うならな」



***


「らぁっ!!」


アイリスとイシスと「クロス・リンク」したヒロムはトウマを何度も殴り、さらに蹴りを食らわせる。


「この……!!」


トウマはヒロムに向けて何度も光を放つが、光を受けてもヒロムの「クロス・リンク」は消えず、それどこらか何の変化も生じない。


「どうして……!!」

(なんで「天霊」の力が効かないんだ!!

オレの精神状態が安定してる今なら確実に効くはずなのに……どうして!!)


「さっきから何の為に光放ってるのか教えてくれや!!」


自身の力が通じないことで焦りを感じ始めるトウマに向けてヒロムは言い放つとともに蹴りを放ち、トウマを勢いよく蹴り飛ばす。


が、トウマは何とかして体勢を立て直すとともに四枚の翼を羽ばたかせて飛翔する。


そんなトウマを前にヒロムは挑発するように告げた。


「哀れだな……。

今まで散々オレを見下してきたのに、今のオマエ……オレから距離を取ろうとしてなかったか?」


「黙れ……!!

オマエ……何をしたんだ?」


「何が?」


「なんでオレの力が効かないんだよ!!」


トウマは苛立ちを解き放つように叫ぶが、ヒロムはうるさそうな顔をしながら槍を装備すると確かめるように言葉を発する。


「さっきも言ったよな?

「クロス・リンク」は「天霊」による外部からの干渉を受けないって分かってないのか?」


「それは理解した。

だがアレほどの力を受けても消えないわけがない!!」


「……うるせぇな」


(セラは深掘りして考察してたみたいだけど、コイツはアレだな……力に溺れて現状を見ていないだけだな)


ヒロムは槍を振ると構え、そしてトウマを見つめるなり体勢を低くする。


「まぁ……理解してねぇならそれでいい。

ここで倒されてくれればいい」


「黙れ!!」


トウマは白銀に光る拳銃をヒロムに向けて構えようとするが、ヒロムは全身を霧へと変えると消えてしまう。


「そんなもの!!」


拳銃から光の弾丸が放たれ、弾丸は霧を消しさろうとする。


しかし、弾丸が横切ったはずの霧は消滅せずに徐々に周囲へと広がり始めたのだ。


「な……なんでだ!!

オマエの体ではなく、精霊から借りた能力なら消せるはずだ!!」


うるせぇな、とトウマの周囲に霧が充満するとヒロムが姿を現すと槍で襲いかかるがトウマは何とかして避けると再び光を放つが、光を受けたヒロムは霧となって消えてしまい、霧がさらにトウマの視界を遮ってしまう。


「なんで……オマエには効かないんだよ……!!」


「苛立つなよ」


トウマの背後に現れたヒロム、彼は槍を構えるとトウマに斬りかかるがその一撃を光の翼で防がれてしまう。


「……視界が悪くても気配は感じれるんだよ!!

バカに……」


「どうかな?」


するとトウマの前にヒロムが現れる……のだが、トウマの背後には槍を構えたヒロムがいるのだ。


「な……何が……」


「驚くなよ」


さらにヒロムがトウマの横に現れ、そして今何が起きてるのか語り始めた。


「これがイシスの能力による幻術を利用したものだ。

どうだ、今まで散々防いできた能力を防げない今の気持ちは?」


「幻術か……なら本来は効いてるってことか?」


「……あ?

んなわけねぇだろ」


三人のヒロムが霧となって消え、トウマはヒロムを探そうとしたが、体が動かなかった。


「!?」


なぜ動けないのか?

それを確かめようとトウマは体を見ると、体の所々が凍りついていたのだ。


「何……!?」


(いつの間に……これも幻術……)


「一つ教えてやるよ、バカ」


すると突然霧が晴れ、トウマの眼前にヒロムが槍を構えて立っていた。


が、ヒロムの持つ槍は氷を纏っており、そのサイズは身の丈以上になっていた。


「今オマエが見てたのはすべて現実だ」


「何を……言っている?

今オマエが幻術だと……」


「幻術だが実体を持つ幻術……名をつけるなら「幻術体」かな」


「馬鹿げてる……!!」


「ちなみにこの氷とオマエの体の氷はアイリスの能力で熱を吸収して生み出した氷だ。

熱吸収と高度な幻術……これがこの「零幻杖槍」の力だ」


ヒロムが槍を持つ手に力を入れると周囲が勢いよく凍りつき、さらに槍の氷が大きくなっていく。


「防げるなら防いでみろよ……トウマ!!」


ヒロムは大きく飛び上がるとともに槍を振り回し、それにより槍の氷は周囲に飛散すると次々と刃へと変化していき、ヒロムとともにトウマに襲いかかる。


「はぁぁぁぁあ!!」


「この……無能がァァァァ!!」


トウマは光の翼を羽ばたかせて全身の氷を砕くも右手に光を纏わせるとヒロムに殴りかかろうとする。


「あぁぁぁぁあ!!」


「……アブソリュート・ディープアイシング!!」


ヒロムはトウマの拳の一撃を避けると槍でトウマを突き、さらに氷の刃が次から次へとトウマに襲いかかる。


それによりトウマは全身にダメージを負い、そして吹き飛ばされてしまう。


「がぁっ!!」


吹き飛ばされたトウマの体から光の翼が消え、そしてトウマは地面を転がるように倒れてしまう。


「この……クソが……」


倒れたトウマは何とかして立ち上がるとヒロムを強く睨み、そして拳銃を構えた。


が、ヒロムは再び槍を構えるとトウマに忠告した。


「やめとけ。

オマエじゃオレは倒せない」


「……まだだ。

まだ終わりじゃない……この力をまだ残してるからな」


するとトウマは構えた拳銃に向けて光を放ち、それを受けた拳銃は何かを勢いよく放出する。


放出されたそれは無数の光を放ちながらトウマの周囲を舞い、そしてトウマの前で止まると二本の剣へと変化していく。


トウマは拳銃を捨てると二本の剣を手に取り、再び翼を四枚出現させるとその身に光を纏い始める。


「あれは……」


「天霊剣……オーディンとともにオマエを殺すために造り上げられた人造聖剣……」


天霊剣と呼ばれた剣を強く握ると、トウマの肉体から傷が次々と消失していく。


再生というには程遠い、それは「天霊」の力で無効化して消してると言った方が表現としては近いかもしれない。


「まだやるってか?」


「ここからが本番だ……「無能」!!」


「どっちがだよ……コラ。

そんなにハッキリさせたいならさせてやるよ……」


ヒロムは「零幻杖槍」を解除するとすぐにセラとリリアを呼び出し、白銀の稲妻を全身に走らせる。


「オマエが本気なら見せてやるよ。

オレの……オレたちの更なる可能性を」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ