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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
天獄激闘編
131/672

一三一話 鎮魂の炎


拳角と獣人へと姿を変えた狼角を相手にするヒロム。


「はぁっ!!」


「くらえ!!」


二人の容赦のない一撃がヒロムに向けて放たれるが、ヒロムはそれを防ぐこともせずに軽快な動きで回避すると二人を挑発するように言葉を放つ。


「この程度なのか、角王の本気は?」


「……何?」


ヒロムの言葉に反応した拳角は全身に炎を纏うと殴りかかるが、ヒロムはそれを避けるなり拳角の腕を掴んだ。


「大した力も発揮できないくせに一人前のふりして力を見せつける。

オレからすればオマエらはその程度なんだよ!!」


ヒロムはその手に掴んだ拳角の腕を自分の方へと引っ張ることで拳角を自分に近づかせ、接近すると同時に腹に蹴りを食らわせて蹴り飛ばしてしまう。


「がっ……!!」


「調子に乗るな!!」


狼角は何度も何度もヒロムに攻撃を放つが、ヒロムはそれを計算したかのようにすべて無駄のない動きで避けながら狼角に向かって進んでいた。


「この……当たれよ!!」


「当たるわけねぇだろ?

そんな雑な攻撃」


「……格が違うんだよ!!

オマエとオレとじゃ!!」


確かにな、と狼角の放った大きな一撃を避けるとヒロムは一気に狼角に接近し、そして拳を構えるとともに告げた。


「オマエらよりオレの方が強い!!」


ヒロムは拳に力を入れると渾身の一撃を狼角に叩きつけ、そして狼角を大きく吹き飛ばしたが、狼角は何とかして受身を取ると立ち上がってしまう。


「このガキ……」


「そのガキにボコボコにやられてんのはオマエらだろ?

力に固執するくせして実の所は弱いから力に縋っている。

哀れなまでに醜いな」


「この……狂ってやがる!!」


当たり前だろ、とヒロムは狼角と拳角に対して冷たく言い放つ。


「命の駆け引きに身を委ねて傷つくことも恐れずに戦場を狩る……そんなことしてる時点でオレもオマエら能力者も普通じゃねぇ……戦いに身を投じた時点でオレたちは狂ってるんだよ!!」


「な……」


「バカなことを……」


見せてやるよ、とヒロムは白銀の稲妻を全身に走らせながら構えると二人を冷たく睨む。


「オレの覚悟はオマエらじゃ止められないってことをな!!」




***


ガイとシオンが敵を倒し、ヒロムも二人の敵を相手に善戦している。


それを自身の目で確認したソラは銃を構えると射角に狙いを定める。


「こっちも始めるか……」


「偉そうな口を……今までのような醜態は晒さねぇ。

オマエを殺して、あの「無能」も殺してやる!!」


「強がって叫べばその度に己を小さくするだけだ。

過度な挑発は控えた方がいいぞ」


黙れ、と射角は銃を取り出すなりソラに銃口を向け、数発弾丸を放つ。


ソラに向かって放たれた弾丸は標的に迫っていくが、ソラはそれを前にして避けようとも防ごうともせずに銃を構えたまま立っていた。


しかし、そんなソラに迫っていく弾丸は突然、紅い炎に包まれて灰となって散ってしまう。



「あ……?」


「この程度か?」


自身の放った弾丸が消えて驚く射角に向けてソラは無数の炎の弾丸を数発放ち、そして射角に向かって走り出す。


射角はソラが放った炎の弾丸を避けると構え直して攻撃に移行しようとするが、ソラは射角との距離を詰めながら次々に炎の弾丸を放っていく。


「コイツ……うぜぇな!!」


射角は炎の弾丸を防ごうと周囲に大きな爆発を起こして爆風を発生させて壁にすると、それにより炎の弾丸を防いでいく。


が、ソラは爆風に向けて炎をビーム状にして放ち、爆風を消していく。


「!!」


爆風に身を隠そうとしていた射角はソラの放ったビーム状の炎に驚いてしまい、防御が遅れて数発直撃してしまう。


「ぐぁっ!!」


「その程度で止まると思ったか」


ソラはさらに無数の炎の弾丸を射角に向けて放ち、射角もそれを防ごうとして間に合わずに直撃を受けてしまう。


「ぐぁぁあ!!」


炎の弾丸、ビーム状の炎を受けた射角は確実にダメージを与えており、射角の体は火傷を負っていた。


「クソッタレが……!!」


この程度か、とソラは銃を射角に向けて構えると全身に紅い炎を纏わせる。


ソラの紅い炎を見た射角は魔力を身に纏うが、なぜか動こうとしない。


「……無様だな」


「何を……」


「オマエは今、オレの次の行動に警戒して動けなかった。

そしてオマエのこれまでの攻撃は安直に終わらせようと急いだだけで威力もない……惨めな抵抗にしか感じ取れない」


「少し強くなったからって調子に乗るな!!」


「……オマエがだろ」


ソラが射角に向けて右手をかざすと射角が身に纏う魔力が消失し、そして射角の周囲に無数の炎の柱が出現する。


「!!」



「初めてオマエがオレたちの前に現れてから今に至るまで……オマエは何も変わっていない。

その地位にいることで手一杯で成長することもないオマエの方が調子に乗ってんだろ」


「ふざけたことを言うな!!

オレはオマエの相手がしたいんじゃねぇ、あの「無能」を殺すためにここに……」


「それが調子に乗ってんだよ!!」


ソラが強く吐き捨てるとともに炎は激しく燃え、そして紅い炎は周囲のものを焼きながら射角に殺意を向ける。


「大した実力もないくせして高みにいる王の首を討ち取ろうとする。

目の前にいるオレを倒すことすら出来ないオマエがアイツを倒せると思うのか?」


「黙れ黙れ……黙れ!!

オレは負けない……あんな「無能」に負けるわけがねぇんだ!!」


射角は魔力の球を無数につくると周囲に放ち、球は地面に当たると次々に大きな爆発を起こしていく。


ソラの言葉を否定するように射角は行動を起こしたが、ソラはそれを見ても何の反応も示さない。


いや、呆れて何も言えないのだ。


「……何のつもりだ?」


行動の真意を確かめるように射角に問うソラだが、射角は答えることなくソラを睨みつけると自身の周囲に無数の球体を出現させる。


「……黙れ、ガキ。

オレは弱くなんかない……!!」


射角は何かを懐から取り出し、それを首もとへ構えた。


何を持っているのか、それをよく見たソラは少し驚いた顔を浮かべると慌てて止めようとした。


「やめろ……!!」


射角が手に持っているもの、それは紫色の液体が入った注射器だ。


ソラはそれを破壊しようと銃を構えるが、射角は首に注射器を刺すと液体を体内へ注入していく。


「がぁぁぁあ!!」


その瞬間、射角は苦しみ出すとともに紫色の瘴気のような魔力を身に纏い始める。


「テメェ……!!」


「魔力増幅剤……コイツは命を削る代わりに……膨大な量の魔力と力を……手に入れる……!!

この力で……オレは!!」


射角が周囲に出現させた球体をソラに向けて放ち、ソラは炎でそれを防ごうとした。


が、球体は炎に触れる手前で爆発すると紫色の爆炎となってソラに襲いかかる。


「なっ……!?」


「この力ならオレは負けねぇ!!」


ソラは何とかして紫色の爆炎を防ぐと反撃しようとするが、ソラの行動を妨げるように射角は次々に紫色の爆炎を放ってくる。


その度に瘴気のような魔力は大きくなり、射角は苦しそうにしていた。


「これで……オレは……!!」


「バカかオマエは!!

命を削ってまで全うすべきことなのか!!」


「オマエにはわからないさ……!!

オレは……こうして角王を名乗るのも煙たがられる……。

二度の失敗、換えのきく能力者はいくらでもいる……!!

オレは……オレのためにやってんだァ!!」


射角は雄叫びをあげながら周囲に爆炎を放ち続け、そして廃工場の壁を次々に破壊していく。


「くそ……!!

このままじゃ崩落する……!!」

(こうなったら……!!)


「炎魔劫拳!!」


ソラは両手に紅い炎を集めると両手を変化させると走り出す。


鬼にも似たような姿へ変化した両手に備わった鋭い爪に炎を集めるとソラはさらに加速し、射角との距離を詰めていく。


「来るなら来い……!!

ここでオレが……殺してやる!!」


「悪いな……角王。

ここで死ぬのは……オマエだ!!」


黙れ、と射角は紫色の爆炎を迫り来るソラに向けて放つが、ソラは高く跳んでそれを避けるとともに一気に距離を縮め、そして爪に集めた炎を鋭く尖らせると射角の体へ突き刺した。


「がっ……!!」


「はぁぁあ!!」


さらにソラは両手の爪で射角の肉体を抉り、紅い炎を射角の体にぶつけて炸裂させる。


「がぁ……!!」



ソラの猛攻を受けた射角は傷だらけ、そして血だらけになって倒れ、そして体から瘴気のような魔力が消えていく。


「……この野郎……まだ……」


「……終わりだよ。

アンタの……人生もな」


「……何を……」


何を言っている、そう言おうとした射角の体が徐々に粒子に変わり始めていく。


それを目の当たりにした射角は何かを悟ったのか、ソラに対して何かを言おうとするのをやめた。


「……まだ何も成してないのに……終わるのか……」


「……あのままいけば、アンタは自我を失い人として終わっていた。

だからオレの手で命を絶った」


「……なるほど……情けをかけられたのか……」


違う、とソラは訂正するように話した。


「方向性を間違えたとはいえオマエは誇りを抱いていた。

そんな人間の末路が自我の崩壊なんて悲しいだろうが。

人として……終わりを迎えるべきだと思っただけだ」


「……ったく……」


射角は悔しそうに舌打ちをすると、涙を浮かべながらソラに質問した。


「……オレはオマエが強くなる糧となれたか……?」


「バカか?

……オマエのせいでオレは罪を背負うことになった」


「……なら、オレの勝ちか?

オマエに……」


何かを言おうとした射角の全身が粒子となり、どこかから吹いて来た風により飛散していく。




「……オマエの負けだよ、射角」


散っていく粒子をどこか悲しそうな瞳で見ながらソラは呟くと拳を強く握り、そして射角とのこれまでの戦いを思い出していた。


これまで二度戦ったが、どちらもいい戦いではなかった。


初戦は苦戦を強いられ、二度目は力でねじ伏せて勝利した。


その程度の記憶しかない。


だが、何の因果か因縁はあった。


だからこそこうして三度目の戦いを迎え、そして……


強敵の最期を看取ったのだ。


「……さよならだ、真の名を知らぬ戦士よ。

出来れば他の場所で気ままに生きて欲しかった……!!」


だから、とソラは全身に紅い炎を纏うと次々に後方から来る敵の増援を見ながら吐き捨てるように叫ぶ。


「オマエがこれ以上人のすべてを狂わせぬようにオレが……オマエたちを終わらせる!!

そして……トウマをこの手で潰す!!」

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