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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
戦撃絶真編
123/672

一二三話 信揺


「仲良く話しをしないか?」


突然の葉王の冗談にも取れる言葉にヒロムとガイは敵意を剥き出しにし、ユリナたちを後ろに隠れさせると構えた。


が、葉王はそれを見てもなぜか謎多き話を始めた。


「オレの話も面白いと思うぜぇ?

オマエらの知らないことも知ってるし、何よりオレは物知りだからなぁ」


「……ああ?」


「オレは「十家」に属する「一条」の人間。

オマエらよりも情報網に長け、そしてオマエらよりその分長けている」


「なぁヒロム……コイツ何を言ってんだ?」


「わかんねぇよ……」


葉王の言葉にヒロムとガイは思惑がわからずに戸惑っているが、そんな二人に対して葉王はあることを伝えた。


「これでも感謝してんだぜぇ?

オマエらのおかげで「ネガ・ハザード」を完成させれたんだからな」


「……何だと?」


「オレたちのおかげだと?」


「正確には姫神ヒロムのおかげか。

雨月ガイは「ハザード・スピリット」に貢献しただけか」


「な……」


葉王の口から出た言葉にヒロムとガイは驚き、そして新たに出てきた「ハザード・スピリット」という言葉が気になってしまった。


とくにヒロムがだ。

「ハザード・スピリット」という言葉の中にあるハザードはおそらくヒロムを一度苦しめた「ハザード」とこれまで襲いかかってきていた「ハザード・チルドレン」のことだと思われるが、スピリットという部分がヒロムには気になって仕方なかった。


「スピリットってのはどういう意味だ?」


「さぁな」


ヒロムは何のことなのか知るために葉王に質問するのだが、葉王は答えようとしない。


「何だと思う?

気になるなら……」


「答えろ!!」


ヒロムは急に声を荒らげて葉王に向けて叫び、そしてただ葉王を強く睨んでいた。


その目を見た葉王は何かを理解したらしく、ため息をつくとヒロムに尋ねた。


「……気づいたのか?

何のことなのか?」


「え……?」


「だから怒ってるんだろ?」


「……そうだよ。

だから答えろ……オマエらは何をした!!」


「何をねぇ……」


葉王は面倒くさそうにあくびをすると語り始めた。


「オマエたちが倒した「魔人」を覚えてるか?

あれはアリスが「ハザード・チルドレン」を利用して生み出した作品だ。

アリスの能力で再現しようとして生み出した「魔人」の不安定で脆い力を与えたことで生まれた」


「作品だと……?

人の生命を何だと……」


「聞けよ、姫神ヒロム。

リュウガたち「ネガ・ハザード」はその時のデータと「ハザード・スピリット」のデータを反映させたことで新たな力を得た存在……「魔人」と「精霊」をその身に宿している存在なんだよ」


「「!!」」


「で、「ハザード・スピリット」ってのはバッツとある女が生み出そうとした人工の精霊の研究過程で生まれた「ハザード・チルドレン」を利用した精霊だ」


「精霊を……ヒロムの精霊と同じような存在を作ろうとしたのか!?」


「みたいだなぁ。

まあ、姫神ヒロムの精霊は特別ゆえに再現できない。

だから「ハザード・スピリット」は「ハザード」特有の破壊衝動の増幅による精神崩壊後も兵器として転用できるように改良された」


「何のために……」


決まってるだろ、と葉王はガイの言葉に向けて告げる。


「姫神ヒロムを殺すためだよ。

そいつの急激な成長は「十家」の科学者たちを刺激し、倒すために新たな力を求めて開発を続ける。

そしてそれを迎え撃つたびにそいつはより強くなり、また新たな力を求めて開発を進める」


「全部ヒロムのせいだって言いたいのか!?」


「……事実だ。

「八神」がそいつを「無能」と呼び始めて殺そうとして刺客を放ち、それを迎え撃つ度に危険視される。

その渦中にオマエらはいるんだよ」


「……結局全部ヒロムのせいにしてんじゃねぇか」


「誰のせいでもない……かもな。

人の業と言うべきか、人の定めと言うべきか……。

それにオマエらが利用されている、それだけだな」


あの、とヒロムとガイの後ろからエレナが葉王に尋ねた。


「何だい、金髪のナイスバディなお嬢さん?」


「え、あの……」


「最低な男……」


葉王のエレナに向けて告げられたふざけたような言葉にエレナ本人は困惑し、アキナは葉王を冷たい目で睨んでいた。


そんな二人の隣からユリナがエレナの代わりに葉王に質問した。



「さっきの人たちはその……なんであんな姿になったんですか?」


ユリナは恐る恐るではあるがリュウガたち「ネガ・ハザード」について尋ね、葉王はそれについて答えようか悩むような素振りを見せる。


が、ヒロムの方を少し見ると葉王は仕方なさそうに説明を始めた。


「オマエの強さは何か秘密がある、そう考えたある科学者がオマエについて調べていた。

そこでオマエと手合わせしたオレが、オマエの中に何かに対して強く「想う」感情を強さに変える力を持っていることを伝えた」


「オレの中に……?」


「オマエと初めて会って戦ったあの日に感じたんだよ。

オマエにはこれまで鍛え上げてきたその身体能力と精霊と、その精霊から託されし力と意志、そして他者を思うその感情、そして主としてではなく仲間として精霊とともにあろうとするその互いを思い合う絆……感情論で済まされかねないような特別なものを持ってるってな」


「……あの時のあの言葉……」


葉王の言葉を聞いたヒロムはふとあることを思い出した。

それは葉王と最初に戦っていた時、圧倒的強さに追い込まれていたところからヒロムが立ち向かって行った時の葉王の言葉だ。




『オマエたちは限界を越えようとしている……!!』


『感情論とか嫌いなんだがなぁ……認めるしかねぇだろうがぁ……!!

コイツは何よりも特殊で特別だってな……!!』



あの時の言葉に対してヒロムは何のことを言っているのか分からなかったためにスルーしていたが、今の話からそれについて気づいたからこその言葉なのだと理解した。


が、だからといって納得出来るようなことではない。


「それと「ネガ・ハザード」がどう関係しているんだ?」


「……オレが聞いた話ではヤツらは「ハザード」特有の破壊衝動の増加をオマエの「想い」の力とやらに代用したんだよ。

オマエの急激な成長を真似て、な」


「んだと……!!」


「実験は成功、「ネガ・ハザード」は安定した力を発揮する形で完成した。

その過程で「魔人」と「精霊」の力が人体構造を書き換える結果を招き、アイツらはあの姿を得た」


「そんなこと……」


「まぁ、オレとしてはもう少し後で実戦投入したかったが、どこかの誰かさんのが先走ったせいでこんなことになったんだよ」


「その誰かっていうのは?」


「教えると思うか?」


葉王の言葉を聞いたガイは葉王の様子からこれ以上聞き出せないと判断したのか、そこから先については聞こうとしなかった。


が、ヒロムは納得出来ていないらしく葉王に問い詰めるように質問した。


「答えてもらうぞ……そいつが誰なのか、ハッキリとな。

教えろ、その科学者と「ネガ・ハザード」に指示を出したヤツは誰だ?」


「あんまり急かすようなことはしない方がいいぞぉ?

女にモテなくなる……いや、もうモテモテか」


「答えろ……!!」



「嫌だね……オレは誰の指示も受けねぇ」


葉王はヒロムの問いに答える気は無いとハッキリと答えるとヒロムを睨みつける。


「オマエ!!」


情報を聞き出すために抑えていた感情が爆発したのか、ヒロムは葉王に攻撃するために構えようとしたが、ガイがそれを止めた。


止めるな、ヒロムは目で訴えるようにガイを見るが、ガイは首を横に振ると葉王に告げた。


「この話はもういい。

オレとヒロムの我慢が限界に達する前に消えろ」


「おいおい……偉そうな言い方しやがって。

それにいいのか?他の情報はいらないのか?」


「他の情報……?」


「そう、オマエたちを悩ませる内通者……つまり裏切り者だよ」


「「!!」」


葉王の言葉、それによりヒロムとガイはソラとイクトに預けた盗聴器を思い出した。


今の葉王の言葉が本当なら、葉王はすべて知っているということになる。


「驚いたようなその顔……薄々気づいてるんだな」


「……盗聴器を仕掛けたヤツは大体わかってる。

けどな、オレの仲間にそんなヤツは……」


「本当にか?

姫神ヒロム、冷静になってみろよ」


葉王はヒロムの言葉をかき消すように話し始め、そしてヒロムの考えを掻き乱すような言葉を告げた。


「オマエの見ているものはすべてが現実か?

偽りが混じってるんじゃないのか?」


「何を言って……」


「オマエを一度裏切ったヤツらのことを今は心の奥底から信用しているのか?」


「何を……」


葉王の一言、「一度裏切った」という言葉を聞いたヒロムの頭の中はパニックになっていた。


一度裏切った?

思い当たるのは一人いるが、今こうしてヒロムが戦う中でその人物はヒロムのために命を張ろうとしている。


裏切り者のはずがない。

ヒロムは自分に言い聞かせようとするが、それを読んでいるかのように葉王がその名を口にした。


「氷堂シンク……。

オマエのことを見捨て、「八神」として育ったアイツは都合よくオマエのもとへと戻ってきたが……可能性はあるよな?」


「オマエ……!!

アイツはヒロムのために……」


「それにもう一人いるよな……?」


「……は?」


もう一人、その意味がガイには理解できなかった。


シンク以外にヒロムのもとを一度離れた人物は他にいない。


なのになぜ、葉王はそんな言い方をするのか?


誰のことを言っているのか頭の中で探るガイを面白そうに見つめながら、葉王はあるヒントを出した。


「思い出せよ。

あの日の悲劇は誰が起こした?」


「あの日……?」


「まさか……」


葉王のヒントを受けても尚わからないガイの隣で何かに気づいたヒロムは体を震わせていた。


怒りなのか、それとも別の何かによるものなのか……理由はわからないが、真相に近づいたであろうヒロムはどこか戸惑っている。


「ヒロム……?」


「……あの日ってのはいつの事だ?」


「オマエはいつだと思ってるんだぁ?」


「…………」


「言ってみろよ、姫神ヒロム。

氷堂シンクよりも先に裏切ったあの男の名を……あの日オマエを貶めたアイツを!!」


「誰のことなんだよ……ヒロム……?」


ガイがヒロムに確かめるように声をかけてもヒロムは答えようとしない。


口にするのを躊躇っている可能性がある。


そう思うとガイは強く言えなくなってしまうが、それを見兼ねた葉王がヒロムの代わりに答えた。


「姫神……いや、八神飾音だよ」


「な……」


「そんな……!!」


葉王の口から出た人物の名前を聞いたガイやユリナたちは驚きを隠せなかった。


「なんで……飾音さんが……」


「あの人はバッツに憑依されてただけじゃ……」


「……だからだよ」


ガイが葉王に向けて言おうとした言葉、それに答えるようにヒロムが話し始めた。



「親父がなぜバッツに憑依されることになったのか……。

なぜ親父が簡単に憑依されたのか……。

バッツを抑え込めるほどの意志の強さがありながらなぜパーティーの日に出来なくなったのか……今思えば謎が多いんだ」


「だからって実の親を……」


「そもそもオレは……なぜ親父が「八神」を追放されたのか真の理由を知らない」


「あ……」


そういうことだ、と葉王はヒロムの言葉に続くように語る。


「バッツの意思か飾音の意思か定かでない男と「八神」に何年も忠誠を誓う芝居をしていたという男……オマエの中で裏切る可能性があるのはその二人だろ?」


「……黙れ」


「黙れ、か。

黙ってもいいぜ?

それで事実が変わるならなぁ」


「……!!」


「……今後どうなるか、期待しておくぜぇ」


葉王が指を鳴らすとリュウガたち「ネガ・ハザード」と栗栖カズマが音もなく消え、葉王も消えていく。


残ったヒロムは拳を強く握ると悔しそうに空を眺め、そんなヒロムにどう声をかけるべきか悩むガイたちはただヒロムを見つめることしか出来なかった。



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