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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
戦撃絶真編
110/672

一一〇話 一線


ヒロムから盗聴器を預かったイクトはソラとともに、夜遅くにもかかわらずある場所に来ていた。


「悪いな、ソラ。

付き合わせちまって」


「気にするな。

シンクと行動してたせいで慣れてるよ」


「それはそれでどうかとおもうけど……。

まあ、いいや」


目的地に着いた二人は足を止めると周囲を見渡し、人を探した。


というのも、今二人がいるのは「姫神」の管理する病院、つまりイクトが入院していた病院の近くにある公園に来ていたのだ。


誰かの家でもなく、建物でもなく公園にだ。


目的地というよりは待ち合わせ場所、と言った方が正しいのかもしれない。


「さて、これを渡せばいいんだけど……」


「イクト、一ついいか?」


人を探すイクトにソラは一つ、確かめるように質問したようとした。


「どうした?」


「……バッツの一件、オマエは死にかけただろ?

今回のこれも、「一条」の刺客も……バッツの時のように運良く助かる保証はない。

怖くないのか?」


「何何、らしくないこと言うじゃん?

何かあった?」


「……心配してるんだよ。

オマエはあの時、一歩間違えれば……」


死んでたかもな、とイクトは笑いながら言った。


なぜ笑うのか?


真剣な話をしているソラからすれば理解できないことだったが、イクトは理由を説明するかのように語り始めた。


「バッツの時は死にかけたかもだけど、そんなの「ハンター」のときから何回も経験してるからな。

今更死ぬとかで臆するほど弱くないよ」


「……そうか」


「それに……オレがあの判断をしなかったら夕弦が犠牲になってた。

結果的にオレは助かったけど、夕弦がもしバッツの一撃を受けて助かったかはわからない。

結果論だけど、あの時誰も死ななかった……それでいいと思ってるんだ」


「まあ、それでいいならオレは何も言わねぇよ」


「だって生きてりゃいい事あるんだしさ。

それで十分だろ?」


かもな、とソラはイクトの呑気な言葉に呆れながらも頷き、さらにイクトはヒロムについて話した。


「……大将が頑張って戦ってるんだ。

オレたちはオレたちにできることで助けてやらなきゃ、だろ?」


「……ああ。

アイツが進むべき道は明確になった。

ならオレたちはその道を切り開き、先導してやるだけだ」


「そのためにもこの件を解決したいんだろ?」


「……オレのせいでこうなったようなものだからな。

だから、オレが被害を抑えるために止める」


ソラの決意、それを聞いたイクトはただ真剣に聞き、そしてそれを自らの心に刻むように覚えるのだった。




そんな中、二人のもとに一人の人物がやってくる。

「お待たせしました」


ゆっくりとこちらに向かってくる彼女を見るなりイクトは声をかける。


「オレらも今来たところだぜ、夕弦」


「そうでしたか。

ですが遅れたのは……」


「はやく話を進めるぞ」


そうですね、と彼女・白崎夕弦は咳払いをすると話に入ろうとするが、それよりもさきにイクトはヒロムから預かった盗聴器を夕弦に見せた。


「それは?」


「大将の屋敷のリビングに仕掛けられていたんだ。

今は大将が握り潰したせいで機能してないけどな」


「ヒロム様の屋敷に!?

本当なのですか?」


「ああ、ヒロムがわざわざ嘘をつくとは思えないしな」


「では私はその盗聴器の発信先を特定……」


「それはここに来るまでに試したよ。

複数のネットワークを経由してるらしくて無理だった。

だから……オレらに出来ないレベルの調査が可能なら頼みたい」


「そうですね……「月翔団」の中で情報に精通してる者がいたはずなので調べさせます。

アナタたちは?」


「これから偵察に行く」


ソラの一言、それを聞いた夕弦は疑問を抱くしかなかった。


盗聴器の調査は今自分が引き受けた。

なのになぜ、偵察に向かうのか?


「それは盗聴器の調査のあとでも……」


「それもあるけど、少し不可解な点があってね」


「オレもイクトもそれに気づいた。

だから偵察に向かう」


「二人でですか?」


「えっと……」


「オレとイクト、オレがシンクと行動してる時に仲間になった岩城ギンジの三人で向かう。

不満か?」


そうですね、と夕弦は盗聴器を服のポケットに入れると、ソラとイクトに提案した。


「私も同行します」


「ええ!?」


「いいのか?

「月翔団」の方は……」


「ご心配なく、今の私はそれを気にしなくても大丈夫なんです」


そうか、とこれ以上は何も聞かずに納得したソラ。


「夜明けとともに決行する。

準備を済ませろ」




***


ヒロムの屋敷。


ヒロムは自分の部屋でくつろぐように座っており、その近くでガイは本を読んでいた。


二人とも静かにしており、部屋は静寂に満ちていた。


「……」


「……ソラとイクト、大丈夫だよな?」


本を読むガイは次のページへ進もうとページを開きながら、ヒロムに向けてつぶやくが、ヒロムは返事をしない。


「……聞こえてるよな?」


「オレに言われても知らん」


「気にならないのか?」


「……気にするだけで事が進むならしてるさ。

けど違うだろ?」


たしかに、とガイは納得して頷き、そんなガイに向けてヒロムは言った。


「アイツらが何に気づいたわかってないオレがやめとけとか行くなって行っても時間の無駄だ。

今のオレには何か成果を持って帰ってくるアイツらを待つだけだ」


「けど、何の成果もなかったら?」


「その時はその時だ。

可能性の一つが消えて選択肢が減るだけだ」


ヒロムはあくびをするとベッドの上で寝転がり、呑気にくつろぎ始める。


が、ちょうどタイミングよく部屋の扉をノックする音がし、ガイはヒロムの方を見つめる。


「出なくていいのか?」


「オマエが出てくれればいいだけだろ?」


「……そうですか」


仕方ないな、と言いたげなガイは本に栞を挟むと立ち上がり、扉の方へと向かっていく。


中々扉が開かないからか、外で待っている誰かは再びノックをし、開けるように告げてくる。


「今開けるから待ってろ」


ガイは少し早足気味で扉に向かうと慌てて扉を開け、外で待っている誰かを中に入れようとした。


……のだが、扉を開けた先にいた人物二人にガイは少し驚いてしまう。


「……どうかしたのか?」


「えっと……」


開いた扉の先にいたのはユリナとエレナ。

二人ともお風呂に入った後ということで可愛らしいパジャマを着ており、ほのかにだがシャンプーのいい香りがする。


「入って大丈夫?」


「あ、ああ!!」


思わずその香りに酔いしれそうになるガイだが、ふと我に返ると二人を中に入れて扉を閉めた。


「……ああ?

どうしたんだ?」


寝転がったまま二人の姿を確認したヒロムは気だるそうに尋ねるが、二人はヒロムの今の体勢に少し驚き、黙ってしまう。


「えっと……」


「その……」


「珍しいな。

リサとエリカならともかく、二人が来るなんて」


「オマエの中であの二人の扱いどうなってるんだよ……」


「その……ヒロムくん……」


急に顔を赤くしながらユリナが申し訳なさそうに話そうとした。


「どうした?」


「一緒に寝ちゃダメ?」


「……あ?」


「その……ヒロムさんと一緒に寝ちゃダメですか?」


待て、とユリナとエレナの言葉に困惑するヒロムは状況を整理しようと考え始める。


「……ガイ、目の前にいるのはユリナとエレナだよな?」


「ああ、間違いなくな」


「その二人が今、何か言わなかったか?」


「オマエと一緒に寝たいってさ。

多分川の字で寝たいだけだよ」


「おかしいだろ」


冷静にツッコミを入れるヒロムだが、ガイに言っても仕方がない。


だが、ガイに対して言うしかないと思ってしまったヒロムはそのまま続けた。


「リサとエリカならスルーできた。

この前まで毎日のように忍び込もうとしてたからな」


「一途なんだな、あの二人も」


「そういう問題かよ。

……つうか、何でなんだ?」


ヒロムは確かめるようにユリナとエレナを見るが、二人は顔を赤くし、目を逸らしてしまう。


「逸らすな、答えろ」


「し、下心はないんだよ?」


「そういう話じゃなくて……だな。

まあ……なんで二人してこんなことを?」


ヒロムの問いかけにユリナとエレナは二人で何かを確かめるように顔を合わせ、そしてユリナが恐る恐る口を開いた。


「その……少しでもヒロムくんにリラックスしてもらいたくて……」


「いや……リラックスできるのか?」


「と、とにかくヒロムくんの役に立ちたいの」


「ヒロムさんさえ良ければ私たちを抱き枕の代わりにしてもらっても……」


「してたまるか」


どう考えればその答えに行き着くのか理解に苦しむヒロムだが、そんなヒロムを放置するかのようにガイは部屋出ようとしていた。


「待て、ガイ。

どこに行く気だ?」


「いや、三人で仲良くしてくれ。

あっ、一線は越えるなよ?」


「おい、待て!!

ふざけ……」


じゃあな、とガイは慌てて出ていき、残ったヒロムは立ち上がり、ユリナとエレナを見るなり頭を抱えた。


「……オレにどうしろってんだよ」


ヒロムは二人と目が合わぬように気をつけながら少し視線を向けるが、二人はただ純粋な瞳をこちらに向けたまま見つめ、ヒロムの返事を待っていた。


「〜〜〜!!」


どうしたものか……。


ここで無理矢理にでも追い出したらガイが朝になって何か言ってくるはずだし、二人が機嫌を損ねる。


となれば、ここでどうにか納得してもらえる方法を見つけるしかない。



そう考えたヒロムは何とかして思いついた方法を決行した。


「オレは床で寝るから二人はベッドで寝てくれ」


これでいい、と考えたヒロムだがユリナとエレナはヒロムの手を握ると首を横に振った。


「一緒がいい……」


「ダメ……ですか?」


「……はぁ。

諦めた方が早いのか……?」


ユリナとエレナ、二人の眼差しにヒロムはため息をつき、考えることを諦めた。


(……何か面倒なことになったなぁ)


「ヒロムくん?」


「……妙なことしたら追い出すからな」


「「はい!!」」


「……はぁ」

(妙なことって何だよ……。

というか、傍から見たらオレはどう思われるんだろうな……)


考えることをやめたヒロムだが、今の自分の置かれた状況に少なからずおかしいと思い、そしてユリナとエレナに従うかのように二人に歩み寄った。


(なんか人として危ないことしかけてないか……オレ?)


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