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レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
戦撃絶真編
106/672

一〇六話 決命


アリスと葉王が消え、戦闘が終わった。


なのに、空気はどこか重たい。


「……」


ヒロムはただ静かに頭を抱えて、ベンチに座っていた。



ユリナたちもそばにおり、特にユリナは何か声をかけるべきか悩んでいた。


が、今のヒロムを前にすると言葉が出ず、どうしようかと戸惑っていた。


「……」


「ヒロムくん……」



「……そういやここに何しに来てたんだ?」


ソラはふとユリナにここに来た理由を尋ねるが、ユリナはヒロムのことが心配過ぎて、ソラの言葉に反応しない。


「おい……さすがに無視は酷くないか?」


「あ、あのね相馬くん。

私たち水着を買いに来てたの!!」


ハルカが慌てて説明し、それによりソラは納得した。


そしてソラはユリナの様子を察してかハルカに一つ提案した。


「もう敵もいないはずだ。

女子だけで悪いが、ショッピングに行っててくれないか?」


「え、でも……」


ソラの提案を受け、リサはヒロムに目を向けるが、ソラはため息をつくとリサに告げた。


「ヒロムのことは任せてくれていい。

気を遣わずに楽しんでこい」


「う、うん……」


行こ、とリサはユリナを連れていき、それに続くようにハルカやエレナたちも向かっていく。



これによりこの場からユリナたち女子組はいなくなり、残ったのはヒロム、ガイ、ソラ、ノアルだけだ。


ソラはため息をつくと、ヒロムの頭を叩いた。


「痛っ……」


「いつまでそうしてるんだ?

さすがに見てて苛つく」


「……わかってるさ」


ヒロムは顔を上げるとため息をつき、そしてある事を口にした。


「気になってたんだよ。

アリスの言葉が」


「それって「当初の予定」ってやつか?」


同じことを気にしていたガイは話に入り、ヒロムもなぜそれが気になったのか話し始めようとした。


のだが……



「大将!!」



イクトが真助とシオンを引き連れて戻って来た。


三人とも怪我もなさそうで、ヒロムは少しだが安心していた。


が、イクトはその場にソラとガイがいることに驚いていた。


「いつの間に来てたんだ?」


「さっきだよ」


「オレもだ。

元気そうでよかったよ」


「ガイは優しいねぇ〜。

……でそれは?」



イクトはノアルを指さしながらガイに誰なのか尋ねた。


ガイはすぐに説明しようとしたが、ノアル自身が自己紹介も兼ねて説明を始めた。


「初めまして、東雲ノアルだ。

オマエたちの探している純粋な「魔人」の能力者だ」


「ふーん……って、ええ!?」


「コイツが例の能力者か……」



イクトは驚いて大きな声を出し、真助は珍しいものを見るような目でノアルを観察していた。


が、シオンはどこか不満があるような顔でヒロムを見ていた。




「……どうした?」


さすがのヒロムもその視線には気づき、シオンに声をかけるが、シオンは単刀直入に不満をぶつけた。


「こんな得体の知れない相手を信用してるのか?」


「……信用するとかじゃない。

コイツは……」


「八神トウマを倒すためのカギなんだろ?

知ってるが、得体の知れないことに変わりはない。

それに……元は「一条」の監視下にいた能力者、スパイだと思うしかないはずだ」


「だけど……」


「だけど何だ?

ヒロムがコイツを探してたのは知ってるし、オレも探す気でいた。

けどな、それとこれは別だ」


シオンの言葉、それは確かに一理ある。


そもそも彼を探すきっかけは鬼桜葉王がヒロムに与えた情報が始まり、そしてここにその能力者がいて敵が現れた。


つまり、シオンは何を言いたいのか?



「ヒロム……オマエは鬼桜葉王に上手く利用されてるんじゃないのか?」


「何を……」


それは違う、とシオンの言葉に対してガイが訂正するように話し始めた。


「途中から戦闘に加勢したオレが言うのも何だが、コイツはユリナたちを守ろうとしていた。

初対面でどんな相手かもしれないユリナたちのことをだ」


「それは演技じゃないのか?」


「だとしても一歩間違えれば死ぬかもしれない中で他人のために命張るなんて簡単には出来ないだろ?」


「だが……」


いいじゃん、とイクトはシオンに言うとノアルを見ながら言った。


「敵か味方かはこれからオレらで判断すればいい話だろ?

オマエの心配もわかるけど、向き合わねぇとわかんないこともあるじゃん」


「……呑気なことを言うな。

相手は……」



「相手は「十家」、そんなのわかってることだし、変わることもない。

相手が手段選ばないならオレらも選ばない、だろ?」


イクトの少し強引すぎる言葉を聞いたシオンはため息をつくとそれ以上は何かを言おうとはしなかった。


「さて、大将……何があったか報告し合わないか?

情報の整理、しときたいだろ?」



「そうだな……。

じゃあオマエたちの方から頼む」




***



先にイクトが三人が地下の駐車場で獅角と新たな角王三人との戦闘について語り、その後ヒロムはノアルが現れてから戦闘が終わるまでを一通り説明した。



「……鬼桜葉王、ヤツも来てたとはな」


葉王の名を聞いた真助は拳に力を入れていた。


それもそのはず、真助は葉王と初めて対峙した時、何も出来ぬまま敗北している。


つまり、再戦して戦いと思っていてもおかしくないはずだ。


「で、その双座アリスが去り際に「当初の予定は完遂した」って?」


イクトはヒロムやガイに確認するように訊ね、二人はそれに頷く。


そしてガイが話し始まる。


「相手の目的が何だったのかはわからないが、とにかくヤツらはヒロムを巻き込んで何かをしようとしているのがハッキリとわかった」


「大将が前に鬼桜葉王と戦った時に言われたってやつだな。

けど……それなら「八神」の当主が出てきてもおかしくないはずだよな?」



「アイツはあれでも「十家」だ。

下手な動きを当主自らが行えば「八神」のすべてを失うと考えて動かなかったんだろう」


そうなのか、とシオンはヒロムの言葉に対してある事について追及するかのように話し始めた。


「オマエから聞いた話じゃ少し前に狼角が「ハザード・チルドレン」とともにこのショッピングモールに現れた。

そしてオレたちが戦った獅角たちも地下の駐車場とはいえここの施設に現れた。

オマエの言うような理由なら人目のつかないところで攻撃しようとすると思うんだが……?」


「……つまり?」


ヒロムはシオンに対して結論を述べるように促し、シオンもそれを受けて結論を述べた。



「ヤツらは「一条」と組んでから……無駄に兵力を失うようなことばかりしていないか?

まるで……「一条」が求めているヒロムとトウマが戦闘する日を近づけるように……」



「待てよ、シオン。

それじゃあ「八神」は大将と戦って負ければ……」


なるほど、とシオンの言いたいことを理解したヒロムはそれについて確かめるようにシオンに言った。


「葉王は「八神」を崩壊させるつもりでいるってことか?」


「あくまで可能性だがな。

そうとしか思えないってのもあるが……」


シオンはため息をつくが、その話を聞いたヒロムは葉王について考え始めた。


その時、ふと葉王が「魔人」を呼ぶ前に言った言葉がヒロムの頭の中でよみがえる。


『どんなに力をつけてもオマエにも勝てない、そしてオレらにも勝てない。

それが今の八神トウマの置かれた状況だよ』


葉王は「一条」に属する。

そしてその「一条」は「八神」に協力している。


さらに言えばトウマとヒロムが戦うことを望み、その結果で何かを得ようとしている。



それなのに、なぜ葉王はトウマのことをあんな風に言ったのか?


「……謎の多い野郎だ、葉王は」




「……「一条」の計画について何か知らないのか?」


真助はノアルに対してその質問をし、ノアルは返事として首を横に振った。


「詳しくは知らない。

だが、一つハッキリと言えることがある」


「ハッキリと言えること?

何だそれは?」


「……今のこの世界に一条カズキを止められる人間はいない」



ノアルの言葉、それを聞いたヒロムたちは何が言いたいのか理解出来なかった。


というより、なぜ今の話の流れで「一条」の当主の名が出てくるのか?


そこが気になってしまう。


「一条カズキを倒せないって……どうしてだ?」


「言葉通りだよ、姫神ヒロム。

あの男は血を流したこともなければ命を落とすような危機に追い込まれたこともない。

完璧にして完全、それが一条カズキだ」


「……だが邪魔する敵なら戦うことに変わりない」


ノアルの言葉を受けてもヒロムの考えは変わらない。

が、そんなノアルはヒロムに一つある事を告げた。


「情報になるかはわからんが、葉王はずっとオマエの精霊のことを調べていたぞ」


「……何!?」


なるほど、とヒロムは心の中で納得すると同時に理解した。



葉王が知らないはずのヒロムの精霊の真の数をヤツが知っていたわけが。


「何のためにかわかるか?」


「さあな……ただ、聞いた話ではオマエの精霊が何かを開く鍵になるって」


「鍵……?」


「……すまないが、それ以上はわからない」


「そうか……。

けど、これでハッキリしたな」


ヒロムの言葉を受け、ガイたちは頷き、全員が同じ結論に到達した。


「今までは「八神」の刺客どもを返り討ちにすれば済んだけど、ここから先は「十家」の頂点に立つ男までもが邪魔してくる。

今までに見たことのない戦力で攻めてきてもおかしくない、それがこれからの戦いだ」


「けど……やるんだろ?」


「やることに変わりないが……」


心配するな、とガイの質問に対する答えをヒロムが言い切る前にソラがヒロムに告げる。


「ユリナたちのために戦いたいなら、敵を倒す戦いはオレたちがやってやる」


「そうだな、大将はやりたいようにやればいいさ」


「お嬢様方のお守りを任せれるなら好きに暴れられるって話だしな」


「……オレは強い相手と戦えるならそれでいい」


ソラ、イクト、真助、シオン。


それぞれの言葉を聞いたヒロムはどこか頼もしいと感じ、そしてガイはソラたちと同じようにヒロムに伝えた。


「無理しなくていい。

オマエが戦うならオレはどこまでもついて行ってやる」


「……頼りにしておくよ」


オマエはどうする、と言いたげな目でヒロムはノアルを見つめるが、それに気づいたノアルはヒロムに提案した。


「……すまないが、一緒には行けない」


「どうしてだ?」


「まだこの世界の人の在り方を見れていない。

それが終わるまではダメだ」


ノアルはヒロムに背を向けると去ろうと歩き始める。


シオンはそれを止めようとするが、ヒロムはシオンを止めるとノアルを進ませていく。


「……いいのか?」


「ああ、アイツはアイツなりに考えてるんだろうしな。

それに……アイツのことを調べてからでも遅くないだろ?」


「そうだな……」


「お待たせ〜」


するとハルカを筆頭にユリナたちが買い物した袋を手に持ってこちらへ歩いてくる。


さて、とソラたちはヒロムを置いてどこかへ行こうとする。


「あ?

どこに……」


「ユリナたちの面倒を見てくれるんだろ?

オレらは少しやることあるから頼むぜ」


「大将、頑張ってね」


「ちょっ……」


「ヒロムくん、元気になったんだね」


ソラたちが歩いていく中、ユリナたちがヒロムのもとへ辿り着き、ヒロムの様子を見たユリナは安心したような笑顔を見せる。



「あ、ああ……」

(アイツら……覚えとけよ!!)

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