表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レディアント・ロード1st season   作者: hygirl
戦撃絶真編
105/672

一〇五話 生命


「あれが……「魔人」!?」


ヒロムとガイは現れた怪物を目の当たりにして驚きを隠せないでいたが、ソラとノアルは違った。


二人の中にある「魔人」の力が呼応しているのか、先ほどまでに比べて二人の様子は少しおかしかった。


「この感じ……」


「オレや相馬ソラとは違うが……たしかにアレは「魔人」だ」


だがどうやって?


ノアルはどうやってこの「魔人」を生み出したのか、その方法が気になっていた。


それを確かめるようにノアルはアリスに向かって走り出すと、攻撃を仕掛け、距離を詰めたところで彼に問う。


「どうやってアレをつくった!?」


「葉王が言ったろ?

「ハザード・チルドレン」を利用して生み出したんだよ」


「どう利用したんだ!?」


「質問の多い野郎だな……!!」


アリスはノアルの腕を掴むと勢いよく投げ飛ばし、その後「魔人」について語り始めた。



「アレの中にはオレが再現しようとして生み出した「魔人」の力が入っている。

だが再現しようとして生み出した力は不安定で、脆かった。

だから……元々人としての価値を失いつつある兵器を媒体にした」


「媒体……だと!?」


アリスの言葉を聞いたノアルはもちろん、ヒロムたちもどういうことなのか理解した。


そして理解したからこそ、アリスや葉王に対しての怒りが募り始めていたのだ。


「腐れ外道が……」


「なんだ「無能」?

何か言ったか?」


「双座アリス……オマエはどこまで狂ってやがるんだ!!」


ヒロムは葉王から離れるように走り出すとアリスに殴りかかろうとするが、葉王はそれを阻止するようにヒロムの前へ現れ、ヒロムの攻撃を防いでいく。



「くっ……オマエ……!!」


「腐れ外道、か。

それは何も知らないからそう言えるだけだなぁ」


「何を……!!」


「そもそも、今オマエは何のために怒りを抱いている?

自分のためか、それとも……オマエを殺すために用意された兵器のためか?」


「それは……」


甘いなぁ、と葉王はヒロムを蹴り、そしてヒロムに冷たく言い放つ。




「オマエにとって敵でしかない「八神」の兵器をオレたちがどうしようとオマエが気に病む必要はないだろ?

倒すべき敵が一人減る……それを喜べよ」


「人の命を何だと……」


蹴りを受け、倒れてしまったヒロムは何とか起き上がって構えようとしたが、それよりも先に葉王がヒロムに攻撃を仕掛けてくる。


「そもそも「ハザード・チルドレン」は人としての存在意義のない兵器になった能力者だ。

命なんてものに価値はなく、目的を果たせなきゃ捨てられるだけ……今のあの「魔人」のベースになったヤツも形はどうであれ目的のために力を手に入れたことに変わりはねぇ!!」


葉王は強く言うとヒロムを殴り飛ばそうとするが、その一撃をヒロムは何とかして避けると大剣を出現させ、手に取って振り上げる。


が、葉王が手をかざすと同時に大剣の刃は砕け、さらにヒロムは大きく吹き飛ばされてしまう。


「!!」


前回と同じだ。


何が起きたのかわからないまま攻撃を受け、吹き飛ばされてしまったヒロムは葉王が何をしたのか理解出来ぬまま倒れてしまう。


何をされたのか?

起き上がろうとする中でそれを考えるが、それを遮るように「魔人」が雄叫びを上げる。



「がぁぁぁあ!!」


「くそ……」


大丈夫か、とアリスの相手をしていたはずのガイとソラがヒロムのもとに駆けつけ、敵から守るように構えた。


が、ヒロムは立ち上がっても構えようとしなかった。


「……ヒロム?」


「アイツは……あの「魔人」は倒せばどうなるんだ……?」


ヒロムは葉王に確かめるよう言うが、それをバカにするかのように葉王は声を出して笑うと、大きなため息をつき、呆れながら話し始めた。


「本気で言ってんのかぁ、オマエ?」


「どういう……」


「失望させるなよなぁ……。

前のオマエは戦うことを純粋に楽しんでいた戦士だった。

だからこそオレはこれからに期待していたが……今のオマエは無様だ」


葉王は魔力を纏うと、ヒロムを睨みながら、突きつけるかのような言い方でヒロムに告げる。


「何か理由をつけなきゃ戦おうとしない……守るため、女のため、仲間のため、命を冒涜する敵を倒すため……今のオマエは戦うことから目を逸らしてるのも同然なんだよ!!」


葉王は魔力を無数のエネルギー波に変換させて攻撃を放ち、ヒロムを倒そうとするが、その攻撃をガイとソラがすべて炎を用いて防いでしまう。


攻撃を防がれた葉王は何も気に留めないような様子でヒロムに事実を伝えた。


「……そいつはもう死ぬだけの運命だ。

倒されても敵を殲滅しても末路は死のみ……オマエがどうしようが関係ない」




「ふざけるな……!!」


ヒロムは葉王に対する怒りを露わにしながら走り出そうとしたが、ソラはそれを止めると、ヒロムの顔を思いっきり殴った。


殴られたヒロムは驚くと共に突然の事で動揺していた。



「ソラ……?」


「オマエがどういう理由で戦おうが勝手だ。

オレはオレの理由で戦うし、オマエにも力を貸す。

それはこれまでしてきたことだし、これからもそうする……けどな!!」


ソラは倒れるヒロムの胸ぐらを掴むと無理やり立ち上がらせ、ヒロムに向けて強く告げる。


「目の前の現実から目を逸らすな!!

目を逸らせばそうしてる間に守りたいものも守れなくなるぞ!!」


「!!」


「……悪いがオレはあの「魔人」を殺す。

放置してたらオレたちに危険しか及ばないからな」


「……わかった」


ソラが手を離すと、ヒロムは深呼吸をし、そしてソラに謝罪をした。


「悪かった。

とりあえず今は目の前の敵を倒す」


「そうしてくれ」


終わったか、と葉王は指を鳴らしながら言うと、「魔人」が雄叫びを上げながらヒロムたちに襲いかかる。



「来るぞ!!」


ガイが叫ぶとヒロムとソラは構え、そして三人は迎え撃つように「魔人」に攻撃を放つ。


が、「魔人」は高く飛び上がってその攻撃を避けると、口から巨大な炎を放ち、ヒロムを倒そうとする。


だがヒロムの前にはソラがいる。


「甘いんだよ」


ソラは紅い炎で「魔人」の放った炎を消滅させると、無数の銃口を周囲に展開し、「魔人」に向けて弾丸を放っていく。



「撃ち落とせ!!」


「魔人」に向かっていく弾丸、だが「魔人」はそれを空中を駆け回るように動きながらすべてを避けると大きく回転し、ソラに雷を放った。



「コイツ……雷も使えるのか!?」


ソラは驚きながらも何とかして避けると構えようとしたが、「魔人」はなぜか攻撃を止めてどこかじっと見つめる。



何をやっているのか?


気になったガイは「魔人」の視線の先にあるものを確かめるように見たのだが、それが何かわかったとき、急いで「魔人」を倒そうと走り出した。



「ガイ!?」


「まずいぞ!!

ユリナたちが狙われてる!!」


ガイの言葉を受けたヒロムは「魔人」の視線を追い、その先にあるものを確かめた。


「魔人」の視線の先、そこにはユリナたちがいたのだ。


「まさか……ユリナたちから喰らおうってのか!?」


「その可能性は高い!!」


ガイは刀で斬りかかるが、「魔人」はそれを避けると、すかさずユリナたちに接近しようと加速し始めた。


させるか、とソラはノアルとともに攻撃を放とうとしたが、「魔人」はそれよりも速く動き、二人を突破してしまう。



「しま……」


「止まりやがれ!!」


ヒロムは大剣を構えると「魔人」に斬りかかるが、「魔人」は尻尾を勢いよく振って大剣を弾き、そして雄叫びを上げながら衝撃波を放ち、ヒロムを吹き飛ばしてしまう。



「が……!!」


「無様だな、「無能」よ」


苦戦するヒロムたちを見て、楽しげに笑うアリス。

ヒロムは立ち上がり、構えようとするが、アリスはそれを見て笑うことしかしなかった。


「どんな手を使っても勝ち目はない。

その「魔人」すら倒せないオマエじゃオレたちは倒せない」


「魔人」は速度を落とすことなくユリナたちに向かっていき、雄叫びを上げると鋭い爪で斬りかかろうと構える。


「きゃあああ!!」


ユリナたちは恐怖により悲鳴を上げ、「魔人」はそれを嘲笑うかのように襲いかかろうと動き出す。


が、そうしようとした瞬間、何かが「魔人」の体を貫き、その動きを止めてしまう。



「!!」


「アナタは……」


ユリナたちを守るように現れたノアルは右腕すべてを「魔人」の力で変化させ、目の前にいる「魔人」の体を貫いていた。


貫かれた「魔人」の体からは大量の血が吹き出し、それを見たユリナたちは恐る恐る後ろへと下がり始める。


「それでいい……」


ノアルはユリナたちの取った行動をいい判断だと告げると、「魔人」から腕を引き抜くと敵を蹴り飛ばす。



「今だ、やれ!!」


ノアルの合図とともにヒロム、ガイ、ソラは魔力を纏い、そして三人同時に走り出すとガイは背中の翼となっていた刀を飛ばし、ソラは紅い炎で無数の龍を出現させ、ヒロムは光の槍を次々に生み出す。


「決めるぞ……!!」


「ああ!!」


先に行く、とガイは走り出すと「魔人」の背後へと一瞬で移動する。


ガイは蒼い炎を纏うと、四本の刀とともに「魔人」に次々に斬撃を放ち、さらに四本の刀を手に持つ刀と合体させ、大太刀へと変化させると強力な一閃を放った。


「蒼天連翔斬!!」


ガイの斬撃を受けた「魔人」は大きく仰け反り、その一瞬を見逃さぬよう紅い炎の龍が「魔人」に噛みつき、上空へと連れていく。


「燃え果てろ……!!」


ソラは右手に紅い炎を収束させると高く飛び上がり、紅い炎の龍に捕らわれた「魔人」に殴りかかる。


「スカーレット・クリムゾン!!」


ソラが「魔人」を殴ると、収束させた炎と紅い炎の龍が炸裂して「魔人」を吹き飛ばし、さらにその「魔人」の全身を炎で負傷させていく。


「今だ!!」


「やれ、ヒロム!!」


任せろ、とガイとソラに伝えるとヒロムは槍を構え、光の槍とともに「魔人」を倒そうと動き出す。


「いくぞ、「魔人」!!

この一撃を受けろ!!

……グロリアス・ミーティア!!」


ヒロムが「魔人」に向けて槍で連撃を放つと、光の槍は速度を増すと目にも止まらぬ速さで「魔人」の体を貫いていく。



「がぁぁぁあ!!」



三人の攻撃をその身に受けた「魔人」は苦しそうに雄叫びを上げ、ヒロムを睨み、彼に攻撃しようと動こうとした。



だが



「そこまでだ」



葉王は「魔人」の背後に現れると指を鳴らし、それと同時に「魔人」が石の彫刻が砕けるように全身が砕け、粒子となって消えていく。


仲間割れ、それに似た行動を取る葉王にヒロムたちは敵意を向け、戦えるように構えていたが、葉王はヒロムたちに背中を向けるとアリスに告げた。


「目的は達成した。

撤退するぞ」


「……仕方ないな。

当初の予定は完遂したしな」


「待て!!」


撤退しようとする二人を止めようとヒロムとガイは走り出すが、葉王が指を鳴らすと二人は音もなく消え、ヒロムたちは買い物をしていたショッピングモールへと戻っていたのだ。


「戻ってきた……のか?」


たしかめるように周囲を見渡すノアルに対し、ヒロムは葉王とアリスを必死に探そうとした。


姿もなければ気配すらない。


「くそ……!!」


完全に逃げられた。


「……ふざけるな!!」


その事実にヒロムは悔しさのあまり大声で叫んでしまう。


最後まで甘く見られ、そして葉王の思惑の中で踊らされた。


そう思うと悔しさで頭がどうにかなりそうで、声を出さずには、叫ばずにはいられなかった。


「ああああ!!」


ヒロムが叫ぶ中、ガイはアリスの最後の言葉を気にしていた。


『当初の予定は完遂したしな』


あの一言は何を指すのか?


自分たちが造り上げた「魔人」を潰させたことなのか?


こうしてヒロムのもとへガイやソラが現れ、その力を見れたからなのか?


それとも何か……



「ヤツらは何を企んでいるんだ……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ