忘れたつもりだった記憶
なんとなく過ごしてきた高校生活
別に現実から目を背けていたわけではない
”思い出す必要がなかった”
そういえば言い訳になるかもしれない。
だけどそうとしか説明ができなかった。
ー高2の春ー
新学期新しい教室、クラスにみんながざわざわしていた。
「えー、みんなも、もう気づいてるかもしれないけど、新学年になると同時に転校生がきた。
みんな仲良くしてあげろよ。」
担任がそう言い終わったと同時に転校生が教室に入ってきた。
ガラガラッ
茶髪のすらりとした青年だった。
「え、やばい。めっちゃかっこよくない?」
「まじ、イケメンじゃん!」
「えー、男子かよ」
「美女求めてたって」
クラスの反応は様々だった。
だけど私一人なぜかその顔をを見て心に違和感を感じた。
茶髪は黒板に名前を書いた。
”雛風 藍 ”(ひなかぜ あお)
「雛風 藍です。よろしくお願いします。」そう言って頭を下げた。
藍・・・あお・・・聞いたことのあるような名前だった。
珍しい名前なわけではないけど、私の今までの人生で出会ったことがある気がした。
「雛風は、そこの席に座れ」
そう担任が言って座らせた席は、私のから斜め前の席だった。
頭中のもやもやは解けることなく、時間が過ぎていった。
ー放課後ー
終礼が終わって帰ろうとしたとき、茶髪が私の前に来た。
「なに?」
私はカバンに教科書やらを詰め込みながら聞いた。
「君、名前なんて言うの?」
茶髪は少し微笑んでいた。
「はな。”咲樹 華”(さきもと はな)」
「俺、その名前聞いたことあるんだけど、同姓同名の別人?」
そう言った茶髪の顔が怖くなり、声のトーンも下がったように感じた。
”やっぱり会ったことがあるんだろうか・・・”
「中学の時・・・」
茶髪がそう言い放った瞬間私の頭には激痛が走った。