三題小説第三十五弾『決断』『北』『隙間』タイトル「逃がし屋レックス」
薄汚れた地下鉄のホームでまだ生きているのか疑わしい自販機にコインを入れる。ちゃんと生きてた。
散々逃げ回って疲れた。ここはやはり炭酸飲料でも飲んでリフレッシュするか。いや、今ちょっと喉が痛いし乳製品にするべきかな。待てよ? 喉の渇き的に言ってロング缶にすべきか。だとすると炭酸も乳製品もとどちらもないからオレンジジュースにしよう。そうしよう
あ、小銭が足りない。カードしかない。畜生。じゃあロング缶は諦めて……。
「ちょっと悩み過ぎじゃないかな?」
いつの間にか後ろに人が立っていた。どうもいかつそうな男の声だ。
「あ、すみません。すぐどきます」
振り向かず、顔を合わせないように、そう言った。早く決めなければ。えーっと何だっけ? そう、オレンジジュースだ。違う、ロング缶は金が無いんだ。炭酸か乳製品か。どちらかだ。いや、待てよ。少し眠いな。そういえば夜通し逃げ回ってて、目も酷使したんだ。熱いコーヒーにした方が良いな。よし、そうしよう。って売り切れかよ! あっと、そうだな。じゃあ……。
「遅いよ!」
後ろの男に無理やりどかされる。2メートルは超えようかという初老の大男だ。丸太のような手足をぶら下げて、存在しているだけで威圧感を感じる。知らず知らずこのスーツ姿のいかつい大男に喧嘩を売っていたらしい。
男は覗きこむようにして、そのままソーダのボタンを押してしまった。缶の落ちてくる鈍い音がして、自販機が無感情に感謝の言葉を述べる。
一瞬だけ文句を言おうかとも思ったが、どう見ても勝ち目がないし諦める。脳内シミュレーションによると「おい、おっさん」と言い終える前に俺は床に伸びている。男がプルタブを引いているのを横目に立ち去る事にした。
「ちょっと、お兄さん」
「あ、はい」
「何か買うんじゃないの?」
男はジュースを飲みながら片手で器用に財布を開き、自販機にコインを投入していく。
「あ、そうでした。ありがとうございます」
何だそれ。我ながら情けない。
「謝る事はない。お兄さんのお金だろ」
「それもそうですね」
思っていたよりもいい人なのかもしれない。順番抜かしだって俺があまりにもたもたしていたからだ。
と、思いつつも俺は恐る恐る自販機とこのおっさんの間に入り、またメニューと睨めっこする。
結局炭酸飲料か乳製品だよな。おや、この男余計に金を入れているぞ。ロング缶も買える。いや、さすがにばれるか? ばれるとして怒られるか? 怒られるとして殴られるか? 殴られるとして死ぬか? 俺もソーダにしようっと。
そしてそれはいつも通り突然やってきた。自販機のスイッチを押した途端、俺の第六感が唸る。このままここにいては死ぬ。その他のあらゆる情報が削ぎ落ちた純粋な死の予感が警告する。
俺はわき目もふらずに近くの階段を駆け上った。もう必死だ。必死だけど死ぬつもりはない。大男が何かを言った直後、流れ込んできた電車は脱線したのかホームに轟音をぶちまけた。一瞬振り返るとそこにあったはずの自販機も大男の姿もどこにもなかった。おっさん、ごめん。
改札を越え、地上に出た所で警告は静まったが、道行く人々は騒然としている。大事故なんだから当たり前だ。
夜気から身を守るようにコートを抑える。さあ、どうする。警告は消えたが、俺の予感の届かない範囲で死がうろついているかもしれない。念のために体力の続く限り走って逃げるか。でもどちらへ? 北? 南? 東? 西? とりあえず真っ直ぐ逃げればいいな。東だ。いや、何しに来たんだよ。俺には目的地があるんだ。そこは北区だ。当然北区は北にある。
クラック・シティ中央区の摩天楼群から逃げるように北へと走る。溢れかえる人混みを時に縫うように、時に掻き分けるように突き進んだ。あちらからこちらへ、パトカーのサイレンが走っていく。大型ビジョンが日を跨いだ事を知らせた。この街の夜はこれから始まる。
北区には超高層建築物こそ少ないが歴史的高層建築物が立ち並んでいる。北区に近づいたところで力が尽きた。もう死の予感は感じない。
「待ってくれ」
振り向くと目の前にさっきの大男がいた。死んだものだと勝手に思っていたがぴんぴんしている。
思わずのけ反り、尻もちをつく。低い視線から見ると余計に大きく感じる大男の威圧感で、上から蓋をされたような気分になる。しかし少なくとも死の予感は消えたままだ。
「何か御用ですか? っていうか生きてたんですね」
声が上ずった。死以外にも恐ろしいものはいくらでもあるのだ。死なない程度の暴力というのがその一つだろう。
「忘れ物だよ。そしてもちろん生きている」
そう言って大男がソーダを差し出してきた。俺は無抵抗で、もとい素直に受け取った。
「ありがとうございます。その、この為に追いかけてきたんですか?」
「いや、道すがらだよ。まあ、道すがらじゃなかったとしても追いかけただろうけど。じゃないと私がジュース代をカツアゲしたみたいになるからね」
「それもそうですね。いや、すみません」
突然大男のこめかみから血が噴き出た。発砲音が聞こえない。長距離狙撃だ。死の予感は感じなかった。当然だ。正確には自分の死の予感なのだから。他人の死までは分からない。おっさん、本当にごめん。
俺は再び走り出す。死の予感が現れる前に走り出した。北区に入る。広い場所にいては危険だろうか。しかし深夜の路地裏ほどではないんじゃなかろうか。今の所予感はない。このまま走るべきか。いや、そもそも誰かに聞かなければ目的の場所が正確には分からない。裏社会に通じる場所だ。聞いたところで分からない可能性もある。
おっさんを殺した殺し屋は本当は俺を狙っていて外したのか、それとも用心棒か何かと思ったのだろうか。
「こっちだ」
そう聞こえるや否や、俺は裏路地に引きずり込まれた。暗闇に目が慣れる前にかなりの距離を何者かに抱えられて突き進む。気がつくとどこかの建物に放り込まれていた。暖気が縮こまっていた筋肉を解きほぐす。
そこは何かの事務所兼応接室のようだ。狭く物に溢れいびつで雑然としている。俺を除いて三人の人物がそこにいた。スタイルのいいモデル然とした女性は、それでいてだらしない格好とぼさぼさの髪で浮浪者のようで、ソファに寝転がっていびきをかいている。猫背の眼鏡の男は事務椅子に座り、スマートフォンを覗きこんで何事かをぶつぶつと呟いている。そして最後の大男はあの大男だった。
「な、何で生きているんですか!?」
俺は床を這うように後ずさりし、今入って来たのであろう扉を背にする。
「そういう性質なんだよ。君の危険を予知するやつと似たようなものさ」
「死の予感と、呼んでます」
超常的な回復能力だとすれば、それに比べれば俺の死の予感なんてゴミのようなものだ。
「何すか? そいつ。依頼人すか?」と、猫背眼鏡が言った。
「道すがらね。命を狙われているようだったからさ」
「ま―た拾ってきたんすか? 金にならない逃がしはやめましょうや」
「まあまあそう言うなって」
俺は一つのワードに心臓が高鳴る。
「逃がし? もしかして逃がし屋レックスですか? もしそうなら貴方を探していたんです。俺を逃がしてくれませんか!?」
「確かに私がレックスだけど。まあ落ち着きなよ。コーヒーでも飲もう。ベティ、は寝てるのか。ヴィクター頼んでも良いかい?」
「へぇへぇ」
レックスが持ってきた事務椅子に座る。向かいにレックスも座る。
「逃がすのは構わないが、出来るだけ状況を正確に教えてくれるかい?」
ヴィクターの用意してくれたコーヒーを一口啜る。苦い。
「デスサイズってご存知ですか?」
「ああ、裏社会に名を馳せる暗殺組織の事かい?」
「そう、それです。最近そのトップが死にました。それでその息子達の間に跡目争いのような事が起こりまして、組織は二つに分裂したんです」
「ふむふむ。トップが亡くなったというのは風の噂に聞いたが、そんなことになっていたんだね。しかし、それで君の命が狙われる理由はなんだい?」
「命を狙われているというか、その半分というか。実はその二人は俺の兄達なんです」
「デスサイズのトップに三人の息子がいたという事かな? そして君はその三男であると」
「そうです。そして二人の兄達に自分の組織に入るように言われました。ですが俺はそもそも殺し屋になんてなりたくないんです」
父は三人が三人とも殺し屋になって当然だと考えていたようだが。
「しかしそもそも君の死の予感は殺し屋向きの力だとも思えないが」
「ええそうです。だからどちらかというと相手の組織に属して欲しくないんです。あの二人は。お互いを潰すのに俺の力は厄介なんでしょう。だから俺を殺すか生け捕りにするか。出来る方をやろうとしているんです、彼らは」
「どちらにも関わらないと言っても?」
「ええ。耳を貸しません。だから俺を彼らの手の届かない所に逃がして欲しくて。お金なら十分に用意しました」
「ううむ。残念だが君を逃がす事は出来ないな」
「どうしてですか?」
「私達逃がし屋が逃がすのは敗北者だけなんだよ。勝てやしない。勝ち目がない。そういう負け犬がそれでも生きる為の最後の手段なんだ。逃げるって言うのはね」
「ま、隙間産業だからそれでも結構客はいるんだよなー」と、ヴィクターがスマートフォンから目を離さずに言った。
「自分で言うのもなんですが俺が勝者だとは思えません。兄二人の攻撃を見たでしょう? どっちがどっちか分かりませんけど。地下鉄を脱線させたり、超長距離狙撃でこめかみを狙ったり、さらに言えば彼らにとってはそれらが基本スキルでしかないんですよ」
「だけど君、ええと」
「クレイグです」
「クレイグ君、君はそもそも戦ってすらいないだろう」
「じゃあどうしろって言うんですか!? 戦って負けたら死ぬんですよ?」
「そんな事は戦ってみなきゃ分からないさ。もしくは勝てる自身がつくまで鍛えたらどうだい? 手伝っても良いよ?」
「もういいです」
俺は立ち上がる。どうやら聞いていた話とは違っていたようだ。どんな人間でも必ず逃し切り、行方を悟らせる事すら不可能にするという話だったのに。
デスサイズがたまに取り逃がすターゲットは全て逃がし屋レックスが原因だと聞いていた。終いには契約書に逃がし屋レックスが関わっていた場合の免責条項まで加えていたらしい。
「クレイグ君。今出て行くのは危険だぞ。そんな事は死の予感が無くても分かるだろう」
俺はその言葉を無視して外へ出た。再びクラック・シティの冷たい空気が身を震わせる。
さて、どうしよう。逃がし屋レックスを頼りに出来ないとなると、自力で逃げ続けるしかない。永遠に、死ぬまで? そんなの不可能に決まっている。しかしやらない訳にはいかない。死にたくはない、それは確かなんだ。
戦うだって? 死ぬじゃないか。敗北者だけ逃がす? 負けは死だろう。
とりあえずクラック・シティにはもう用がない。だけどどこに逃げるって言うんだ。デスサイズのカバーされる範囲はよく知っている。無人島で暮らせとでもいうのか?
大通りの方を向くと路地を抜ける手前に誰かが立っていた。ビキニ姿の女がマシンガンを片手に立ちふさがっている。
当然のように死の予感ががなり立てる。俺はまわれ右して路地の奥へと走った。女は結局一発も撃たず、追いかけてくる様子もない。しかし死の予感は変わらず俺の頭をがんがんと殴りつける。真っ暗な裏路地を走るのはそれだけで危険な行為だった。何かを蹴り上げ、何かを頭にぶつけた。それでもただただ闇雲に突っ走った。
ふと開けた場所に出る。建物に囲まれた空き地だ。そして行き止まりでもある。周囲の建物の窓から漏れる光でそれが何とか分かった。しかし死の予感は一向に鎮まる気配がない。俺は来た道を戻る、わけにもいかなかった。
誰かがやってくる。さっきのビキニ姿の女だ。
「グッドアフタヌーン。本家デスサイズから派遣されました。サブリーナと申します。お命頂戴しに参りました。何だか不思議そうな顔をされてますわね。あ、この水着ですか? 仕事着なのですよ。血で汚れても良いように。分かりますよ。寒くないのかって仰りたいのですね。寒いです。当然でございましょう。冬ですよ。早く仕事を終わらせたいものです」
そう言ってサブリーナは、しかし何もせず突っ立ったままだった。死の予感は変わらずある。
「どういう事なんだ?」
「ビキニはお嫌いですか?」
「この死の予感だよ。君は一向に俺を殺そうとしないのに何故消えないんだ」
「ああ、そういう事ですか。ド素人さんには少し難しいかもしれませんが、殺そうとはしてるんですよ。でも牽制されてるんですね。下手するとどさくさまぎれに貴方が連れ去られかねないので、貴方の後ろにいる人に」
反射的に振り向く。丁度陰になっている所にまた別の女がいた。今度はチャイナ服だ。
「こんばんは。元祖デスサイズのマーゴットだ。お前を殺すか連れ去るか、偽デスサイズの連中を惨殺するように言われてきた。私も寒い」
マーゴットはナイフを一本持っているだけだった。
「ですが」と、サブリーナが言う。「今は協力しているんですよ。一応」
「そうだ。私達にはもっと大事な共通の目的がある。ただし偽の連中は信用ならないので、出し抜かれないように、こうして牽制しあっているというわけだ」
「貴方方こそ目的を果たしてる最中にクレイグさんを連れ去るつもりでございましょう? そうはいきません事よ」
「共通の目的って何だよ」と、俺は言った。
その時、どこか遠くで発砲音が聞こえてきた。死の予感とは別の嫌な予感がした。
「逃がし屋の野郎さ。あいつの厄介さは折り紙つきだからな。先に始末しておこうって訳さ」
つまり俺は逃し屋レックスを釣る為の餌だっという訳だ。
「え? 何ですの今の? マーゴットさん。わざわざ言う必要ありまして? 馬鹿でいらっしゃいますの?」
「黙ってろアバズレ」
「あぁん!?」
お互いへの殺意が強まったせいか、俺自身の死の予感は薄らいだ。その隙に俺は走り出、せなかった。マーゴットに蹴飛ばされ、後ろから踏みつけられる。
「実際の所、死の予感があった所で身体能力カスのお前を殺すのは訳ないんだ。うちのボスがうまく使えば、その真価は発揮されるだろうがな」
「この場で殺すつもりでいらっしゃるの?」
「それでもいいが、お前私がこいつを殺す瞬間、私を狙うだろ?」
「ええまあ。そう見せかけて連れ去る手段を用意しているかもしれませんし、念の為に殺しますね」
その時、とんでもない圧の死の予感が襲いかかってきた。さっきからこの二人に常時浴びせられていたものとは質も量も段違いだ。
「おい! 逃げろ! 何か来るぞ!」
その直後、二人の殺し屋もその勘で何かに気付いたのか、即座に動き出す。次の瞬間、路地の方から大爆発が起きた。俺はただ両手で頭を覆うくらいしか出来なかった。爆風が逃げ場のない空き地に吹き荒び、周囲の建物の窓ガラスが弾け飛ぶ。あちこちから悲鳴が聞こえてきた。しかし俺には何の痛みも現れなかった。
爆音が静まってからも、何か重いものが崩れ落ちる音が聞こえた。恐る恐る目を開けるとレックスの巨体が俺の身体を覆いかぶさっていた。
「すまないね。あいつは、ヴィクターは加減ってものを知らないんだ」
「何やってんすか、レックス。背中めっちゃ焼けてるじゃないっすか」
レックスは砂埃を払いつつ立ち上がった。服は焦げているが背中は無傷のように見えた。
「何やってるのかはこっちが聞きたいよヴィクター。牽制程度で良いって言っただろう」
「そのつもりっすけど」
「なってないよ、君。とりあえずここはもういいから、ベティの方へ行ってやってくれ。二人ともやりすぎないようにね」
「へぇい」
「無事だったんですね」
俺も痛む体を立ち上がらせる。
「ああ、とても驚いたけどね」
「すみません。俺のせいで」
「気にする事はないよ。こういう仕事をやっていると日常茶飯事さ。君ももう行っていいよ」
「待て待て待てぇい!」と、マーゴットが叫んだ。
上空から声が聞こえてきた。見上げるとサブリーナとマーゴットが建物の屋上から見下ろしているのが見えた。あの爆発にあって二人とも無傷なようだ。
「捕まるか死ぬかどちらかになさい!」と、サブリーナが喚いた。
「だ、そうだよ。クレイグ君。どうするね?」
俺は、それは勿論当然逃げたい。だけど、さっきも奴らが言っていた。殺そうと思えばいつでも殺せる。ただ二つの暗殺組織の牽制の間でどうにかこうにか生き延びていたにすぎない。
「この際どちらに入るか決めればいいじゃないか!」と、マーゴットが言った。
「はあ? 何を仰ってますの?」と、サブリーナが疑問を呈した。
「はっきり元祖デスサイズに入るって言ってくれたら、こちらも守る為に動きやすいんだよ。逆に偽デスサイズに入るなら、それはそれで殺せばいいだけだから分かりやすいんだ」
「なるほど。それもそうですわね。宙ぶらりんが一番面倒ですものね。うちが本家でございますけど」
「殺し屋にだけは絶対ならないって決めたんだ!」
するりと口から出たその言葉は何より確実な自分の本心だった。
「まあ! 何てふてぶてしい!」
「親殺しの癖に偉そうなこと言ってんじゃねえぞ!」
「何ならうちで働くかい?」
レックスがにこりと笑って俺の肩に手を置いて言った。温かく巨大な、空想上の父のような掌だ。
「馬鹿仰らないでくださいまし!」
「そうだそうだ! 二つの組織を相手取るんだぞ!」
「さっきのさっきまで二つの組織を相手取って逃げ回っていた君だ。やってやれない事はないさ」
「はい! よろしくお願いします!」
「その決断を受け入れよう。さてクレイグ君。絶対に逃げ切る方法は何だと思うね?」
「絶対に? ですか?」
「おい! 私を無視して話を進めるんじゃねえ!」
実際の所逃がし屋がどう逃がしていたのかは聞いていない。そもそもそれが分かれば逃がしやしないだろう。失敗した下部組織は父によって尻尾切りされていたようだし。
「すみません。分からないです」
「そんな方法ある訳ございません!」
「答えは簡単さ。追う者に追うのを止めさせればいいんだ」と、拳を握りしめたレックスは言った。
「え?」
死の予感が喚き立てる。サブリーナの弾丸の嵐が降り注いだ。が、レックスの肉体に阻まれる。死の予感は眠りについたと思った瞬間にまた起きてくる。振り返るとマーゴットがいつの間にか後ろに回り込んでいた。
「レックス!」と、思わず叫ぶ。
巨大な拳が俺の頭の横から突き出され、マーゴットを一発でのした。鼻血が噴水のように噴き出す。その間も絶え間なく弾丸が襲っていたが、マーゴットが倒れたと同時に止んだ。サブリーナは背中を向けて逃げだしていた。しかし俺の後ろから地上から何かが飛んでいき、その背中にぶつかった。その何かはどうやら気絶したマーゴットのようだ。
「終わったね。後の処理はベティに任せよう」
「処理?」
うーん、とレックスは顎に手を当てて考える。
「クレイグ君はグロ耐性ある?」
「まあ。割と日常でしたので」
「そうか。なら後で話すよ。なにはともあれ、逃がし屋レックスへようこそだ」
「よろしくお願いします」
こうして俺の逃がし屋稼業の第一日目が終わった。
ここまで読んで下さってありがとうございます。
ご意見ご感想ご質問お待ちしております。
何とか終わらせたという感じだ。
関係ないけど一時間で1500文字くらいしか書けない事が分かった。
それもぶっ通しで書ける訳ではないのでとても時間がかかる。
せめて内容を考える時間を除いても一日で短編小説を書けるようになりたい。