初依頼②
『賢魔の森』。
名前の由来は、かつてこの森にいた推定Gランクの魔獣らしい。
普通のGランクの魔獣程度なら、腕利きの冒険者を人数揃えれば討伐できるだろう。しかし、森にいたのは『やたらと知能の高い』ワーウルフだったらしい。ワーウルフとは、まぁ所謂狼男のことだ。
獣人の狼族は、獣耳と尻尾をつけて、あとは毛深くした人間と言ったところだが、ワーウルフは二足歩行の狼を想像してもらえれば解りやすいだろう。
ところが獣人とは違い、本来知性など無く狼の本能で生きているはずのそのワーウルフは罠や戦略を使用してきたと言うのだ。
結果、討伐隊は壊滅。
その後、数回討伐隊が編成されたものの全て返り討ちに遭い、そしていつのまにか謎のワーウルフは姿を消していた、ということだ。
ワーウルフは基本的に群れで行動する。
謎のワーウルフも周りに侍らせていたような、普通のワーウルフは今でも森に出るらしいが。
そうして、この森は『賢魔の森』と呼ばれるようになったそうだ。
(そのワーウルフ・・・出てこねぇかなぁ。そしたら結構面白そうなんだけど。)
普通のワーウルフは単体でランクなし。群れでI+といったところだろう。俺には全く面白味のない相手だ。
さて、森に到着。サクッと気配を探ってみると、かなりの生き物の気配。まぁ当たり前だわな、森だし。
今回の依頼、本当に曖昧な情報しかない。なぜなら、ちゃんとした目撃者は生きて帰ってきてないからだ。だからとりあえず、その曖昧な情報があった場所を目指してみよう。印の付いた地図を貰っている。
目的地に到着。木々が開けた場所で、普段は休憩や野営地に使われるんだろう。木片や金属の破片がところどころに散らばってるなぁ。情報通り、ここが被害現場だな。・・・他には何にも見当たらんがね。
「どうすっかなぁ・・・ん?」
南東(森の奥の方)から気配5つ。たぶんワーウルフだな。この森はワーウルフの住処らしいし。
案の定、ワーウルフのお出ましだ。やっぱり、雑魚の気配。時間の無駄だ、さっさと片付けるとしようか。
一体目が大口開けて迫ってくる。莫迦が。噛みつきなんてモンは相手に組み付いてから使うもんだぞ。とりあえず横っ面を蹴る。おっと強過ぎた、首から上だけ吹き飛んじまった。
二体目、三体目同時攻撃。二体目は脚、三体目は腕を狙って噛みつこうとしている。・・・ん?なんか、戦術っぽい?だって、その後ろ。四体目、五体目が波状攻撃しようとしてるんだが。
面倒だ。一掃するぜ。
「『破陣』。」
二体目と三体目の顔の側面に手を添えて逸らす。そのまま回転。手は鉤爪の形を維持。遅れて来た四体目、五体目を制空圏(手の届く範囲)に招き入れ、4体まとめて薙ぎ払う!
最初の2体は下半身を、後の2体は上半身を吹き飛ばされ絶命。
周囲に気配無し。これにて了、と。
魔獣を討伐すると自動でギルドカードに記録される。記録された討伐数で報酬が出される。それは依頼外であってもだ。だから一々魔獣を解体する必要はない。・・・勿論、素材は売れるけどね。俺は興味ねぇや。しかし・・・。
(犬っころが生意気にも波状攻撃だぁ・・・?そんな話は聞いてないがなぁ。)
これは無視することの出来ない事だろう。これはもしかすると。
「居るのか、『賢魔』っ・・・!!」
テンション上がってきたーっ!!
短くてすいません。
ちなみにまだ街の門番にギルドカードは見せてません。
もし稼げないようなら、三日以内に街を出るつもりだからです。
・・・まぁ、んな訳ないんですけどね。