初依頼①
ちょっと説明回。
レオールから銀貨30枚を貰った。どの程度の価値か分からんので、聞いてみた。
なんか呆れたような顔をされたが、知らんもんは知らん。おとなしく聞く。
世の中は基本的に銅貨で回っているらしい。
銭貨100枚→銅貨1枚、銅貨100枚→銀貨1枚、銀貨100枚→金貨1枚、金貨100枚→白金貨1枚。
まぁ、分かり易いな。一般人1日の消費金額が普通に(・・・)暮らして銅貨20枚程度らしい。
そう考えると、銀貨30枚=銅貨3000枚。普通に暮らしていけば、150日はボーっと暮らしていけるわけだ。まぁ勿論俺には宿代だの装備代だのが掛かるから、そんな簡単な話じゃないが、かなりの稼ぎだというのは分かった。
んで・・・。
「何の用ですか、レオールさん。報奨金以外に俺との繋がりはもう無いはずですが。」
「冷た!?なんで急にそんな冷たいの!?さっきの決闘でも審判役してやっただろう!?」
頼んでねーよ。それにさっき俺を見捨てたことは忘れねー。・・・まぁ、さすがにそこまでは言わないが。にしても、さっきからしつこいなぁ。なにかあるんだろうか?
「カズマ。お前は強い。話は聞いたがCランクだそうだな。ハッキリ言って信じられねえよ。見た目はそこいらの若者と変わらねえもんな。・・・この先、お前さんはきっと歴史に名を残すような人物になるんだろう。俺はそんな人間と知り合いになれて光栄だ。だけどな・・・その依頼はやめておけ。」
「この森の怪物ってやつですか?でも一応推奨Dランクですよ?」
依頼の紙には時として『推奨ランク』が掲載されている。『そのランク以上の人間が受けるのが望ましい』という依頼者からのある種の配慮だ。
「ホントにお前は分かってねーな・・・。確かにお前さんはCランクだが、常識的に考えて『Dランク推奨』なんて有り得ない依頼なんだよ。なんせ、Dランクなんて普通の冒険者にはなれないランクなんだからな?」
なるほど。確かに言われてみればさっきの受付のお姉さんや支部長の話にもあったな。
ってことは、これはかなりヤバい依頼だってことだよな・・・?
「よし、この依頼受けます!」
「話聞いてんのか!?」
叫ぶレオールは無視して受付に向かう。赤髪のお姉さ~ん。
「レオールさんから色々聞いていらっしゃったようですが、よろしいのですか?かなりの難易度の依頼です。確かにカズマさんはCランクですが、初依頼ならもっと簡単なものもありますよ?」
「やっぱり初依頼は一番興味が引かれるやつでいきたいんですよね。結果として俺がどうなるかは、二の次で良いでしょう。」
「・・・命を落とす可能性が非常に高いです。カズマさんがCランクだとしても。」
「それも、俺の自己責任です。・・・受理してください。」
お姉さんは溜め息を吐きながら依頼を受理してくれた。色々と小言を言われたが、それもしっかりと受け止めた。
最後にお姉さんが言った。
「・・・私は『オリビア・カンダール』と申します。カズマさんの依頼は可能な限り私が処理いたしますので、受付の際にはご指名ください。」
「はぁ、どうも。カズマ・ムトウです。今後ともよろしくお願いします。」
俺はぺこりと頭を下げた。その様子を見て、オリビアさんはポカンとし、周りがざわついてるのはなんでだ?
ようやくイルスの街を出て、森に向かっている。
オリビアさんやレオールにアドバイスやらなんやらを受けてから、ようやく出立できた。
曰く、『賢魔の森』は浅い所は大したことないが、深いところにはEランク相当の魔獣が棲息しているだとか。
曰く、森の怪物はこれまで幾人もの冒険者が挑み果てていった、討伐不可の烙印を押された推定E-ランクの化け物だとか。
聞けば聞くほど、男としては燃える展開だろう。
さぁ、俺を楽しませてくれる程度の化け物なんだろうか?
とりあえず楽しむとしようか。
実際の冒険者回は次に持ち越し。