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火の粉は払う

 遅くなりましたが、短いです。




「悪いこたぁ言わねぇ。ケガする前にママのとこに帰んなぁ。」



 酔っぱらいのおっさんに絡まれた。

 熊のような体格に銀色の鎧を身に着け、背中には大剣を背負っている。


 帰れと言われても、帰れるなら今すぐ帰りたいっての。

 身分証もないから、手に入れないといけないし。



「いや、ちょっと身分証が必要で。冒険者ギルドなら、すぐに身分証を作ってくれると聞いたんで。」



 俺の言葉を聞いて、おっさんはさらにヒートアップ。



「おいおいおい、身分証の為だけに冒険者に登録だぁ!?お前みたいな奴がいるから、冒険者の質が下がっただとか言われちまうんだよ!おら、俺が本気で怒る前にとっとと帰んな!」



・・・はぁ。なんかメンドくせぇなぁ。もう諦めて別の方法考えるかぁ。滞在期限の3日以内なら何でもいいわけだしなぁ。ったくよぉ、なんなんだよマジで。なんで『オレ』がこんなメンドくせーことしなきゃなんねぇんだよ。フザケんなよなぁ。


・・・っと、危ない危ない。かなり『引っ張られた』な。気をつけよう。うん、俺は大丈夫。よし、おっさんに謝ってギルドを出て行こう、そうしよう。

 とか考えていると。



「なら、コイツと戦ってみればいいじゃないか、ゴードン。」


「あん?・・・レオールか。」



 レオールのおっさんが余計なことを言いながら戻ってきた。・・・ゴードンってこの熊みたいなおっさんのことか。なんだなんだ、知り合いか?



「このガキとじゃあ結果がわかりきってんじゃねぇか。俺は弱い奴をいたぶる趣味はねぇよ。」


「コイツは強いぜ?なんせ黒斬兎をソロで瞬殺できるレベルだからな。」


「・・・なんだと?」



 レオールがさらに余計なことを喋ってくれたせいで、ゴードンの目つきが変わった。まさしく「闘う者」の目だ。



「フカシこいてんじゃねぇだろうなぁ?」


「まさか。天神アメリアに誓うさ。」


「・・・おもしれぇ。試してやる、表出ろ小僧。」


 いやいや、俺了承してないんですけど。てか、イヤなんですけど。



「いえ、結構です。もう登録は諦めますんで・・・。」


「ゴチャゴチャ言わずにとっとと来やがれ。」



 首根っこ掴まれて強制連行された。後ろでレオールが手を振っている。あとでシバき回す。




 やって来たのは、街の広場。円形で、中心に向かって段々になっている、まぁ分かり易い広場だな。

 中心付近は、たまに演劇などの出し物をやるらしく、出店や屋台などは展開されていない。そういった露店は円の外周に沿って店を出しているようだ。


 連れてこられたのは勿論広場の中心。決闘という名目で人もかなり集まってきたようだ。



「んじゃあ、見せてもらおうじゃねぇか。黒斬兎を瞬殺する実力とやらをなぁ。」


「・・・。」



 グルリと周りを見回す。

 少し段を上がったところに、何食わぬ顔で審判役についているレオール。

 辺りには大勢の観客。出店も増えたようだ。

 ぱっと見、武装している人間が多い。へぇ、獣人なんているのか、犬耳だ。たぶんみんな冒険者なのだろう。ギルドでの一件を見て興味を持ったのだろうか。

 勿論、圧倒的に数が多いのは一般人だろう。全く「戦闘」の雰囲気が見受けられないからな。

 冒険者一般人関係なく賭けも行われているな。俺と熊野郎どっちが人気なんだろうか。

 それに気になるのは・・・。



「おら、ガキ!いつまでボーっとしていやがる!?さっさと構えやがれ!!」


「あ・・・?」



 なんだ、まだ始まってなかった(・・・・・・・・・・)のか。っていうか。



「いや、構えてるんで。早く始めてくれませんか?」


「なにぃ・・・?」



 今の俺は、ほぼ「気をつけ」に近い構え―――というか、まぁ、普通に突っ立ってるだけなんだが―――をとっている。やはり、構えには見えないのか。昔からよく言われるんだよな。



「ほぉぉぉう・・・!それで構えてんのかっ・・・!ってことは、もう攻撃しても何ら問題ねぇってこったなぁ・・・!?」


「ええ、いいですよ。どうぞ。」



 うわぁお。ブチ切れてんなぁ。昔から相手の反応はこんな感じなんだよな。・・・まぁ『本物』の強者ならちゃんと分かるはずなんだけどな。熊野郎には分かんないか。



「いくぞ、おらぁ!!」



 思考が途中で逸れたな。

 しかし気になるのは、俺達が冒険者ギルドを出たあたりからこちらを・・・いや、『俺』を見ている視線だな。―――上から斬りおろされる熊野郎の大剣を左手でいなす―――粘着質ではない。ジッと観察しているような、そんな視線。―――カウンターで熊野郎の顎に右フック―――大体の方向は分かるんだが、さっきも言ったように人が多すぎる。―――倒れてくる巨体を(かわ)す―――その方角に目を凝らすが、その途端に気配が消えた。―――レオールが俺の勝利を告げた―――次は逃がさないようにしないとな。


 さて、現実に目を向けよう。

 俺の前にはうつ伏せに倒れた熊野郎。周りは番狂わせに大騒ぎ。

 目立つつもりは全く無かったんだが、仕方ないか。


 俺は観客に手を振って退場した。












まぁ、結局観客達の中を突っ切らないとギルドまで帰れなかったんだけどね!

 戦闘回とは言ったが、戦闘シーンがあるとは言ってない。

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