未知との遭遇
方角なんか分からんので、とりあえず左に進んでみる。さっき見えた森を左手においた感じだな。
しかし、古い資料とかマイナーなテレビ番組でしか見たこと無い自然溢れる世界はスゴく爽やかだ。
日本の街にも樹木ぐらいは植えてあるが、あんなもん気休めだ。自然・・・なんて呼ぶのもおこがましい。
今のこの状況が夢か幻かは分からないが、ここまで来たら野生の動物なんてもんも見てみたいな!
歩くこと約2時間・・・。
今、俺の目の前にはウサギがいる。
体毛は黒。目は赤。クリクリした目はなかなか可愛らしい。大きさは2m弱か、俺の知識にあるウサギよりはかなりデカい。それでも全体的には愛らしいと評価できるのではなかろうか?
・・・完全な二足歩行に加え、前足が鎌のようになっていなければな。
「グルルルルゥ・・・!」
うなり声が明らかにウサギのそれじゃない。犬とか狼のうなり方っぽい。完全に俺を敵・・・というかエサと認識したようだ。筋肉隆々とした後ろ足で地を蹴り、鎌を振り上げ襲いかかってきた。
あまりにも直線的な攻撃を躱すのは容易い。
躱しながら、さて反撃すべきかと思案していると俺の認識可能領域に人間の反応。数は7。武装しているようだ。しかし・・・。
(随分と時代錯誤な装備だな・・・?コスプレ集団?)
西洋鎧にロングソードや盾といった、中世のような装備に身を包んだコスプレ(?)集団はこちらに走って近付いていたようで、もう視認できる位置まで来ている。少し警戒しておく。
「おぉい!そこの少年、無事か!?動けるなら、すぐに『黒斬兎』から離れるんだ!」
一番先頭の男(コイツが一番強いな)が声を張り上げる。
「後は我々が引き受けよう!少年は早く安全な場所に!」
助けてくれるようだ。
しかし、ほんのちょっと遅かったな。
「それには及ばない!もう仕留めた!」
「は?」
返事をした俺の目の前でウサギの首がポロッと落ち、切り口からは血が噴き出ていた。
「いやぁ、しかし驚いたな!黒斬兎を一人で、しかも素手で仕留めることが出来るなんて!」
「まぁ、運が良かったんですよ。」
呆然としていたコスプレ集団も、俺が声をかけるとハッとして急いでこちらに駆け寄ってきた。
話を聞くと、彼らはこのウサギを討伐するためにやってきたらしい。
「だが、少年のおかげで手間が省けたな!礼を言う!」
このやたらと元気なオッサンはレオール・ラッセという名前らしい。『アーリア聖騎士団』の三番隊隊長なんだとか。
ちなみにここは『カンタール王国』の『ニング草原』らしい。
迷子だと告げると、気軽に教えてくれた。
どこだよ、それ!?
次回は説明回。