第三話
三話目です。
展開が凄くなってきました(色々)。
朝、僕はいつも通りの五時に目が覚めた。朝はいつも早く起きて朝食や昼の弁当を作る。海ヶ崎高校にも学食はあるし学校から徒歩五分の所にもコンビニもある。だからそこまで弁当を作る必要はないのだが、雪音曰く余計な出費がかかるから避けたい、だそうだ。まあ確かにそうだけど…。だから朝は大体起きるのが早い僕が弁当を作るのが日課になっていた。しかも今年からは紅葉の分も増える。普通ならめんどいって思うかもしれないけど僕は逆に作り甲斐があると思っている。喜んで貰えたらこちらも嬉しいからだ。
そんなことを思っていたらいつの間にか五時半になっていた。しかしもう弁当は大体作り終えたのでもう大丈夫だろう。
とりあえず雪音と紅葉を起こさなきゃな。
まずは雪音からだな。
ちなみに全員の部屋は二階にある。
コンコン。
「雪音〜、朝だぞ〜」
「うん、今着替えてる〜」
「わかった、着替えたら下に降りて来いよ〜」
「わかった〜」
さて、雪音は大丈夫だな。次に紅葉の部屋の前に来てコンコン、とノックをした。
「紅葉〜朝だぞ〜」
「あ、お兄ちゃん!今行くから少し待ってて!」
「いいぞ」
少しして紅葉が出てきた。
「お待たせ、お兄ちゃん!」
「大丈夫だ。さ、下に行って朝飯食うぞ」
するとちょうど雪音も部屋から出てきたところだった。
「雪音も準備が終わったみたいだな。じゃあ下に行って朝飯を食べよう」
「「うん!」」
朝食を食べ終えて学校へ向かう。
その時僕はなぜか視線を感じた。しかしそれはあからさま女子の視線だ。まったく、僕を見てもいいことなんかないのに…。
「あれが旭祐斗君、ね。ふふ、楽しみだわ…」
ゾッ…。
な、なんか今すごい寒気という悪寒が…!?
「兄さん?」
「お兄ちゃん?どうしたの?」
少し震えていたら雪音と紅葉がが心配そうに声をかけてきた。
「あ、いや、なんでもないよ…」
「「?」」
なんか急に学校に行きたくなくなってきたな…。
学校に着いてしまった。
教室に着いたらなんとなく安堵した。
雪音は先に来ていた女子と談笑している。
「おう、祐斗、おはよう!」
「ああ、隆輝、おはよう」
なんとなく教室を出て(まあ単に女子の空間に耐えられなくなっただけだが…)廊下に出てきたら、いきなり声をかけられた。声をかけてきたのは友人の隆輝だ。こいつ、バスケ部なのに朝練サボったのか?隆輝は普通に見てもイケメンだから女子にモテる。多分部活もバスケをやっているからそれもあるのかな?しかも成績も上の方だ。
「なんだ?元気ないな」
「いや、朝っぱらから何度も寒気がしてね」
実際は悪寒だが…。
「まさか風邪か?ははは、だとしたら今日はあんまし無理すんなよ?」
さすが親友。気遣いをしっかりしてくれる。
「ありがとう、隆輝」
「いいってことよ!んじゃあな!」
そう言って隆輝は自分の教室に戻っていった。
「僕も戻ろう…」
ああ…。またあの中に入らなきゃいけないのか…。
そう考えると自然とため息が出てきた。
キーンコーンカーンコーン…。
午前の授業が終わった。昼休みは基本一人になるかなって思ったんだけど…。
「兄さん、一緒に食べましょう!」
雪音に捕まっ…誘われた。しかし、
「ごめん、雪音。僕は隆輝と一緒に屋上で食べるよ…」
するとあからさまショックを受けていた。
「な、なぜ!?」
「いや、だって居づらいし…」
僕は正直な感想を雪音に言った。
「え〜、そんな理由で屋上に行くの?」
近くにいた華奈もそんなことを言ってきた。…なんで?
「クラスメイトと親睦を深めるのは当然だからよ」
心読まれた!?
「でもすげー空気に耐えられないんだけど…」
とりあえず言い返した。
「大丈夫でしょ」
気楽に言われた。てかほぼ流された。ひでぇ…。
「あ、あとたしか今年から屋上使えないよ?」
「え、マジで?」
「うん」
そ、そんな…。あの憩いの場が…。
「なんで?」
「なんかね、三年の人が絶好のサボり場に使ってたのが判明したかららしいよ」
「ああ、使えなくなった理由はそれだったんですね」
誰だよそんな風に活用したの。
「ま、諦めて私達と食べましょう?時間もなくなっちゃうし」
くっ、今日は諦めよう…。
「わかったよ…」
「わ〜、よかった〜」
僕とは対象的に雪音は喜んでいた。もういいや…。
こうして昼休みは自分以外女子しかいない中で僕は昼食を終えた。
午後の授業も終わり、さっさと帰ろうとした時に、
「すみません、旭祐斗君はいますか?」
と綺麗なソプラノの声がして、同時に名指しされた。てかあのリボンの色からして先輩…だよな?でも僕は先輩とは関わりはなかったはずなんだけど…。
まあ、さすがに先輩からの名指しはスルーできないだろう。
「なんですか?」
「君が祐斗君?」
「はい、そうですが…」
先輩は僕を頭から爪先までじっくり見て、
「ちょっと話があるから付いて来て」
「あ、はい」
めんどう事じゃないといいな…。密かに僕は思った。
教室から出る時にふと視線を感じ、チラッと見ると昨日僕に告白してきた永峰と目があった。どこか不安そうな顔をしていた。この人、あんまり大人しい人じゃなかった気がするんだが…。
まあいい。とりあえず今はこの先輩だ。一体なんの用なんだろう?
今更だけど僕、この先輩の名前知らないな。
顔立ちはさっき見た限りかなり美人だったな。髪は長くて束ねてポニーテールにしている。しかも金髪。
「ここら辺でいいかな」
そうこう考えていたら着いてらしい。でもここって…、
「保健室?」
え?なんで保健室に?
「いきなり呼んでごめんなさいね?」「いえ、それはいいんですけど…。なにか用ですか?」
「ふふ、改めて間近で見ると可愛い顔をしてるわね…」
ゾッ。
な、なんか朝に感じた悪寒がまたしたぞ!?まさかあの視線の正体ってこの先輩だったのか!?
「とりあえず自己紹介をするわね。私は伊島七海よ。見ての通り、三年生よ」
「はぁ…」
伊島先輩ねぇ…。
「僕は…」
「知ってるわよ。旭祐斗君♪」
そういえばさっき教室でフルネームで呼ばれたことを思い出す。
「えっと…、それで用件はなんですか?」
さっきも聞いた質問を再びした。
「用というか単に君を間近で見たかったのよ。」
えぇ〜…。それだけで呼ばれたのか、僕は…。
「ところで祐斗君には彼女はいるの?」
なんかいきなりすごい質問をしてきたよ?この人!
「い、いませんけど…」
「そう…。なら私と付き合ってくれないかな?」
スイマセン、展開がいきなりすぎて頭がついていけません。
「ふふ、祐斗君を独り占めしたいのよ!」
妖艶に笑った伊島先輩。すごく似合っていたが、
「そ、それはちょっと…」
弱々しく断った。…のだが、
「えい!」
ドン!
ベッドの上に押されてしまってそのまま倒れてしまった。
「ちょっ、先輩!?」
「ダメでもせめて唇は貰うわ」
そんなことを言いながら先輩が股がってきた。
先輩が僕を股がってきたせいで、僕は身動きがとれなくなった。
「せ、先輩、冗談はやめてください!」
「私は本気よ」
目が本気だった。しかも心なしか先輩、ブラウスのボタン(先輩の)外してるんだけど!?
どうしても目がそちらに行ってしまう。…先輩、胸大きいな…。って、なに考えているんだ、僕は!?
「ふふ、気持ちよくしてあげるわ…」
先輩の顔が近付く。
―っとその時、
ガラッ!
「祐斗君、大丈夫!?」
声的にこれは永峰だな…、助かった…。
「あらら、残念、見付かっちゃったわね」
先輩はそう言いつつも一向に離れてくれない。
「先輩、離れてくださいよ…」
「嫌よ」
即答された。
「伊島先輩、私の祐斗君になにをしてるんですか!?」
今どさくさに紛れて永峰『私の』祐斗君にって言わなかった!?
「あら?おかしいわね…。祐斗君には彼女はいないって聞いたわよ?」
「ぐっ!」
悔しそうな永峰。なんで?
「とにもかくにも離れてください!」
「仕方ないわね。祐斗君続きはまた今度ね♪」
できればその続きはなしで終わってほしい…。
「じゃあね〜♪」
投げキッスをして伊島先輩は去って行った。
「永峰、ありがとう、助かったよ…」
「い、いえ…」
「ところでどうしてここに?」
ふと思った疑問を聞いた。
「告白の返事を聞こうと思って…。祐斗君を探してたの。そしたら祐斗君の声が聞こえたからそれで…」
なるほど。偶然通りかかってそれで助けてくれたんだな。
「そっか。どっちにしてもありがとうね」
「う、うん…」
お礼を言うと永峰は赤くなって俯いた。
赤くなって俯くその姿は正直可愛かった。
「そ、それで、へ、返事は?」
かなり不安な声でそう聞いてきた。
う〜ん…。どうしよう…。実はまだ答えが決まってないんだよな…。
「ごめん、まだ考えてるんだ…」
「わ、わかった…」
しっかりと答えを出せなかった自分が恨めしかった。
その後、一旦鞄を取りに教室に戻ってきた。もうすっかり暗くなっていた。時計を見るともう六時半だった。さすがに永峰をこのまま一人にするわけにもいかないので、
「永峰、よければ途中まで一緒に帰るかい?」
と聞いた。
「え?い、いいの!?」
嬉しさ半分、驚き半分で返事をした。
「いいよ。遅くなったのも僕が原因だからね」
「じゃあ、お言葉に甘えるね♪」
とても嬉しそうだった。
帰り道は永峰と他愛のない話をしながら歩いた。学校から十五分くらいのところで、
「もう家はすぐだからもう大丈夫だよ!」
と言ったのでそこで別れた。
「何気に楽しかったな。永峰と帰るの…」
その後、家に着いたら夕食を食べて風呂に入ったらすぐに寝てしまった。