第十話
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次の日。
隆輝は昨日言っていた通り、退院したらしく、元気に登校している所を目撃した。
「よかった、隆輝になんともなくて」
僕は一人言を洩らす。
「ところで、隆輝さんはどうして入院してたんですか?」
雪音がふと疑問を言う。
「そういえばそうね。なんでなの?」
水瀬も同じように疑問を言う。
そういや他のみんなは知らないんだったな。
でもこれは僕が話していいことではないだろう。
「気になるなら隆輝に聞いてごらん?」
「うーん、話してくれるでしょうか?」
そうなんだよね。隆輝にとっては今回はプライドをズタズタにされたものだろう。だから簡単には話さないだろうな。
「てか祐斗君は知らないの?」
そう、あいつが誰かに話すとしたら僕。それは水瀬も雪音もわかっているだろう。
「うん、知ってはいるけどこういうのは本人に聞いた方がいいでしょ?」
そう言うと二人は黙り込み、
「それもそうね」
と水瀬は言い、
「そこまてひどいんですか…」
と雪音は言った。
実際、あいつは僕の前では元気に振る舞っていたけれど、頭の中では悔しがっているだろう。
キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴ったので僕達は会話をやめて席に戻った。
授業はいつも通り進み、昼休みになった。
その時に、
「祐斗いるかー?」
と、隆輝の声がした。
「隆輝?どうしたの?」
僕は驚きながら隆輝の元に行った。なんせ隆輝は今年になってから僕のクラスには一度も来てなかったからだ。それがどうして…?
「おいおい、俺がこっち来ちゃいけないのかよ」
言葉とは裏腹に笑っている隆輝。絶対なにかおかしい。
「いやだって今年になってから一度も来なかったじゃないか」
「あぁ…、そういやそうだった。いつもお前がこっちに来るって思ってたからな」
うっ…。それって初日に雪音達に捕まったからだよね。
「えっとなんかごめん」
とりあえず謝った。
「別に謝んなくてもいいけどさ、とりあえず昼飯食おうぜ!」
「うん、そうだね」
誘ってくれたのは嬉しいけど隆輝のやつ、いきなりどうしたんだろう?ま、いいか。
その後は隆輝と昼食を取った後は時間まで隆輝と無駄話をしていた。隆輝もいつも通りの姿だった。
ただ、
「兄さん、いったいどこに行ってたんですか!?」
教室に戻った時に雪音が半分泣いた状態で僕の元に来た。
「え?隆輝と昼飯食べてた」
僕は普通に答えた。
「祐斗君、それなら一言言ってよ…」
水瀬もなんか肩を落としながら言ってきた。どうしたんだろう…。
「えっとなんかごめん」
結局僕は今日だけで隆輝と雪音と水瀬の三人に頭を下げる羽目になった。なんでだ…。
放課後、僕は教室からさっさと出た。
隆輝は今日は見学だけでもと部活に行った。
雪音は日直の仕事だし水瀬はそれに付き添っている。なので僕は今は一人である。なんか一人になるのが久しぶりだなぁ。
「あら?祐斗君じゃない」
そこに伊島先輩がやって来た。
「どうもです、伊島先輩」
「一人だなんて珍しいわね」
「みんな忙しいからたまたまですよ」
ちなみに永峰は先生に呼ばれて手伝いをしてる。
「へぇ、ならちょうどいいわ。一緒に帰らない?」
「いいですけど絶対に襲わないでくださいね?」
「残念だわ。でも襲わないから安心して」
残念と言いながらも全然残念そうには見えない。逆に怖かった。
こうして僕は伊島先輩と帰ることになった。
帰り道。
「祐斗君は家で主に何をやってるの?」
「大体は家事ですね。その後は勉強です」
「へぇ、家事やってるんだ。ってことは料理も?」
「はい、作りますよ」
「いいなぁ、料理ができて」
「先輩は作らないんですか?」
「作らないというより作れない、っていうのが正しいかな?」
「そうなんですか?」
家事できるイメージが強いんだけどな。
とかそういう話をしてたら、
「あ、私はこっちだから」
と別れ道に着いたらしい。
「わかりました。ではまた学校で」
「えぇ。またね」
と小さく手を振って別れた。あれで襲ったりしなければいい先輩なんだけどなぁ…。
同じ頃。
「お嬢、例の旭祐斗とかいうやつはどうなりましたか?」
その言葉に、お嬢ーー春月桜は、
「はぅ……。祐斗先輩、今日もかっこよかった…」
頬を紅く染めてぽーっとしていた。
「お嬢?」
桜が呟いた言葉に驚いた男。
「あんな素晴らしい方を消すなんて私には無理だわ……」
男は唖然とした。と同時に
「(お嬢の学校で一体何が……?)」
と、疑問を浮かべるのだった。
「はぁ……。ねぇ亮」
不意に呼ばれた男ーー亮は、
「はい、お嬢」
「私、頑張って祐斗先輩を手に入れてみせるわ」
「…………は?」
と桜の言葉に固まるのだった。
アイギアスです。
今回は伊島先輩が久しぶりに登場しました。『なんか前と性格全然ちがくね!?』と思った方、はい、全然違いますね。自分でも思います。でも気にしたら負けです。
次も早いうちに更新したいな、と思っています。




