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十人兎色  作者: mia
1/1

 兎の招待状(前編)

 4月ーそれは、多くの人たちが新たな出会い、新生活をむかえ心躍らせるそんな月である。

なぜなら、俺も2週間前は、春からの高校2年生の生活の開始をとてもたのしみにしていた。しかし、そんな俺は現在進行形で始業式が行われている今、こうして学校の屋上で仰向けになっているのである。


 「っ・・くそっ!!なんで出ないんだよ!!」

苛立ちに任せて俺は、手に持っていた携帯を力強く閉じた。

 「もう、2週間だぞ・・・。」

そういいながら、体を起こす。

 杉原太一は、携帯をポケットに仕舞うと、立ち上がって体をおもいっきり伸ばした。

そして、小さな寂しさの残る声で呟いた、

「本当、どこ行っちまったんだよ・・・・雪菜。」

 その時、屋上の扉が力強く開け放たれ、というよりぶっ飛ばされて、同時に馬鹿みたいに大きな声が聞こえた。

「た~い~ちー!!こんなところで何してんのよ!!!!」

声の主を見た太一は、溜息まじりに答えた。

 「はぁ、お前こそ何やってんだ美咲!普通、扉を足で蹴り破くやつなんていねぇだろ!どうするんだよこれ!?」

 大声をあげて近づいてきた美咲は、悪びれる様子もなく続けた

「そんなのはいいの!それより、あんたどうして始業式出なかったのよ!!」

「お前には、関係ないだろ!!」

 すると美咲は、目を細めて言った

「あんたもしかして、まだユキのこと気にしてんの?」

 太一は、少し動揺した。

「ユキがいなくなったのは、あんたのせいじゃないって。警察に任せておけばいいのよ。」

「お前、よく平気でいられるな。幼馴染が、行方不明になっているっていうのに。」

「はぁ!?そんなわけないでしょ!!私だってユキのことが心配でたまらないわよ!!」

「なら、今の俺の気持ちだってわかるだろ!」

「私が言いたいのは、あんたがここでウジウジしていても、ユキは戻ってこないってこと。」

 太一は、少し顔を伏せ

「わかってるよ、そんなことくらい。なら、どうすればいいんだよ?どうしたら・・ユキは戻って来るんだよ?」

 「・・・・ごめん。」

「いや、俺も悪かったあんなこと言って。」

 「いやぁ~、落ち込んでるところ悪いんだけど、話終わった?」

屋上の入口から、一人の長身の長い髪の生徒が出てきた。

 「なんだ、陸いたのか。悪いが、遊びにならいかねぇぞ。今はそんな気分じゃないんでな。帰るは。」

すると、陸は微笑みながら言った、

「違うよ、イッチャン。さっきここに来る途中、担任の大分先生がイッチャンのこと探しててさ・・」

(はぁ、始業式さぼったから説教か。ダル。)

と思い、太一が頭をかくと、

 「何でも、警察が雪菜ちゃんの物と思われる携帯を見つけたから、本人のかどうか見てもらいたくて学校に電話してきたみたいだよ。」

 太一と美咲は同時に驚いたような顔になる。

 「陸、それ本当か?」

「あたりまえじゃん、俺がイッチャンに嘘をつくとでも。」

「だよな。よしっ、行くか!!」

 

 これが原因で俺達があんなことに巻き込まれるとは、このときは思いもしなかった。


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