二話:いやはや、こわっ
オレが転生して三年が過ぎた。
最初の頃はあまり意識がなく、元の世界の赤ん坊と同じように泣きわめいていたが、1年ぐらい経つと意識がしっかりしてきて、自分が思うように体を動かすことができるようになった。
この世界の人は元の世界と比べ成長速度が速い。そのため、オレは1才半ぐらいでしっかりと話せるようになった。まぁ、意識がしっかりしてきたというのもあるんだが……。
ちなみに言語は日本語。だが、文字は平仮名のような見たことのない文字だった。
そのため、オレはまず文字の読み書きをできるようにした。漢字のようなものとかがなく、平仮名のようなものだけだったため、比較的簡単に覚えることができた。
その後は、家に居る時は家にある本などを読んだりしていた。
ちなみにオレがこんなに自由に行動できたのは、両親から嫌われてるとか、ほっとかれているわけではない。むしろ好意的すぎて困っている。
俺の両親は、二人とも冒険者なのだ。しかも、上から二つ目のSSランクの。
そのため、強制依頼を受けて、やらなくてはいけなくなることがある。さすがに、俺が生まれてから一年半ぐらいは、強制なのに行かなかったが。
そ・れ・で・だ。大抵は一緒に連れていってもらって、母さんに実物を見ながら、野草のことを色々教えてもらったり、父さんに魔獣のことを教えてもらっていたりした。
その旅の途中のことだった。というより昨日のことなんだけど!
誘拐されちゃった えへっ。
うん、精神年齢が既に20近くなっている身としては、気持ち悪い。なんでこんなのこと言ったんだろう……………………。
さてと、どういうことかというと、普段住んでいる国、永久中立王国イクォルリーを出て、マグルナルス共和国のとある町についた。そして、母さんにお使いを頼まれて一人で街の特産品だというものを買いに行った。
そのときに、人ごみに紛れて首の後ろから一発どん!となにかで叩かれた。
その時に思ったのが、
人って首を後ろから思いっきり叩かれると気絶するのは、本当のことなんだということだった。
さて、気づいた
「おい、ガキが起きたぞ!」
まったく、読者に申し訳ないとは思わんのか!まだ説明しきれていないだろ!
気づいたらどこかの部屋にいた。オプションとして、猿轡と手首足首を縄で縛られて。俺は縛られて興奮する奴じゃあないのに……。
と、そんなことを考えていたら、いかにも、荒くれ者です!下衆です!と言えるような格好をした人達が俺の前にやって来た。
「おい、お前。命が惜しいなら黙って俺たちの言うことを聞いているんだ。そうすりゃあ、きちんと帰れるからよぉ。まぁあ、その時はお前らは全く金を持ってないだろうがなぁ。「「「「ぎゃハハハハハハ」」」」」
最後は全員できれいに、汚く笑う、下衆。
「おっと、両親とかが助けてくれると思わないほうがぁいいぞ。いくら高ランクのやつだろうが、人質がいる限りはただの人間だからな」
どうやら、オレの両親が高ランクの冒険者だと知ってのことらしい。
多分、街に入って宿屋へ向かったときに一緒にいたのを見られて、こんなことをしたんだろうなぁ。
はぁ、馬鹿だな。まったくもって、哀れみしか感じないよ。
オレは確かに手足も封じられてるし、口も封じられてる。いくら神様からいろんなものをもらってもこの状況じゃあなにもできないと思う。というより、オレはまだ習っただけで、何もできないんだけど。
でも、ねぇ~。
オレの両親は伝説のSSランクだぞ?しかも、オレはその両親の一人息子だぞ?
ああ、可哀想に……。多分死んだほうがマシなことが起きるんだろうなぁ。と、いうより以前似たようなことがあって、地獄を見た。
だから俺は忠告してやった。
「ウバブヴ(今すぐ)、ボエゴババジダボブバビビボ(オレを離したほうがいいぞ)」
しまった!猿轡されてるんだった!
「おい、何か言ってるぞ。黙らせるか」
そう言ってオレを真正面から殴る可哀想な人たち。まだ体が弱いオレはそれで気を失った。
あーあ。オレに傷を付けちゃって。本当にどうなるんだろうな。
気づいたら母さんの顔があった。
「ああ、ルシア!!やっと気づいたのね!!ほんと~うに心配したんだから!!」
そう言って俺を抱きしめ………………い……き……が………
そして、オレは気を 失わなかった。
危ない母さんがあと0.1秒抱きついていたら死ぬところだった……。
転生したあと母親によって殺されるってどんな存在だよ!
あ、遅くなったけどルシアってオレのことね。コルクルシア・ニーダルで、ルシア。
「ああ、ごめんね苦しかった?でもね、でもね。ルシアが無事だって分かって居ても経ってもいられなかったの」
ははは、母さんよ。だからって、持つの息子を殺しそうになるのはいかがなものか。
しっかし、今オレがいるのはまだ下衆に連れてこられた場所のようだ。どうしてわかるかというと、下に下衆1号の頭が見えるからだ。後ろからだから、顔に何かされたのどうかがわからない。というか知りたくない。こ、怖すぎる。
「あ、ルシア、こんな汚いものなんか見なくていいからね」
そうして、オレを抱き上げ視線を顔に固定する。
「あれ、疲れちゃったのかな?顔が青いわよ」
そういうわけじゃあないんだけど。
「じゃあ、おやすみ。彼の者を眠りへと誘え≪睡眠術≫」
そうして、オレは強制的に眠らされ、今日に至る。起きると父さんに話しかけられた。
「おはよう、ルシア。昨日は災難だったな。いや、というよりすまんな。いくらお前が他の子と比べしっかりしているとはいえ、まだお前は三才なんだよな。しっかりとすべきだった」
「ううん、僕のせいで余計なことさせちゃったんだから……」
どうやら、今オレは宿屋の部屋にいて、母さんは外に今回のことを報告しに行ったそうだ。
そうだ!この機会に色々と戦闘技術を教えてもらうか。
「おとうさん!僕わかっているんだよ!だって、もし僕が捕まらなかったら何も起きなかったんだよね!?」
「いや、そういうわけじゃあないんだが……」
「でも、でも、お父さんたちに迷惑をかけなかったんだよね?」
「迷惑だなんて「だから、教えて!また、あんなことが無いように僕、頑張るから!」
ふふふふふ、必殺幼児の可愛い泣き頼み!これに、断れる奴はいまい。
「仕方ない、お前がそこまで言うのならば母さんと相談して、剣の使い方とか魔法の使い方とか教えるかどうか決めるからな。今までいろいろと教えていたが、もしやることになったらただ覚えるだけじゃあないから難しいぞ!それでも、いいんだな?」
「うん!」
「わかった。言っとくが、俺の訓練は厳しいからな。とりあえず、母さんに会いに行くからここで待ってろよ」
「うん、わかった」
こうしてオレは、親からさらに色々なことを学ぶこととなった。
だから、その礎になった下衆共には感謝している。
そして、改めて思った。
両親が強すぎて怖い。
≪ ≫の中が魔法名です。
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