十七話:………お決まりなんて大嫌いだ!
どうも、お久し振りです。
遅くなりすぎ、すいませんでした。
「はぁ。まったくもってめんどくさいな……………」
思わず呟いてしまう程とてもめんどくさかった。
オレがいるのは学校―――――正式名称、国立アルブール王都学校――――の敷地内にある寮の一室だ。
何故、家が王都にあるのにわざわざ寮で暮らす事にしたのかは、些細な事なので置いておく。
「それは仕方ねぇーんじゃないのか?俺らのクラスには、色々と集まっているみたいだけどよぉ、それでも少しはぁ、一般人がいるからよぉ」
服を箪笥に入れながらラインが言った。
「だからと言って、既に冒険者ランクBのオレの様な奴にとっては暇すぎるよ、絶対に全授業出席しなければならないなんて……。はぁ」
思わずまた溜息がついてしまった。
そして、そう、そうなのだ。
オレはこの学校に入る時、つまらなそうな最初の方の授業は受けずに、サボろうと決めていた。
何故なら、オレにはほぼ完全記憶能力があるからだ。
それのおかげで、一度聞いた事は覚えていられるので二度聴く必要は無い。
あ、冒険者ランクB ってのは自慢でも何でもないぞ。才能持ってる奴だったらこの年で普通にそこに達しているとの事。
多分だが、オレが他の転生者達と比べると、オレは確実に劣っているだろう。
比較対象は父さん母さんが話してくれた転生者だけど。
オレが転生時に貰ったのは、
剣と魔法の才能
ほぼ完全記憶能力
そこそこの肉体
だ。
それに、四年前に貰った創造魔法のみ。
良いと思ってはいけない。
オレが貰ったモノは才能。
つまり、磨かなくては伸びないのだ。それに、この才能だって最強クラスの才能では無い。
オレは確かに全特化の万能型だが、もしも、他の人が得意属性としている属性の魔法を、込める魔力、言う言葉、環境等を同じにしてぶつけるとオレのが押し負けるだろう。
多分、得意属性が全部であるが故に、他の人の得意属性と比べると威力を増大させる値が違うのだろう。
そして、創造魔法。
これは、使えなさすぎる。
魔力を大量に使うからだ。
あの当時のオレの魔力だと、純金一立方センチメートル出して魔力がほぼ無くなる程。
とても、銃や剣、刀等は出せやしない。
なんで純金かだって?当時は少しでも金が欲しかったからさ。
って、話ずれ過ぎだろ!?オレ!?
え~っと。何の話だっけ?
と、なぜか急に水が目の前から現れてきて、
「ぶふっ!」
オレの顔にぶつかった。
すぐに、魔力から変化した水は、元の魔力になったためもう顔とかは濡れてなく被害は0だが、ちょっと驚いて変な声が出てしまった。
「やっと戻ってきた?おにいちゃん?」
その声の方向をみると、おにいちゃんという部分に、なんか変な感情を込めた正妹たるリヴリール――――通称、リヴ――――が腕を組んでこっちを見ていた。どっちかっていうと嫌悪する感じの目で。
でも、オレは気に掛けない。
なぜなら!なぜなら!ついにリヴがおにいちゃんと言ってくれたからだ!
それがどうしたと言う人がいるかもしれない。
だが、幼い頃は普通に、
「おにいちゃん」
と呼んできてくれていたのに最近は
「兄さん」
になってしまったのだ!
まったく持って時なんて止まっちまえばいいのに………!
「今度は雷が良い?」
右手に雷を纏わせてじっと見てくるリヴ。
じっと見てきてくれてる………。ちょっと感「ドッ!!」
低威力だが目を覚ますのには些か強すぎる雷が……。
さて、真面目にやろうか。何をとか突っ込んじゃあいけないよ。
「で、どうかしたのか?リヴ?」
わざわざ水とかかけてきたって事は何か言いたい事があるって事だろ?
「おにいちゃん。リヴはきっと休まないよねって言いたいんだよ。ねっ?」
虹色の髪を綺麗に光らせたククルーが、何故か言わなかったリヴの代わりに答える。
「なるほどなるほど」
だが、
「ライン兄さんは出るって言ってたけど……?」
えっ!?
リンが言ったことに固まる、オレ。思わずラインの方を見るが、
「まぁ、おれは授業中寝て過ごすつもりだけどなぁ。でねぇといけねえんだったらしゃーないだろ」
なん、だって………。
今の段階でオレの友人は数少ないってのに、その友人に裏切られるとは………。
「だってよぉ、ルシア。最初の一年をさぼった時のはきついぜ。色々禁止されるしさぁ」
まぁ、仕方ないか。俺もあきらめて授業中にすることを考えようか。
「とりあえず、部屋の片付けはどっちも大体終わったし、本日の練習でもしに行くか?」
と提案した時、
コン、コン。
というノックの音が聞こえた。
そして、
「少々よろしいでしょうか?」
とドアの向こうから聞き覚えがある声が聞こえてきた。誰の声だっけ?
というより何がよろしいのかをしっかり伝えましょうよ。まぁ、大体わかるけどさ。
すぐには思い出せないので入ってきてもらうことにする。
「いーよ」
という許可の声に魔力を込め、ドアを開けるような魔法を使う。と、同時に振り返り、内開きのドアが開いてく様を見る。
その間に「ちょ、おい!」とか「何やってるの?!」とか言われたのは何故だ?リヴとかいるけど四人部屋だから広さ的には大丈夫だろ。まぁ、未だ床にすぐには入れられないものとかあるけどさ。
答えはすぐにわかった。
オレが魔法で開けたドアの向こうにいたのはティアライト・アルブール・イクォリティー、つまり、この国の第二王女様だった。
何故?ホントーにif。えっなんで?何でオレの所に来る必要があるの?いや、違うかも。もしかしたら、リヴとかリンとかラインとかに用があるのかも……しれない。
『もしかして、みんな判ってたからそんな反応したの?』
共鳴声を使って聞いてみる。
『まぁ、その通りだな』
『上に同じく』
『ライン兄さんと同じく』
『えーと、そういうことなの、お兄ちゃん』
帰ってきたのは肯定の嵐。
『気づいてたなら言ってもよかったんじゃん』
『………兄さんが私達が何か言う前に答えたからから、何も言えなかったのよ?』
はい、すいません。
王女は最初、人がオレとライン以外にいることに驚いていたようだった。
「えーっと、何か御用でしょうか?」
未だに使い慣れない敬語を何とか駆使して問う。相手は王女なのだ。失礼な真似は出来ない。
「ええっーとー、その、できるだけ大勢の人に話したくないのですが」
つまり、リヴ達をここから出してもらいたいと。おっ。何か後ろの人たちがむっとした気がする。彼女達が何か言う前に、
「大丈夫です。彼女達は信頼できますよ」
と言うと、その言葉になんか反応したように
「あっ」と一言漏らし
「別に無理して敬語を使わなくてもいいですよ。今私達は同級生なのですから」
来た来たきたー!よく在るものが来ましたよー!
?解らない?よくあるパターンだよ。
地位が上の人「敬語使わなくて良いですよ」
主人公とか「そういうわけにはいきませんよ」
地位が上の人「じゃあ命令です。敬語使わないこと」
主人公とか「だったら仕方ないなぁ」
とかいうパターン!そして仲良くなっていき…………。解るよね?
つまり、地位が上の人ルートだ。
なんとしても、このパターンは避けねば!
だってさ、父さんが話したりしてくれたのとか、噂を聞いている限りこの国の国王は自分の娘達に相当入れ込んでいるらしい。母さんのオレに対するのと同じぐらいのレベルで。
だから、危険なんだ。
もしも本当に仲良くなっていってみろ。
国王直々に、娘にふさわしいか勝負だ!とか言ってきそう。
オレの目標は転生者っぽくない転生者になることだ。まぁ、そんな事、今まで生きてきて出来たことはないけどさ。
まぁとにかく、がんばって上の様にならないようにしよう。
結論を言う。
転生者は“お決まり”から逃れられないようだ。
はぁ。
意見とか感想とかアドバイスをもらえるとありがたいです。