十一話:外伝壱・鬼ヶ島でⅡ 鬼皇帝との闘い
前回に引き続き、外伝です。
一日で、まさかの1000pvオーバーを前回投稿時に達成しました。
読んでくださった方、お気に入り登録を新たにしてくれた方、ありがとうございます。
「≪武器召喚≫!」
ガキン!
剣を呼び出し、普通ならば目に見えぬ速度で切りかかった鬼の一撃を受け止める、ラルベルク。
しかし、鬼には剣が二本ある。右手の攻撃を剣を横にして両手で受け止めたため、左から来る横薙ぎの攻撃は防げようがない。大剣は鬼皇帝の剛力のため動かせない。
しかし、剣は当たる寸前
ゴキン!
という硬いものを叩いた音を発し、止まった。
「我は彼の者と共に在る者也。我の祈りと愛を彼の者に。≪がんばって、あなた≫」
リリシアによる補助魔法により、ラルベルクの身体能力が底上げされる。
普通、身体強化の魔法等の補助魔法は、個人が自分に使うものだ。そうしなければ、自分の魔力と補助魔法をかけた者の魔力が相克しようとし、使用された者の肉体が爆発する等影響が起きる。
しかし、リリシアの様な超一流とも言える魔法使いは相克が起きないように補助魔法を使うことができる。と、いうよりその程度の事ができなければ、超一流は名乗れない。
そうして、補助魔法をかけてもらったラルベルクは、大剣を押し、剣を弾き飛ばそうとする。
しかし、そうはさせじとその勢いを利用し後ろに下がる鬼。
「まさか、無詠唱であれほど強力な防御魔法を出せるとは……。それに、そちら側に注意を払ったまま」
鬼が何かを詠唱中のリリシアの方を見て言う。
その周りでは、ケンが魔骸物鬼が振り回した獣の腕を避け、新たに呼び出した短剣で切ったり、プロールドがリリシアに向かって振るわれた拳を、盾で防いだりしている。
「俺の自慢のかみさんだからな」
そう言い、鬼が見ている間に唱えた身体強化魔法によって、さらに力が増した一撃を叩き込む。
それを交差した剣で受け止め、
「それは良かった」
な、の所で押す。
しかし、ラルベルクも押し、均衡状態が続く。
「なるほど。力は同じ程度か。これは思っていたよりきつい戦いななりそうだな」
「だったら、もっと≪召喚≫(呼べ)ばどうだ?」
「残念ながらそれはできん。俺としても、やらなくてはならんことがあるため、この様な自らの命がかかるような真似をしたくは無かったのだが、生憎と俺のさっきの魔力量だと二躰呼び出すのが限界だ。完全な状態ならば、戦いの時に自分で使う分を除くと、もう2躰程≪召喚≫でき(出せ)たがな」
「なら、感謝しとくべきか?お前が全力を出せず、俺たちが全力を出せるこの事態を」
「さあ、な!!」
両者が一斉に力強く押し、離れる。
そして、間にある空間に雷の龍が生まれ、鬼に向かっていく。その速度は、亜音速に届きそうなほどだ。
『廻れ』
しかし、当たる前に右に逸れていき、遂には反転してラルベルクの方を襲う。
が、当たる前に消える。
その後ろから炎が顕れ、今度はそれがラルベルクを襲う。
ブン、と風切り音を鳴らせ、ラルベルクは目の前まで迫ったその炎を切る。そうする事で、炎は消える。
そして、勢い良く後ろに吹き飛び、壁にぶつかる。
「が、はぁっ!!!」
そして、その声と同時に大剣が地に落ちる。
炎に気を取られ、その炎のすぐ後ろにいた鬼により吹き飛ばされたのだ。いくらSSランクの超人といえど、光速に近い速さで迫ってくる者の攻撃を避ける事は、ほとんど不可能だ。
思わず咳き込むラルベルク。どうやら、体の内部が傷ついたらしく、その口からは少量の血が見える。
しかし、その程度の怪我で済んだ事が奇跡だ。並みの者ならば、触れた時点で破裂し、辺り一面に血や臓物をまき散らしていただろう。
それほどの攻撃を受けたのに、全く歪みも折れも傷もつかない鎧のおかげか、若しくは身体のおかげか。はたまた、両方か。
しかし、
「ところで、質問をして良いだろうか?いや、勝手にさせてもらうがな。
お前らは異邦人というものがどういうものか知っているのだろう?
知ってのとおり、異なる世界からの旅人だ」
鬼皇帝は、悠々と話す。何故なら、彼の邪魔をする者はいないからだ。
今、ケンとプロールドは魔骸物鬼の猛攻を凌いでおり、リリシアはそれの手伝いとラルベルクの傷を治すための魔法の詠唱をしている。
そして、先程まで相対していたラルベルクは、未だ満足に動けていない振りをする。
本当ならば動けるが、その調子だと大剣を拾い、打ち合ってもすぐにやられるだけだと感じているため、動かない。そして、聞く。
絶望を感じさせるために、彼は言う。
「異なる世界の者は、この世界にはない事柄を知っている。
その事を忘れたわけではなかろう。
しかし、大抵はモノが無かったり、技術が足りなかったりで出来ない。
ところで、やっとだがここで質問だ。
何か異常は感じないか?
例えば、眠い。例えば、体が動きにくい。
例えば、……………体が生暖かい。
…………………………とかは?」
「はぁ!?何言ってんだ!?そんな事あるゎ」「ケン!呼吸を止めろ!!」
戦闘を中断し、鬼皇帝の方を思わず見たケンに、何か判ったのかラルベルクが大声で忠告する。
しかし、時は既に遅く…………ケンは倒れ込む。
ドタァという音が一つ。
「「ケン!!」」
プロールドとラルベルクが呼ぶ。しかし、反応はしない。
一躰の魔骸物鬼が戦闘を中断し、彼を抱え込む。そうして、後ろ、玉座の方へと近寄っていく。
プロールドが彼の元に行こうとするが、そもそも離れて戦っていたのである。
間に合う訳がない。それに加え、もう一躰の魔骸物鬼が邪魔をしてくる。
リリシアを狙っているため、行くに行けない。
そして、彼女はケンが倒れる直前に、回復魔法+αをラルベルクにかけたが、詠唱途中といえど、何が起こっていたかを正確に理解している。そのため、魔法を発動しようとするが、
「なっ!何故!?なんで、魔法が、発動しないの!?」
魔法は全て無意味と化す。
「まぁ、解説は大事だな。いいから黙って、聞いておけ。
どうして、こうなったかを詳しく説明してやる」
魔骸物鬼がケンを玉座の近くへ投げ捨てる。
「さて、教えてやろう」
意見とか感想とかアドバイスをもらえるとありがたいです。
先に予告しておきます。
次話の一部は非常に読みにくいです。