狼少年と嘘吐き少女
ほら、また君の笑顔が凍りつく。僕が嘘を言うから。僕が笑いながら嘘を吐くから。僕が嘘吐きだから。僕が狼少年だから。
「この前ね、魔女に会ったんだ。お菓子の家の魔女にね。凄い恐かったんだよ」
「・・・・・・そう」
どうしようもなく悲しい。そんな表情を顔面に飾りながら、君は笑う。そんな顔が、僕は世界で一番嫌い。
だけど、それでも僕は嘘を吐く。
「凄く恐ろしい奴だったんだよ。だけどね、全然恐くなかったんだよ」
「さっき恐かったって言ったわ」
知ってるよ、自分で言ったんだから。それくらい分かってる。
「・・・・・・僕は魔女に捕まったんだけど、妹が助けてくれたんだよ」
「妹なんていないでしょう?」
僕は、にこり、と笑ってみせる。君は、泣きそうになりながら笑い返す。
「そう、その通りだね、うん。・・・・・・それよりさ、体は平気?」
「ええ。すっかり良くなったわ」
嗚呼、君は気付いてる?自分の顔が、今どれだけ醜いか、知ってる?泣きそうなのに、笑ってる。馬鹿みたい。
その言葉が嘘だと、僕は知ってるよ。君が、僕に嘘を吐いてることは知ってるよ。知ってるんだ。
「本当に?」
「ええ、後少ししたら、歩けるようになるって」
ねぇ、君は知ってる?その、『あと少し』が何回目か。僕は、数えるのを諦めたよ、とっくの昔に。
「じゃぁさ、歩けるようになったら、僕の家においでよ。母さんも、父さんも喜ぶよ、きっと」
また、君の顔は僕の大嫌いな顔になる。
「お父さんとお母さんなんて、いないでしょう?」
「何言ってるの?あ、妹もきっと喜ぶよ」
その顔がなければ、とっても幸せな筈なのに。
「何で、何で嘘ばかり吐くの?」
「偽りこそが、本当の優しさ。真実こそが、この世で最も残酷だ」
「え・・・・・・?」
君の間抜け面を見下ろして、僕は笑ってみせる。
「君が言ったんだ」
「そんなこと、言ってないわ」
ああそうさ、君は言ってない。
「でも、そう思ってるだろ?だから、僕に嘘を吐くんだろう?」
「なん、のこと?」
まだ、嘘を吐くのかい。君は、嘘を嫌うのに。滑稽だね。
「君は、後数ヶ月で死ぬんだ。そうだろう?君の病気は治らないんだ。知ってるよ。ずっと、ずっと前から」
「なんで・・・・・・」
嘘がばれるのは、そんなに恐いこと?
「嘘を吐くなとは言わないよ。けれど、嘘で姿を隠されてしまうのは、とても寂しい。君は、知ってるだろ?」
「ねぇ、僕らに残された時間は残り僅かだ。だけど、後数ヶ月位は、素直に生きてみない?」
結局自分は何が言いたかったのでしょうか;