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エピローグ


 3月下旬。春休みも終盤に差し掛かったある日、俺は大学に向かうため部屋を出た。カバンの中でドアの鍵を探っていると、隣の部屋のドアが開いた。

 中から出てきた人物に、俺は声をかける。


「おはようございます、南羽さん」

「真北くん、おはよう」


 ジーンズと薄手の長袖シャツに身を包んだ南羽さんだった。



 アパートの階段に、ふたり分の声が弾むように響く。


「南羽さんも、今からどこか行くんですか」

「うん、2年から始まる必修講義に向けて、友達と一緒にフィールドワークみたいなことしよって約束してるの。真北くんは?」

「俺も・・・・・・課題のレポート一緒にやらないかって、友達に誘われてて、今から学校へ」

「それ、伊波くんって人?」

「当たりです。一緒にやるっていうか、助けてくれみたいなニュアンスでした」



 自転車置き場から自転車を引っ張り出して、先に待っていた南羽さんの元へと向かう。 


「じゃあ、真北くん。がんばってね」

「南羽さんも。あ、あと」


 ペダルをこぎ出そうとする彼女に声をかけた。不思議そうな顔で振り向く南羽さんに、俺は笑って問いかける。


「お互い用事が終わったら、夜ごはん、一緒に食べませんか?」


 彼女の顔が、花が咲いたように明るくなる。


「いいね、行きたいとこいっぱいあるから、探しとく! またメッセージ入れるね」

「はい、俺も考えておきます」

「うん、じゃあ、またあとでね!」

「はい、気をつけて」


 アパートの前で手を振って分かれ、俺は学校へ、南羽さんは駅へ、それぞれに走り出した。

 自転車を漕ぐ俺を、少しあたたかい春風がやわらかく包み込む。


 南羽さんと出会って、もうすぐ1年が経とうとしていた。

 付き合っているわけでも、いつも一緒にいるわけでもないけれど、ふとした瞬間に会いたくなって、何でもないことを話したくなる。


 ――キミは、いちばん近くの異性のともだち。


(了)

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