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南羽さんのバースデー(5)


「いい帰省になったみたいで、何よりですよ」


 俺の話を楽しそうに聞いていた南羽さんが満足げにうなずいた。顔の前で手を合わせ、「ごちそうさまでした」とつぶやく。

 ふたりで作ったシチューはおいしくて、南羽さんも納得の出来だった。ふたりでキッチンへ食器を運び、並んで洗い物と片付けを済ませる。手を動かしながら、南羽さんの帰省話を聞いた。元日の夕方に海辺まで行って、初日の出ならぬ初日没を見たのだとか、ヨウちゃんさんが今年めでたく結婚するのだとか、そういう、なんというか南羽さんらしい話。


「さて。何のゲーム、しよっか。真北くん、どんなの持ってるの?」


 ソファに腰掛けた南羽さんが、自分のゲーム機に手を伸ばして言った。


「そのことなんですけど、南羽さん、これ」


 俺は準備していたあるものを、南羽さんの前に差し出した。薄い封筒が一枚。中にはあるカードが入っている。

 カチカチとホーム画面を操作していた手を止めて、南羽さんが不思議そうな顔で受け取った。封を開けて中身を取りだした南羽さんの顔が、徐々に明るくなっていく。


「真北くん、これ」

「お誕生日、おめでとうございます。俺からのプレゼントです」


 俺が南羽さんに用意したのは、ゲームソフトのギフトカードだった。シリアルナンバーがカードに印字されていて、それをゲーム機本体から入力することで購入済のソフトをダウンロードできるようになる、というものだ。

 俺が選んだソフトは、マルチプレイ対応の3Dアクションゲームだった。キャラクターを操作してステージをクリアし、最終的にはさらわれたお姫様を助け出す――というもの。主人公だけを操作して遊ぶひとりモードと、主人公とその武器にわかれてふたりで遊ぶモードがある。年末にみんなで遊んで、リンちゃんからもオススメされたものだった。

 今まで、ゲームはひとりでできるものばかりプレイしていた。それでも楽しいが、誰かとなら、もっと楽しい。それが好きな相手や大切な友達なら、なおさら。

 俺は年末の帰省でそんなことを改めて考えた結果、南羽さんと一緒にやりたい、そう思ったのだった。


「負けないからね」


 ソフトのダウンロードが終わるのを待って、南羽さんが言う。


「これ、協力ゲーなんで、そういうのじゃないです」


 俺のツッコミに、彼女はアハハと声を上げて笑った。




「・・・・・・た、倒せた~!!」


 水中ステージの中ボスが消滅していくエフェクトを見届けて、南羽さんが感極まったように声を上げる。俺も全身に入っていた力が抜けていくのを感じた。初プレイなのと高難易度設定にしたおかげで簡単には進まなかったが、クリアできないもどかしさより、ふたりで協力している楽しさの方が勝っていた。


「もう夜だね」


 南羽さんが窓の方を見て言った。時間的には17時を少し回ったところだが、外はすっかり陽も落ちて暗くなっている。


「お腹もすきましたね」


 飲み物以外口にせず、俺たちはゲームに没頭していた。用意していたケーキを食べることすらも忘れて。

 コントローラーをテーブルの上に置いて、南羽さんが嬉しそうに言う。


「お昼のシチュー余ってるから、アレンジして食べられるよ。グラタンでも、リゾットでも、シチューうどんでも!」


 最後に聞こえた気になりすぎるメニューに、思わず反応してしまう。


「ははっ、シチューうどんって」

「結構いけるよ? 和風カルボナーラみたいで」


 立ち上がった南羽さんが大きく伸びをする。


「ごはんとケーキ食べたらさ、続きやろうよ。このステージ、クリアするとこまで。真北くんとならできる気がする」


 そう言って、疲れを知らない子どものように目を輝かせる。気に入ってくれたみたいで良かった。南羽さんが俺と同じ気持ちでいてくれたことが嬉しかった。

 俺もここまでのデータを一旦セーブして、コントローラーを置く。


 テーブルの上には、色違いのコントローラーがふたつ並んでいる。

 南羽さんの誕生日は、まだもう少しだけ続きそうだ。


to be continued...

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