表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/61

ビワハクへ行こう!(2)


「満員電車って、苦手?」


 草津駅前のバスロータリー。備え付けのベンチに座り肩で息をする俺に向かって、南羽さんが心配そうな顔をする。


「ちょっと、今まで経験したことがなかったので・・・・・・」


 俺は心配をかけまいと、先ほど近くの自販機で買った水をぐいっと飲んだ。冷たい水が体に染み渡っていく。本当なら頭からかぶってしまいたいし、一緒にいるのが地元の連中ならそうしているところだが、今隣にいるのは、会ったばかりの女の子だ。できるわけがなかった。

 南羽さんは俺の顔に生気が戻ってきたのをみて安心したのか、バス停に掲げられた時刻表を見るために立ち上がった。

 しげしげと眺めた後で、「あと10分くらいで来るみたい~」と、こちらを振り返ってにっこり笑う。

 顔を上げた俺の視界には春先の青空が広がっていた。綿菓子のような雲の切れ間からのぞく陽光に、俺は思わず目を細めた。


 ほどなくして、バスが到着した。

 バスの(ひたい)部分、とでも言うのだろうか。そこには『琵琶湖博物館ゆき』とでかでかと表示されていた。

 南羽さんの後に続くようにしてバスに乗り込む。電車とは違って人は少なく、安堵する。「窓際、行く?」と南羽さんが気を遣ってくれたが、これだけゆとりがあれば大丈夫だ。

 田んぼばかりの道を、バスは軽快に走り抜けていく。なんだか安心するなと思いながら、その風景をぼけーっと見ていた。


「ね、真北くん」


 ちょいちょい、と横から南羽さんが俺の服の裾を引っ張った。そちらに目をやると、南羽さんが嬉しそうな顔でスマホを見せ付けてくる。

 画面に映っていたのは、茶色に黒の斑点模様のついた、トカゲのような・・・・・・いきもの?


「なんですか、これ」


 俺の質問に、南羽さんは声を抑えながらも興奮した面持ちで言う。


「オオサンショウウオだよ、オオサンショウウオ! 世界最大級の両生類! ビワハクにいるんだって!」


 ビワハク、というのは、今から行く『滋賀県立琵琶湖博物館』の愛称だそうだ。南羽さんは滋賀県出身でもないのに、その呼び名を自然に口にする。

 両生類ってことは、やっぱりトカゲか何かの仲間なのかな。南羽さんがそこに食いつくというのは、少し意外だった。なんとなく、花とかを見て喜びそうなイメージだったから。この分だと、水槽の中を泳ぐ魚を見て「おいしそう」とか言うんじゃないだろうか。


 20分ほどで、目的地に到着した。バスを降りた俺たちの目の前に、博物館の入り口が現れる。

 思ったより、大きい建物だった。その感想は、中に入ってさらに強くなった。

 エントランスを進んだ先、中央のホール部分は吹き抜けのようになっていて、2階にも展示室があるらしかった。奥のガラス張りの大きな窓からは明るく光が差し込み、その奥には琵琶湖が広がっている。パンフレットによると、滋賀県の文化や生き物たちの生態、琵琶湖の歴史なんかを広く展示しているらしかった。

 館内の案内図とにらめっこしている南羽さんに俺は聞く。


「この先の通路をまっすぐ下りて行ったら、水の生き物のコーナーみたいですけど。そこから行きますか?」


 南羽さんは一瞬目を輝かせたあとで、うーんと唸る。


「一応、順路って書いてあるし・・・・・・こっちから行こ」


 そう言って、そばにあるエスカレーターを指差した。

 南羽さんは、好きなものは最後に取っておく派なのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ