雨の日にはラーメンを(7)
店を出て、少し雨脚の弱くなった中を、再び並んで歩き出す。外はすっかり日も落ちて、街の明かりがひときわ目立って見えた。
「ねぇ、真北くんが最近方言で喋ったのっていつ?」
「そう・・・・・・ですね、京都に来てからは、話してないかもしれません。地元の友達とか、気を遣わない相手にしか使わないので」
方言トークは鉄板ネタのようで、結構話が弾んだ。ある種のカルチャーショックみたいなものなのだろう。
小川通りを北へ上り、二条通りと交わるところまでやってきた。俺のアパートは、この道を東に行ったところにある。
「それじゃ、真北くん、ここで――」
足を止めて手を振りかけた南羽さんの言葉を遮るように、俺はそのまま小川通りを北へ向かって進む。
「ほら、はやく行きますよ」
南羽さんを振り返ると、街灯の下、彼女は立ち止まったまま目を丸くして、「え、でも・・・・・・」と口を開きかけた。
「気にしないでください」
俺はそう言ってから、なんとなく思うところがあって、きゅっと軽く口を結んだ。続けようと思った言葉がのどの奥で止まり、かわりにうすいため息が漏れる。
口にするのがずいぶん久しぶりなような、懐かしくてあたたかい言葉。気を遣わない相手にしか使わなかった言葉。
少し気恥ずかしさもあり、俺は目をそらしながら彼女に言った。
「危ねぇから、送ってぐよ」
ちら、と南羽さんを盗み見る。今度は聞き取れて、意味もなんとなく分かったらしく、南羽さんの顔がみるみる笑顔になっていく。そのまま跳ねるような足取りで俺の隣に並ぶと、
「雨、止んだね」
と傘の中から夜空を見上げて言った。俺も傘を少しずらして顔を出す。うすく広がる雲の間に、ところどころ小さな光がきらめいている。
俺と南羽さんは傘を閉じると、再び歩き出した。土日は何をする予定だとか、次はいつどこに出掛けようかとか、そういう話で盛り上がる。
ふたりの距離は、傘を閉じた分、ほんの少し縮まっていた。
to be continued...




