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動物園と友達(4)


 今日も、学食の混み具合は尋常ではなかった。

 ゴールデンウィーク明けで久しぶりに見るから、というのもあるだろうが、いつにも増して人が多いように思う。休み明けの学生は皆――俺も含めて――どこか浮き足立っていて、聞こえてくる話し声も大きい。どこに出掛けてきたとか、ずっとバイトだったとか、研究室から一歩もでていないとか、多種多様な会話があちこちで飛び交っている。

 こういうときは、ひとりだと楽でいいなと思う。ふいに空いたひとりぶんの空席に運良く座り、俺は静かに冷麺をすする。まだ夏には早いが、十分暑くなってきたからということで、今週から始まったメニューらしい。


 顔を上げた先に、見慣れた顔があった。いつもの友達と楽しそうに話す南羽さんの顔は今日も朗らかだった。

 このあとも講義のようで、友達とともに、がたがたと席を立つ素振りを見せる。何気なくこちらに視線を流した南羽さんと、ぱち、と目があった。

 一瞬、あ、という顔をした南羽さんは、そのまま手を振ってくるかなという予想に反し、小走りで駆け寄ってきた。脇には小さな箱を抱えている。


「おはよう、真北くん!」


 もう昼だが、業界人のような挨拶をする南羽さんに、俺も同じように返す。


「動物園、行ってきたんだけどね!」


 今はあまりゆっくり話す時間がなくてと残念がりながら、小脇に抱えた箱の中をゴソゴソと探る。「あった!」と表情を明るくすると、取り出したものを俺の目の前に置いた。


 まんまるの形に、三角形がふたつ付いたクッキー。


「会えてよかった。これお土産! 真北くんっぽいかなって」


 本当はボブキャットの方が近いんだけど、マヌルネコしかラインナップに無くて、と南羽さんが付け加える。聞き慣れない単語が並んでいたが、おそらく猫的な何か、ということなのだろう。そう言われると猫の顔が描かれているようだが、目らしき部分は下半分だけの月のような形をしている。

 じゃあ、と戻ろうとする南羽さんを呼び止める。少し意外そうな、驚いたような顔をして、南羽さんが振り向いた。


「どうかした?」

「あの、俺もあるんです。お土産」


 かばんの内ポケットから取り出した小さな包み紙を南羽さんに手渡すと、彼女はきょとんとした顔でそれを見つめていた。


「南羽さん? あとで、落ち着いてから見てくれればいいですから」


 俺の言葉に彼女ははっと表情を変え、「あとで見るね、ありがと!」と言ってぱたぱたと友達のほうへ戻っていった。

 彼女を見送って、残りの冷麺を急いで食べる。俺も、3限目の講義があるのだ。


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