動物園と友達(3)
ゴールデンウィーク最終日。
鴨川を越えた先にある『京都市動物園』の前に俺はいた。南羽さんとの電話のあと、いろいろと調べる中で、京都市にも動物園があったのかと興味を引かれたからだった。それに、その近くにある美術館にも行ってみたかったのでちょうどよかった。
昨日と一昨日はあいにくの雨で、俺は仕方なく自宅にこもりきりの時間を過ごしていた。今日は打って変わって快晴で、ふりそそぐ日光は少し暑いぐらいだった。
750円という、意外と安い金額を払って入場ゲートをくぐる。パンフレットに沿って、近くのトラ舎から見て回ることにした。
京都市動物園はそこそこの街中にあるため全体的にコンパクトではあったが、なかなかに見ごたえがあった。ライオンやゾウ、キリンといったスター動物もいたし、鳥や小動物、爬虫類なども飼育されていた。テンジクネズミに触れる部屋や、柵の中に入ってヒツジやヤギと触れ合える場所もあって、小さい子供連れの家族を中心に賑わっていた。
動物園の中心に位置する辺りに、サル山があった。十数匹のサルが自由に柵の内側で過ごしていて、走り回ったり、座って毛繕いをしたりしている。
「あれ、グルーミングって言うんだよ」
隣にいたカップルの彼氏がサルを指差して、彼女に説明するのが聞こえてきた。サル山の真ん中あたりに2匹のサルが座っていて、片方がもう片方の背中や前足をしきりに探るような仕草を見せている。
「お互いにスキンシップをとって、親愛を深めてるんだって。1年の時の講義で習った」
その口ぶりから察するに、どうやら彼は俺と同じぐらいの大学生らしい。
俺は隣の霊長類舎にも行ってみた。そこにはチンパンジーやゴリラがいて、ちょうどエサの時間だったのか、目の前に積まれた葉っぱを一心不乱に食べているところだった。しばらく見ていると、少し離れた別の個体のもとへ、自分が食べている葉っぱの一部を引きずって持っていくような行動をとった。家族なのか仲間なのかは分からないが、他者に何かを分け与えるような仕草は、人間がするものとよく似ていた。チンパンジーやゴリラは人間に最も近いと言われている動物であるから、もしかすると彼らにも感情に似た心の働きがあるのかもしれない。そういえば、先ほどのサルにしても、他者に何かをすることで互いの親密さを高めようとする姿はとても人間らしかった。
動物の様子をじっくり見るのは初めてだったが、結構おもしろいものだった。彼らはこちらが理解できる言葉を話さないし、何を考えているのかわからない行動をとることもあったが、その不明瞭さが魅力でもあった。草を食み、水を浴びて、時々むくりと体を起こしては再び横になる。まるで、ただそこに『いる』ことに意味があるとでも言うように。
《なんか、いいね。・・・・・・生きてるって感じ!》
琵琶湖博物館で南羽さんが言った言葉が、今なら少し分かるような気がした。
出口のゲートの手前に、ちょっとしたお土産のコーナーがあった。せっかくなので少し覗いてみる。オリジナルクッキーや、園内にいる動物のぬいぐるみや文房具などが並べられている。
先にいた集団が棚の前からいなくなるのを待って、俺はある商品に手を伸ばした。
・・・・・・これ、喜んでくれるかな。
少し迷ったが、俺はその商品だけを持って、会計の列に並んだ。




