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今日のフェーヴは誰のもの?  作者: 宝月 蓮
ほんの少しだけ変わる勇気
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2

 その日の放課後、レアは植物研究室で趣味である花の品種改良をしていた。

(カラフルな薔薇を作ることは難しいけれど、一輪で二色くらいなら……)

 レアは薔薇の品種改良について考えているようだ。


 薔薇はナルフェック王国の国花であり、王族や国内貴族、そして大多数の国民から愛されている花だ。

 レアが一番好きな花でもある。


「少し失礼するよ」

 その時、レアがいた部屋に何者かが入って来た。

 その人物を見て、レアはブラウンの目を大きく見開く。


 ブロンドの髪にサファイアのような青い目。パッと目を引く華のある顔立ち。

 トゥアール公爵令息ベルナールである。


(嘘……!?)

 憧れていたベルナールが目の前にいることに驚愕しているレア。

「植物研究室に保管されている、薔薇に関する論文を借りたいのだけれど、君、どこにあるか分かるかい?」

「えっと、こちらです」

 紳士的で落ち着いた態度のベルナールに、レアは緊張しながら論文が保管されている場所に案内する。

「ありがとう。助かったよ。父上が薔薇の品種改良の事業を始めようと準備をしていてね。僕はその手の知識があまりないから、これから時々論文を借りに行くことがあると思う」

「左様で……ございますか」

 緊張で少し声が震えてしまうレアだ。


 トゥアール公爵領は薔薇の栽培が盛んである。国内の薔薇生産量がトップなのだ。


「ん……? この薔薇は……!?」

 ベルナールが植物研究室を出ようとした時、とある薔薇が彼の目に留まった。

「あ、それは……!」

 レアは思わず拳をギュッと握る。

(わたくし)が改良途中の薔薇でございます」

 深呼吸をし、震える声を必死に振り絞った。

「君が……!」

 ベルナールは驚いたようにサファイアの目を大きく見開いている。

 そして再びレアの元に近付く。

「凄い……! 素晴らしい知識を持つ方がいただなんて……! 君、名前を教えて欲しい。あ、まずは僕から名乗るのがマナーだね。僕はトゥアール公爵家長男、ベルナール・エドメ・ド・トゥアールだ」

「えっと……シャティヨン伯爵家次女、レア・マチルド・ド・シャティヨンと申します」

 レアには何が起こっているのか分からなかったが、言われるがまま自己紹介をしていた。

「レア嬢か。今後、君の都合が合うのなら、薔薇の品種改良について色々と話を聞かせて欲しいんだ。良いだろうか?」

 ベルナールのサファイアの目はワクワクとした様子である。

 美しい顔に見つめられてレアが気を失いそうだったが、何とか耐えていた。

「その……(わたくし)などでよろしければ……」

「ありがとう、レア嬢。よろしく頼むよ」

 ベルナールは明るい表情でそう言い、論文を持って植物研究室を後にするのであった。


((わたくし)……ベルナール様と……)

 レアはしばらく放心状態だった。

 しかし、先程のベルナールとの会話を思い出し仰天する。

(わたくし)、どうしたら良いの!?」

 レアは慌てて植物研究室内にある別の部屋に向かう。

「レア様?」

「そんなに慌ててどうかなさったのです?」

 レアが向かった先の部屋には、ミラベルとルフィーナがいた。

「ミラベル様……ルフィーナ様……! 実は……!」

 レアは先程のベルナールとのやり取りをミラベルとルフィーナに話す。

 すると、二人の表情がパアッと明るくなる。

「レア様、良いことがあったわね」

「凄いですわ。フェーヴの効果ですわね」

 ミラベルとルフィーナは、まるで自分のことのように喜んでいる。

「それで、その……おしゃれな髪型とか、男性に良い香りだと好印象を持たれる香水についてなど、色々と教えてください」

 見ているだけで十分(じゅうぶん)だったが、レアは少しでもベルナールに釣り合うよう頑張りたいと思い始めていた。

「そうね……おしゃれなら、ヴァンティエール侯爵令嬢であられるサラ様や、ネンガルド王国から留学中のモールバラ公爵令嬢リリー様がお詳しいわ。お二人共植物研究室にも頻繁にいらっしゃるから、レア様にも紹介するわね。香水に関しては(わたくし)に任せてちょうだい」

 ミラベルはほんの少し得意げである。

(わたくし)も、髪型のことなら相談に乗りますわ」

 ルフィーナはペリドットの目を輝かせていた。


 その後ベルナールの隣には、垢抜けたレアの姿が見られた。

 二人共、何やら楽しそうである。


 ラ・レーヌ学園の食堂で出されるガレット・デ・ロワ。その中に入っているフェーヴを引き当てた者は恋に関する幸運が訪れると言われている。

 レアはベルナールと接点が持てたが、その後どうなるのかは彼女の頑張り次第である。

読んでくださりありがとうございます!

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