表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/64

8.




 温もりに包まれて目が覚める。

 窓からは日差しが差し込んでいて少し眩しい。いや、そんなことよりも——


「......暑い」


 ベッドで横たわる僕にしがみついて寝息を立てている少女。

 見た目は僕と同じ10歳程度だが、その実態は何百年生きているかも分からない妖狐だ。

 重さはそうでもないが、さすがに寝苦しくて目が覚めてしまったようだ。

 ふふふ、ここで寝たことを後悔するがいい......。


「んむぅ......あるじ?......なに、しておるのじゃぁ」

「モフってるだけだから気にするな」


 フワフワの耳にフサフサの尻尾。どちらも触り心地は抜群だ。三つ又だった尻尾は人化するとひとつになるんだなぁ。まぁさすがに三つ又だと目立つしな。

 見た目は幼女だけど中身は妖狐だしモフる程度なら問題ないだろう。これって合法ロリっていうのかな?そもそも僕も10歳だしなんでもいや。今はモフることが何より大事だ。

 ルナールはおとなしくモフられてはいるが、特に尻尾を触るとくすぐったそうに身を捩って面白い。


「んっ......くぅ............こ、こんなこと、主でなかったら許してないのじゃぞ......」

「つまり僕ならいいってことだろ?ま、今日はこのくらいにしてとりえず起きようか。色々とやることもあるし」

「......やること?今日は何をするのじゃ?」

「まずは冒険者ギルドに行って情報を集めつつ仕事だな。あ、僕はライ、お前はルナだからな。呼び間違えないようにね」

「分かっておる。まったく、人間というのは面倒くさいものじゃ」


 さすがに本名で活動するわけにもいかないので冒険者は偽名で登録した。ルナールは僕がつけた名前だから問題ないんだけど、本人が妾も偽名が欲しいと言ったのだ。人間は面倒くさいと言うが、妖狐だってたいして変わらないじゃないか。

 宿の1階が食堂にもなっているのでそこで朝食をもらう。まともな食事は初めてだが悪くはないな。ルナも一生懸命食べているが、妖狐って食事必要なのかな。





「おー、ここが冒険者ギルドか。さすが公爵領の領都、立派な建物だ」

「人がうじゃうじゃと群れておるのう」


 ルナの言葉通り、伯爵領のギルドより人も多い。

 それに人種も豊富だ。ウルスたちにも聞いていたし伯爵領でもちらっとは見かけたが、単純な人間だけでなく獣人やエルフのような種族も見受けられる。これならルナがいても騒ぎさえ起こさなければ目立つこともないだろう。

 そっと隅を移動して依頼が張ってある掲示板を見てみる。

 僕らは登録したばかりなので当然一番下のFランク。つまりは受けられる依頼のレベルも低い。採取やら街の中での雑用がほとんどだ。

 うーん、予想はしていたけどこれでは稼ぐというのは難しいよなぁ。いきなり難易度の高い任務やらせて失敗したり怪我されたりだと困るんだろうけどさ。

 しかしこんな報酬では賊を狩っていたほうがまだいいかもしれない。まだ賊が残っていればの話だが。

 とりあえず単価が高そうな採取系依頼を受けることにする。採取系ならフクロウ隊やアニフィがいればサクッと数は集まるだろう。怪しまれないラインというのが難しいところだが。

 依頼が書かれた紙を受付に持っていけばササっと手続きをしてくれる。規模が大きいからかやりとりは機械的だ。まぁ色々と突っ込まれるよりは助かるけど......。


 依頼受注を終えたら併設されている酒場にて休みつつ周囲に耳を傾けて見るが、大した情報はないようだ。

 それよりも、目の前でミルクを一生懸命飲んでいる幼女がほほえましい。あんま冷えてないけど美味しいのかな。

 ルナが飲み終わるのを待ってから早速依頼に出発する。途中にある屋台で食料を買い込んではこっそりアニフィに収納してもらう。アニフィ内の空間は時間停止らしく、温度変化もないからいつでも出来立てを食べることが出来る。いやーアニフィがいて本当に良かったよね。やはりスライムが最強か......。


 フクロウ隊に偵察して貰って、人気のない場所の木陰で腰を下ろす。


「さ、みんな自由に遊んできていいよ。でも人には見つからないようにね」


 アニフィやブランは街の中では自由にはしてあげられないからこういう時くらいは遊ばせないとね。

 僕はその場で目を閉じて集中する。テイムしてある小鳥に意識を映して街の様子を見物するためだ。

 雑用依頼をこなしながら情報を集めようかとも思ったが、こっちのが気楽でいい。小鳥なら警戒されることもないしね。もちろんこの小鳥にも極小のアニフィ分体が引っ付いているので指示を出すことが出来る。



 公爵領の領都というだけあって賑わってはいるようだが、それにしては民に笑顔が少ない気もする。いや、賑わっているというよりは騒々しいというべきか。どうやら、対岸の森で封印されていた怪物が復活したとい噂が流れ始めているようだ。荷物をまとめたり、逃げても行くあてがないと嘆く声も聞こえてくる。

 元々あの森を見張るためにこんな端に領都があるらしい。なるほど、実際には伯爵の管轄地域にしているのは初期対応は任せて対策を練る時間を稼ごうって算段かな?

 しかしあの伯爵に任せるのはどうかと思うけど。先代たちがどうだったか知らないが、初期対応こそが肝心でしょうに。まぁその怪物はここにいるんだけどね。

 街の様子を見聞きしつつ飛んでいると、1番立派な建物を発見した。お、ここが公爵邸か。

 さてさて、どんな情報が手に入るかな。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ