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「そなたがライか。此度のこと、心より礼を言う。おかげで王都は救われた。それに、公爵領でも活躍しているようじゃないか」
「......ずいぶんと簡単に信じるんですね」
僕が眠っていた部屋にて、僕らが面会しているのは頭に王冠を乗せた初老の男性——この国の王だ。
だけど事情を聞くでもなく、いきなり礼を言うなんてこの王様大丈夫なのかな?
「証言は一致しておるし、魔族を倒せる者がそうそういるとは思えん。勇者がやったという報告もあるが、それを見た者がいるわけではない。公爵領や伯爵領の異変を合わせれば信じるしか無かろう」
それもそうか。こうも立て続けに事件が起きていればよほどのバカでなければ理解するのは難しくないだろうね。
「まだ全て片付いたわけではありませんが」
「分かっておる。だが2度も魔族を討伐した功績は大きい。本来ならば伯爵位あたりを授けるところだ」
「......」
「そんな顔をするでない。本来ならばと言ったであろう。シュヴェーレン公爵からも本人はそれを望まぬと聞いておるから、こうして非公式で面会しているのだ。この国を出ていかれても困るしな」
おっと、僕としたことがつい顔に出てしまったようだ。でもなかなか話が分かる王様じゃないか。僕はジェニーの陰で好き勝手出来ればいいから表に引っ張り出されても困るんだよね。
まぁだからといって有能とは限らないけど。王家が貴族を管理しきれていないのは事実だし。
「何か望みは無いか?出来る限り叶えると約束しよう」
望みねぇ......王様がそんな簡単に叶えるなんて口にしていいのかね?相手が子供だから軽く見ているのかな?
貴族をちゃんと管理してくれれば構わないんだけど、少し試してみようか。
「そうですね、では——貸しということで」
「............ククク、そうか、貸しか!非公式とはいえ、国王たる儂にも物怖じせぬその胆力......気に入った。よかろう、何かあればいつでも連絡するとよい。必ずや力になってみせよう」
「ありがとうございます」
少しは渋るかと思ったけどずいぶんとあっさり受け入れてくれたね。ジェニーはなにやら頭を抱えているけど。
「では儂はこのへんで失礼するとしよう。貴族や教会の調査もしなければならんのでな。いらぬ心配だろうが......気を付けて帰るのだぞ、小さな英雄殿」
ハァ......突然訪ねてきた時はどうしようかとも思ったけど、何事もなくて良かった。
魔族や教会関連で王都中が混乱しているらしいけど、国王には是非とも頑張ってもらいたいところだ。
「まったく、ライには怖いものがありませんの?陛下相手に貸しだなんて......」
「ヘタに望みを叶えてもらって後から条件をつけられても困るしね。王家だって完全に信用できるとは限らないんだから」
「そうかもしれませんが......」
「ま、思ったよりはまともそうな国王で安心したよ。あとは王家が貴族に対してどう出るかでこの国の未来は変わる」
貴族を処分すると言っても簡単なことではない。全ての貴族を調べるのには時間も人手も必要だし、一斉に処分してしまえば各領地の経営が立ち行かなくなってしまう。
もっと貴族に依存しないシステムを確立できればいいんだけどね。公爵領も拡大してしまったし、帰ったら色々と試してみよう。
「ライちゃん、アタシからもあらためてお礼を言うわ。王都を救ってくれて本当にありがとう。こんな近くに魔族が潜んでいたのに気が付かないなんて、アタシの勘も鈍ったものねェ......」
「いや、こっちこそゴンちゃんがいてくれて助かったよ。子供たちのこともありがとう」
「いいのよォ、いつでも頼ってちょうだい。アタシたち、友達でしょォ?」
魔人化を治した子供たちは経過観察も必要だから連れて帰ることにしたけど、孤児院の子たちはゴンちゃんが引き取ると申し出てくれたのだ。
正確にはゴンちゃんの知り合いで1人ずつ引き取って、弟子として育てるらしいけど。きっと逞しくなることだろう。
「さて、子供たちも特に問題なさそうだし、そろそろ帰ろっか」
「そうですわね。いつまでもいるとまた問題を起こされて後始末が面倒ですわ」
「また来た時はアタシの店に寄ってちょうだいねェ?歓迎するわァ」
「ありがとうゴンちゃん。必ず来るよ」
ジェニーの護衛に来ただけなのにとんでもない騒ぎになったなぁ。命の危機もあったけど、収穫もたくさんあった。
公爵領の皆も心配しているだろうし、早いところ帰ろう。やることも山積みだしね。
* * *
その頃の勇者
「筋肉コワイ......王都コワイ......」
「ヘルト、しっかりして。なんだか騒がしいし、王都で何が起こっているの......?」




