58.
「——っ!!」
意識が覚醒した瞬間、全身を激痛が走った。声を出すことすら出来ず、再び気を失ってしまいそうなほどだ。
そうだ......たしか魔族と戦ったんだ。油断して刺されたのに加えて、強化の反動でこのザマかぁ。まったく情けない。
たしかにあの魔族は強かったし強化の反動は仕方ないけれど、油断していたのはマズかった。ヘタしたら2度と目が覚めることはなかったかもしれない。
まさかブランの光を耐える魔族がいるなんて......今後はきっちりトドメを刺すまで気を緩めないようにしないと。
しかしこの状態、どうしよう。激痛で起き上がるどころか首すら動かせないし喋れもしない。
見たことのない天井だけど、ここがどこかも分からない。いったいあの後どうなったんだろう。
くっ......どうにか状況を......そうだ、僕には眷属がいるじゃないか。えーと、アニフィと共有して......。全身の激痛のせいでうまく集中出来ないな。
うん......?なんとか見えて......これは僕?ああ、アニフィが枕元にいるのか。自分の横顔を眺めるのって変な気分だなぁ。
ん?アニフィが動いて......あ、共有を使ったから僕が目覚めたことに気が付いたのかな?さすが優秀な眷属だ。
「ぁ......ライ!気が付いたのですね!」
「キュゥ......」
アニフィがベッドの上で飛び跳ねたので、他の皆も気づいたようだ。だけど振動が響くからやめてほしい。マジで痛すぎてヤバいから。
ククーとスールは抱き合って泣いているし、ベッドにもたれかかって寝ているのは......ルナ?なんでルナがここに?誰かから聞いて駆けつけてくれたの?
「......声、出せない」
「あ、すぐに人を呼んでまいりますわ!」
痛みを堪えながら掠れた声をなんとか絞り出すと、すぐさまジェニーが部屋を飛び出していってしまった。自分で行くなんてジェニーらしいや。
いったい僕はどれくらい眠っていたのだろう。あの時、僕が刺された直後にブランが再び光っていたし、僕がこうして生きているということは魔族は無事倒せたのだろう。
あとは魔人化していた子供たちと孤児院のほうだ。まぁゴンちゃんがなんとかしてるかな。そういえば、フラムも見当たらないな。
しばらくして戻って来たジェニーの後ろには、アニフィに連れ出してもらったあの聖女の姿があった。
「あ、あの......私を助けていただきありがとうございました......」
「いいから、まずはライを治してくださいまし。喋ることすら出来ないのではお礼を言われてもどうしようもありませんわ」
「は、はい」
あれ?なんだかジェニーの声が冷たい......怒ってる?聖女は監禁されていたしむしろ被害者なんだけどなぁ。
その聖女が僕に手を翳して目をつぶると、両手が淡い光を放ち始めた。温かい光が触れた場所にじんわりとしみる。
これって魔法?いや、わざわざ聖女を連れてきたってことはスキルかな?僕以外でスキル持ちの人を見るのは初めてだ。
まさか聖女も転生者?でもそれなら魔族と通じていたり、素直に監禁されたりと疑問が残る。洗脳されていたり、断れない性格という可能性もあるけれど、後でこっそり聞いてみようかな。
今は治療に専念しないと......あれ?痛みが引いている?......間違いない。体を全く動かせないほどの激痛だったのが、筋肉痛程度にまで治まっている。聖女しゅごい。
アニフィに支えられながら体を起こして水を飲めば喋ることも出来る。
「ありがとう。すごい力だね、これは」
「私には、これくらいしか出来ませんから......」
いや、これくらいしかってそんな誰にでも出来るようなこと言っているけど、多分君にしか出来ないからね?
「でもライが生きていて本当に良かったですわ。意識の無いライが担がれて出てきた時は肝が冷えましたわ。アニフィが傷口に巻き付いていたおかげで助かりましたが......」
「そっか......アニフィが僕を助けてくれたんだね。ありがとう」
「......んぅ、............あるじ?......あるじぃ!」
「うおっと!」
目を覚ましたルナがいきなり僕に飛びかかって来た。危ない危ない、治療前だったらトドメの一撃になっていたかもしれない。
「よしよし......心配して来てくれたんだ、ごめんね」
「当たり前じゃ、馬鹿主!魔族がいると分かった時点で何故妾を呼ばぬのじゃ!」
「呼ぼうかと思ったんだけどね、助っ人もいたし時間も無かったから......」
きっとルナだけじゃなくてここにいない皆も心配してくれているんだろうな。僕はひとりじゃない。もっと気を付けなきゃ。




