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「ライ!魔族が出たって本当ですの!?」
「あー、うん。でもすぐに倒したし、功績は勇者に押し付けといたから何も問題はないよ」
「それ、勇者は承諾していますの?」
「さぁ?団長が眠らせてる間に魔族はやっつけちゃったしね。ま、あの勇者のことだし注目を浴びられるんだから喜ぶんじゃない?」
「そうですか......また厄介なことにならなければいいのですが」
勇者が何と言おうと、街の人たちはそう信じ切っているしね。他に倒せる人なんているはずがないって。
怪しまれそうなら、勇者の真の力が出ている間の記憶は残らないとでも言っておけばなんとかなるんじゃない?
「そっちはどうなの?そろそろ授爵式終わった?」
「まだですわ。王都に到着していない方もおりますので......」
え、まだ始まってもいないってこと?詳しいことは聞いてなかったけど、日にちとか細かいこと決まってないの?
各地の貴族が集まるんだよね?皆そんなに長い間自分の領地を留守にしていいのかな。貴族って暇なの?
僕は早いところ帰りたいんだけどなぁ。王都見物はもう十分だし、ルナやエリィが寂しがっている。それにやることも盛りだくさんだ。
帰るのにもまた時間がかかるし......帰ったら絶対に馬車を改造しよう。お馬さんたちは眷属効果で元気いっぱいだけど、馬車はそうもいかない。耐久性ももっと必要だし、快適性も向上させたい。
新孤児院の建設も......あ、そうだ。王都にもあるのかな、孤児院。えーと、他の街の立地を考えると端の方に......お、あれかな?
共有で空から見ればそれらしき場所はすぐに分かった。まぁ子供がたくさんいる場所を探せばいいだけだしね。
でも他の街とは違って、建物は割と綺麗目だし子供たちも元気に走り回っている。これはどういうことかな?ま、行ってみれば分かるか。
「——これは、教会?」
実際に行ってみると、孤児院らしき建物の隣には十字架を掲げた建物があった。普通に考えれば教会なんだろうけど、孤児院の隣というのは偶然?
「ごめんくださ~い」
「あら、お客さんなんて珍しい......迷子かしら?」
「いいや?目的はここの孤児院だから大丈夫だよ」
孤児院で出迎えてくれたのは、『仏』という言葉が似合いそうな女性。痩せているわけでもなく、服もわりと上等なものを着用している。さすが王都というところか。
「こんなところに何のご用かしら?」
「いやぁ、王都の孤児院がどんなとこか見たかっただけというか......。ここはずいぶんと余裕があるみたいだね?」
「教会のおかげさね。食べる物も着る物にも困ることはないよ」
「どういうこと?教会がくれるの?」
「ここは教会が運営しているからね。子供たちも安心して暮らせるよ」
やっぱり隣の建物は教会かぁ。しかし公営ではないにしても、教会が運営しているとはどういうことだろう。
腐っている貴族の代わりに人々を救おうと?まぁ子供たちが苦しんでいないというのならわざわざ介入することも無いか。
そういえば教会ということは神を祀っているのかな?僕を転生させたのもその神なのだろうか。ちょっと行ってみようかな。
「おや、こんな小さな子が来るとは......お祈りかい?」
「あー、まぁそんなところかな」
「それは神もお喜びになることだろう。さぁ、中へいらっしゃい」
教会には、これまた優しそうという印象の神父がいた。その先導に従って進めば、奥には神像というにはずいぶんと小さな物が鎮座している。
てっきり2~3mくらいはあると思っていたんだけど、なんだか拍子抜けだ。こういう思考も神は読み取ってしまうのだろうか。
この世界の作法は知らないけれど、とりあえず膝をついてそれっぽく祈ってみよう。
..................あれ?何も起きないぞ?こういう時って意識だけ神の世界に連れていかれて対面するんじゃないの?
新たなスキルとか信託は?いや別に欲しいってわけでもないんだけど、神がどんな感じなのかは少し興味があったのにな。
「お待たせ、フラム」
「ライは神に興味があるのか?」
「ん-、実際に会えるなら見てみたい気もするけど、別に信じているわけでもないしね」
フラムは人を斬った過去もあるし、神には興味ないということで教会の外で待っていた。中に入るくらい別にいいと思うんだけど、こういうとこも真っ直ぐなんだよねぇ。
それにしてもこの教会、どこか変だ。まさかとは思うけど、少し調べてみる必要がありそうだね。




