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53.



「——た、倒した......のか?」

「うん、この赤いのが核みたい。これを壊せば......こんな風に風化しちゃうんだ」

「こんなにあっさり倒しちまうなんて......さすがライ殿だ」

「まぁ対抗手段があったからね。さて、それじゃ人が集まる前にここから——」

「やはりただの子供じゃなかったな」

「......ありゃ、まだ人がいたなんて」


 てっきり観客は全員逃げたと思ったのに。しかもよりによって見覚えのある少女——名前はたしかフラムとか言ったか。


「この目で全て見たぞ。やっぱり私の勘は正しかった。わざわざ勇者を気絶させて魔族を倒してしまうだなんてただの子供がする事じゃない」

「あー、このこと、誰にも言わないでくれたりは......」

「そうだな......こんなこと知られたらマズイものなぁ?......いいだろう、ただし条件がある」


 いったいどんな条件なのか。場合によってはこの少女を連れて王都を離脱し、なんとか懐柔するしか......。


「——私を弟子にしてもらおう!」

「......へ?」

「私は、私より強い人を探して旅をしている......もっと高みを目指すために。そこの筋肉ダルマは強いけれど、私は騎士になるつもりはない。そこに現れたのが君ってわけだ」

「おい、誰が筋肉ダルマだ!」


 いけない、思わず吹き出しそうになっちゃったよ。たしかにそう呼びたくなるのも無理は無いけど、本人を前に口に出すとは......。

 

「......なるほど?でも僕は剣に関しては素人だから教えられることは無いよ?」

「構わない。君についていけば強くなれると確信しているからな」


 その根拠がどこにあるのか分からないけど、そういうスキルでもあるの?最初に声を掛けてきた時から怪しんでいた?

 だけどこれは願ってもない好条件だ。僕の下につくというのならわざわざ秘密を漏らしたりはしないだろう。

 それに彼女の剣技は素晴らしい。筋肉ダルマこと団長がいなければ優勝間違いなしだった。

 僕に弟子入りとか言っているけど、逆に剣を教えてもらえば大幅な戦力向上が期待出来る。


「分かった、弟子入りを認めるよ。じゃぁ早速最初の仕事だ」

「ふっ、何をすればいいんだ?」

「それは——」




 


 会場の外は大騒ぎだった。右へ左へ人が走り回っている。あれが魔族だと知らなくてもいきなり魔法ぶっぱなされればそりゃこうなるか。さぁ、団長の出番だよ。


「皆、落ち着くんだ!乱入してきた敵は勇者殿が見事倒してくれた!だから安心して欲しい!」


 複数のアニフィの分体を通じて発せられた団長の声は、この騒ぎの中でも通りの隅々まで響き渡った。

 勇者の名を耳にした人々は、徐々に落ち着きを取り戻しつつあった。


「ほ、本当に倒したのか?」

「苦戦していたようにも見えたが......」

「バカ者。お前たちを逃がすための演技に決まっているだろう」

「ホントだよ!逃げ遅れた僕をこのお姉ちゃんたちに任せて1人で戦ってたもん!」


 功績を勇者に押し付けてしまおう作戦だ!魔族自体は多くの人に見られてしまったから誤魔化しようがない。だけど誰が倒したかは僕らしか知らないからね。

 大会でも上位の成績を残した2人に子供の僕、その3人が口を揃えて言うのだから人々は信じるしかない。

 もし自分たちが倒したのならその成果を誇るだろうし。この2人が手も足も出なかった相手を、勇者が真の力を発揮して倒したということにしておこう。

 

「さすが勇者様だ」

「子供を庇って戦うなんて......!」

「その勇者様はどこに!」

「勇者殿なら戦いで体力を消耗したので休んでおられる。直に出てくるだろう。さぁ、皆で勇者殿を称える準備だ!」

「「「おおーーー!!」」」


 いやぁ一気に盛り上がってるね~。あとは団長に任せて僕らは離脱しよう。まだ見ていない場所はたくさんあるし、フラムとも色々と話さないと。


「ひとつ、聞きたいことがあるんだが......」

「ん、なぁに?」

「この髪飾り、どういうつもりで私に着けた?」

「ああ、着けてくれてるんだね。特に意味はないよ。ただ似合うかなって思っただけ。フラムは綺麗だからそういう可愛いのも似合うよ」

「綺麗......?私が?」

「うん。燃えるような色の髪の毛も意志の強そうな瞳も綺麗だと思うよ」

「そ、そうか......初めて言われたな、そんなこと」


 そうだ、眷属の皆にも何かお揃いの物をプレゼントしようか。そうすればお互いに会ったことなくても眷属だってことが分かるよね。何がいいかなぁ。


 

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