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52.



「まさか王都にまで魔族が出るとはね」


 突然の乱入者を視認した瞬間、僕は慌てて宿を飛び出していた。騎士団に指示を出して避難させつつ、団長が時間稼ぎをしているけどそう長くは持たないだろう。

 前の魔族を倒したのは勇者だと勘違いしているみたいだけど、バレてしまうのは時間の問題だ。戦えばそこまでの実力がないことくらい分かるしね。

 せっかく騎士団の強さをアピールしつつ、勇者に華を持たせて上手く終わりそうだったのに。

 我先にと出てくる観客たちの数がすごいので、建物の屋根伝いに走っていく。単純な構造の建物ばかりだから登りやすくて助かるよ。


「——待たせたな!準備完了だ!」


 到着と同時に団長から報告が入った。よし、観客は避難させてし勇者も眠った。これで魔族と団長以外に目撃者はいない。


「ナイスタイミングだよ。その勇者を連れて離れてて」

「ああ。だが奴は半端じゃねえ強さだ。気をつけてくれ」

「うん、分かってるよ。そっちも巻き添え喰らわないようにね」


 おそらく奴は前に戦った魔族よりも強い。ブランもずっと威嚇しているし。だけど負けるつもりは毛頭ない。


「勇者を気絶させて代わりがガキだと?随分とナメられたものだ」

「ガッカリさせたらごめんね。だけど手を抜くつもりは無いから覚悟してね」

「ぬかせ。あの世で後悔するんだな!」


 たしかコレールと名乗った魔族は、いきなり巨大な炎球を放ってきた。スピードも威力も申し分ない。だけど、炎球は僕に当たる直前で吸い込まれるように消えてしまった。

 魔族のドヤ顔が驚愕に変わる様がおかしくて笑ってしまいそうだ。


「そ、そんな馬鹿な!」


 もう1度炎球を放ってくるけど結果は同じ。何度やっても無駄なんだよね。こっちにはドラゴンブレスすらも吸い込んでしまうスライムがいるんだから。


「クソっ!どうなってやがる!死ねェ!」


 魔法は諦めたのか、今度は硬く鋭い爪で襲いかかってきた。が、今度は剣を持った触手が伸びてその爪を払い除けた。


「貴様......何者だ!人間では無いな?」

「失礼だなぁ。僕はれっきとした人間だよ。さて、君には聞きたいことがあるんだよね」

「ガキに教えることなどない。いや、死ぬ恐怖とあの世の空気は教えてやるよ」


 さっきから言っていたけど、魔族にもあの世っていう概念はあるんだね。長命なイメージはあるけど、どれくらいの寿命なんだろう。

 

「質問に答えてくれるなら、僕が攻撃を無効化してる方法を教えてあげるよ」

「何?ふん、まぁいいだろう。冥途の土産に答えてやろう」

「へぇ、やっぱり気になるんだね。僕が知りたいのは君たちの目的だよ。人間を滅ぼすというのは聞いたけど、その理由というか......人間がいなくなった世界をどうしようっていうの?」

「クク......自分たちがいなくなった後を知りたいだと?簡単なことだ。我ら魔族が支配し、真の王が降臨する。貴様ら下等種族はそのための贄にすぎんのさ」


 真の王?魔族の王ってことは魔王みたいなもの?だけど降臨するということはまだいないということだろう。

 魔族ですらこの強さなのに、魔王ともなればその力はおそらく想像を絶するほどだ。そんなのがいれば人間はとっくに滅んでいてもおかしくはない。

 問題は、その魔王だか何だかが今どこにいるのかということだ。新しく生まれるのか封印されているのか、もしくは異界から呼び出すのか。


「ふーん。その真の王とやらはどこにいるの?それと魔族ってどれくらいいるのかな?」

「さぁな。それを知ったところで貴様にはどうしようもあるまい。次は貴様の番だぞ。どうやって我が攻撃を防いだのか答えろ」

「仕方ないなぁ。その答えは......スライムだよ」


 アニフィが服から覗いてアピールして......いや挑発しているようにも見える。


「それは何の冗談だ?スライムごときに何が出来るというのだ」

「冗談だと思うなら試してみれば?」

「ならば......望み通り、死ね!」


 先ほどよりも少し大きい炎球を放ってくるけど、アニフィに吸収されてしまう。


「......バカな」

「だから言ったじゃない。じゃ、お返しだよ」


 今度はアニフィから炎球が吐き出されて魔族へと迫って爆発する。これで倒せるなんて思ってはいないけれど、牽制にはなるんじゃないかな。

 煙の中から魔族が飛び出て襲い掛かって来るけど、またもアニフィが全て弾いて、逆に反撃をしていく。そしてそれに紛れて僕も短剣を魔族へと突き刺す。


「なっ......これは......」

「悪いけど、これで終わらせてもらうよ。ブラン、共有(リンク)!」

「クッ、そいつは......!」

「キュー!」


 路地裏にあった露店で買った短剣には、魔力に反応して麻痺効果を付与する効果があるらしい。試すことも出来ないからぶっつけ本番だったけど、魔力が豊富であろう魔族には有効だったようだ。

 魔族の動きが鈍った隙にブランと魔力を共有させる。これはブランの消耗をどうにか抑えられないかと試行錯誤した結果、見つけ出したテイムスキルの新たな能力だ。

 僕自身に魔力はあるけれど、今のところ魔法とか使えないしただ余っているだけ。それをブランに分け与えることが出来れば対魔族との戦闘がかなり有利になると考えたわけだ。

 ブランの発する光を浴びた魔族は、以前戦った魔族と同様に弱点らしき赤い核をさらけ出して動かなくなってしまった。

 油断してくれていて助かったよ。また魔薬を使われては厄介だからね。

 それにしても魔族と魔薬だけでも厄介なのに、まさか魔王とは......。急いで情報を集めないと。

 

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