49.
今回は新キャラ視点でお送りいたします。
——ずっとずっと、剣を振り続けたきた。それが私の生きる方法であり、また生きる意味でもあったから。
貧しい村には当然娯楽もなく、物心ついた時から師と共に鍛錬を続けた。自分の成長が感じられれば嬉しいし、逆に辛くて涙を流した日も数え切れないくらいある。
そして転機となったのは3年前のあの日——師が亡くなってしまった日だ。当時まだ12歳だった私を置いて逝ってしまった。両親の顔すら知らない私にとって師はたった1人の家族だったのに。
もういい歳だしいつポックリ逝ってもおかしくないとは言っていたが、転んだ拍子に頭を強く打って亡くなったとはなんとも抜けた話だ。だからいい加減に杖を持てと言ったのに。
それから村に居場所が無くなった私は旅に出た。強き者と戦って自分の剣技を高め、さらに強くなるために。師に教わった剣術に恥じぬ生き方をするために。
たくさんの人と出会い、戦った。基本的には木剣にて立ち会うが、悪事を働く者や私に危害を加えようとする者を真剣で斬ったこともある。
私が女だからと舐められないように。自らと大切なものを守るためなら躊躇するなという師の教えがあるからだ。何度経験しても気分のいいものではないが。
しかし出会った人の中には、師を超える者はいなかった。私はまだ若くて未熟だから、師を超える者がいれば弟子入りして教えを請いたいのに。
「なに、アレ......」
王都と呼ばれる場所でソレを見た瞬間、私の背中がゾワリとした。見た目はただの子供だ。だけどそこから感じ取れる気配はおおよそ人のものとは思えない。
魔物......いや、悪意や敵意の類は感じられない。だとするならいったい何者なのだろうか。なんであれ確かめなければならない。
「そこの少年、少しいいだろうか」
「ん?どうしたの?」
振り返ったのは、どこにでもいそうな少年。歳は10ほどだろうか。しかしいきなり「何者だ?」などと問いかければ逆にこちらが不審者になってしまう。
「その......勇者様というのがここへ来ていると聞いたのだが、見たことはあるか?」
「......勇者様?なんだかすごそうな人だねぇ。貴族様が集まって何かやるみたいだし、そっちへ行ってみたら何か分かるんじゃない?」
「貴族か......あまり気は進まないな。そういえば、君は剣術大会には出場するのか?」
「剣術大会?そんなのがあるの?でも僕は子供だし出ないよ」
「そうか、それは残念だ。まぁ興味があるならば見に来るといい。私も出るし、優勝すれば勇者様と手合わせ出来るそうだからな」
「へぇ、お姉さんも出るんだぁ。面白そうな情報をありがとう。気が向いたら見に行ってみるよ」
「私の名はフラム。また会えるのを楽しみにしているよ」
「僕の名前はライだよ。じゃぁ、またねフラムお姉さん」
てっきり剣術大会に出るために王都に来ているのかと思ったがそうではないらしい。せめて目的を知りたかったが、そう簡単に尻尾は出さないか。
「ほっほっほ、似合っておるぞお嬢さん」
少年を見送った私に声をかけたのは、ライと名乗った少年が先ほどまで見ていた露天商だった。似合っている?何が?疑問に思ったが、広げられている商品を見てハッとした。
自らの頭に手を伸ばすと、つけた記憶などない髪飾りの感触。少年の去った方向を振り返るも、そこにはすでに影も形も無い。
いつの間に......油断をしていたわけでは無いのに、この私がつけられたことにすら気が付かなかった。
これがもし髪飾りではなく武器だったとしたら、私は自分で気が付かないうちに死んでいる——その事実に思わず背筋に冷たいものが伝わる。
本当に何者なのか......そしてこの髪飾りに込められたメッセージはなんなのか。これ以上踏み込むなという警告?女が剣を握るべきではないという侮蔑?
なんであれ、私の次の目的は決まった。剣術大会で優勝して勇者様と手合わせした後、あの子供について調べよう。
正体と目的、そしてこの髪飾りの意味を知るまでは逃がさない。どこまでもくらいついてやる......。




