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4.


 

 

 某所・執務室 

 

「——だからまだ待てと言っている!あそこは迂闊に手は出すわけにはいかんのだ!」

「んな弱気なこと言ってられっかよ!連絡が来ないってことは金だけ持って逃げたってことだろ!?」

「俺もそう思うな。確認くらいはしておくべきじゃないか?父さん」

「いつも言っておるだろう!無暗に刺激して何か起こってからでは遅いのだ!」

「そんなんだからウチも衰退していくんだ!なーに、賊どもを狩ってくるだけさ。俺がパパっと終わらせてやるよ!」

 

 1人が勢いよく部屋を出ていく。 

 

「待て!アレ(・・)を刺激しては......」

「まあまあ父さん、やらせてみようよ。僕もフォローするから」

 

 

 そんな3人の会話を、部屋の隅で見ている小さな影があった。

 

 

 

 

 

「......動き出したか」

 

 共有(リンク)を切った僕は(ひと)()ちた。

 僕が追放され山賊に拉致されてから2日後。ついに伯爵家に動きがあった。

 伯爵には正妻の子が2人いる。長男は跡取りとして経営を学んでおり、次男は騎士団の小隊長というポジションに収まっている。

 今回来るのはその次男率いる部隊だ。当主の許可無しに騎士団を動かすとはねぇ。

 ここは伯爵家からそう離れていないから数時間もしないうちに来るだろう。

 ま、急襲しようだなんて甘いんだよね。屋敷に潜入してる仲間を通して筒抜けだし。昨日は1日かけて色々と準備したしバッチリだ。

 

 さぁ、始めようか......叛逆を。

 

 

 

 

 

 

 シエルと共有して空から観察する。

 進軍してくる部隊は10人。後続の部隊はいないようだ。

 

「あと少しだ!この森の中に奴らがいるぞ!皆殺しだ!1匹も逃がすんじゃねぇぞ!」

「「「応!」」」

 

 あらあら、元気のいいことで。だけどここまでたどり着けるかな?

 順調に進軍している彼らの頭上から、突如として落石が襲う。しかもひとつひとつがサッカーボール大もある大きさだ。

 何事かと空を仰げば、フクロウの軍団が急降下して襲ってくる。

 

「う......うわぁぁぁああ!」

「なんだこれはぁ!」

「クソっ!1度退くんだ!」

 

 先頭にいた男が指示を出すも後退する者はいない。なぜなら、全員が馬に乗っているからだ。

 人が判断できてもパニックになっている馬は暴れ回るばかりでそんな判断ができるわけが無い。

 邪魔だと言わんばかりに振り落とされ、蹴られ、踏まれる者もいた。

 

「キュウ!キュウ〜!」

 

 ブランが鳴くと馬たちはそれを目印に一斉に森に向かって駆けた。

 残された騎士は慌てて剣を抜いて振り回すが、その時にはフクロウは空の上だ。さらに騎士を嘲笑うかのように頭上に糞を落としていき、悲鳴が響く。

 

『愚かな人間どもよ』

 

 突如、騎士たちの頭に直接響く声。森を仰ぎみれば、そこには木々よりも巨大な狐の姿。

 あまりの迫力に騎士たちは言葉も出ず、震えて尻もちをついたり股間のあたりから液体が漏れ出てきたりと大変な様子だった。

 

『ここは我の領域。侵すことは許さぬ。干渉するならばあの人間どものように我の餌にしてくれる』

 

 ルナールが威圧すると、騎士たちは剣を投げ捨てて這いつくばって逃げ出した。そこへ追撃のフクロウが襲い掛かる。

 嘴で爪で追い立てる。これで十分に恐怖は刻み込めただろう。

 

 

 

 

「......まさか、本当に追い返しちまうなんて」

「どうしたらこんな戦法を思いつくのかしら......」

「腹違いとはいえ、兄にこんな仕打ちをするなんて......」  

「悪魔だ......」

 

 みんなひどいなぁ。

 僕らは戦闘に巻き込まれないように、森とは反対側の小高い場所に仮設基地を設営して戦場を眺めていた。

 

「みんなお疲れ様。もう大丈夫だよ。僕たちも戻るからアジトで落ち合おう」

 

 想定以上にうまくいって良かった。

 

「アニフィ。君のおかげだよ。ありがとう」

「!(プルプル)」

 

 アニフィはただのスライムではない。妖狐ルナールの眷属であった。眷属って呼び方カッコいいよねぇ。だからルナールと初めて会った時もあの威圧の前で平気でいられたのだ。

 そしてさらに僕のテイムで進化してしまった。アニフィは分裂が可能となり、さらには通信機能までが備わった。つまりは携帯電話のようなものだ。いや、無線というべきか。

 これにより離れていてもリアルタイムで指示を出すことが可能になったのだ。今までは共有するときも事前に指示した通りにしか動けなかったから助かる。

 しかもそれだけでは無かった。

 

「戦利品回収~」

 

 騎士が落としていった剣を回収しておかなくては。使う機会もあるだろうしね。みんなで拾おうとしたら、アニフィが触手を伸ばしてまとめて拾い上げてくれた。おお、便利だ!

 そしてそのまま食べてしまった。............え?

 

「あ、アニフィ......?」

 

 しかしアニフィはなんでもないように再び剣を取り出してみせた。......え?

 これってもしかして......。

 

「まさか......アニフィは物をしまっておけるの!?」

 

 触手で丸を作って肯定するアニフィ。これはとんでもないことだ。

 夢のアイテムボックスまでついてきちゃうんです!なんて、どこぞの通販みたいだな。

 いや、冗談抜きでヤバくない?スライムってこんな可能性秘めてるの?

 ルナールの眷属の効果なのか、僕のテイムスキルの影響なのか、全ての条件がが奇跡的に組み合わさったのか。

 これは実験し甲斐があるなぁ。ふふふ......。

 

 

 

 

 

「頼む!俺たちを傘下に加えてくれ!」

「ん、いいよ」

「そこをなんとか......って、ええ!?軽っ!?」

 

 アジトに帰って早々、山賊一同に頭を下げられた。

 

「いや、だって言ったじゃない?君たちの力が必要だって」

「そりゃそうだけどよぉ......いやいい。受け入れてくれるなら何も言わねえ。俺たちゃ全てをあんた——ラモール様に捧げる」

「そう硬くならないでいいよ。僕は貴族でもないし。いっぱい働いてもらうしね!」

「ウッ......笑顔でそんなこと言われると怖いんだが」

「じゃぁ、とりあえず順番に僕の手の上に手を乗せてみてくれるかな?」

「お、おう。そりゃお安い御用だが......」

 

 リーダーのウルスから1人ずつ順番に手を乗せていく。これでテイム完了っと。

 実験だーいせーいこーう!やったね!人間でもテイム出来ることが判明しました!

 名前は浮かんでこなかった。まぁもうあるしね。

 

「こ、これは......っ」

「すごい。力が......」

「なにこれ......」

 

 ふふふ、驚いてる驚いてる。

 

「歓迎しようぞ、(あるじ)の新たなる眷属たちよ」

「これも眷属っていうの?僕的には仲間とか家族って感じなんだけど」

「呼び方なぞ何でもよいのだ。主に忠誠を誓っているのには変わらぬ」

 

 なんでルナールが偉そうなのかは分からいけど、幼女が偉そうにしてるのってかわいいから放っておこう。

 

「じゃ、みんなは僕の眷属で友達で家族だ!これからよろしく!」

 

 

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