37.
「......よくもやってくれたな。後悔しながら死んでいくがいい」
そのセリフと共に魔族の体が変化していく。元々浅黒かった肌が真っ黒になり、瞳は赤く輝いてすら見える。角も2本から4本に増えて恐ろしい風貌だ。
「ククク......ガキどもが少しはやるようだが相手が悪かったな。俺様に歯向かったことを後悔しながら死んでいくがいい」
「へぇ、これは驚きだ。その状態でも自我があるんだね」
「下等な人間と一緒にされては困るな。我ら魔族のために作られた物なのに、自我をなくすわけが無かろう」
それもそうだけどさ、問題はどうやってその成分の組み合わせにたどり着いたのかってことだよ。まさか同族までも使って研究したのだろうか。
「その下等な人間の力を見せてあげるよ」
「それは楽しみだ......と言いたいところだが、一瞬でケリはつくさ。死ね!」
振りかざされた右手から突如炎が噴き出して僕らを襲う。しかしそんなものは通じない。なにせこちらにはアニフィがいるのだから。
アニフィに吸収された炎を見てさすがに驚きを隠せないようだ。
「我が炎が消えた......?先ほどのブレスもこいつから出てきた気がしたが......そのスライム、何者だ!」
「僕の仲間のスライムだよ。 じゃ、次はこっちの番だね」
アニフィを抱えて走り出し、魔族の背後へと回り込む。そしてアニフィから魔族が放った炎が吐き出され、向かいにいるルナからは巨大な狐火が放たれた。さらには魔族の直情からエリィのブレスが降り注ぐ。
魔族は咄嗟に避けたが、それぞれの攻撃の先にはいつの間にか分裂していたアニフィの分体がいて吸収された。そのまま反射するかのように吐き出されて再び魔族へと迫り爆発が起こった。
「やったか!」
ルナ、それは言っちゃいけないやつだよ。
やがて土煙が晴れた場所には、顔の前で腕を交差させた魔族が立っていた。当たったのに溶けないどころかピンピンしてるとはね。
「少し驚いたが残念だったな。この程度の攻撃では我を倒すことは出来ん」
「でもノーダメージってことはないでしょ?それならそもそも避ける必要がないもんね」
「小癪な......だが先ほどから貴様自身は何もしてないな?ならばまずは貴様から殺してくれる!」
おっと、それはさすがにマズいな。相手は魔族だしギャルドなどとは比べ物にならないくらい強いだろう。物理的な攻撃は効かないと思った方がいいだろうし、正直なところお手上げだ。
「キュウ!」
「ん?ブランどうしたの?」
普段は危ないから上着の内側に潜っていることが多いのだけど、今は出てきている。しかも険しい表情で魔族を睨んで唸っている。いったいどうしたのだろう。
迫る魔族の攻撃をなんとか躱しつつ反撃を試みるも、やはり硬すぎて手ごたえが無い。むしろ強く殴るとこちらがダメージを受けてしまいそうな硬さだ。
ルナとエリィが狐火とブレスで援護してくれるが、それもあっさり躱しつつ執拗に僕を狙ってくる。
「そんな熱心に追いかけて来られてもうれしくないんだけどねっ」
「クソが!人間の分際で何故こうも動けるのだ!」
こっちの攻撃も効かないけど向こうも攻撃が当たらなくて苛立ちを隠せないようだ。しかしこれでは埒が明かないね。
考えつつ避けていると、再び僕に迫った魔族がいきなり体勢を崩して転んでしまった。その足にはアニフィの触手が絡みついていた。いくら強くても足元にまで注意が及ばなかったようだ。
するとブランが僕から飛び降りて魔族へと向かっていった。その体は不思議な光に包まれていた。
「な、なんだこいつは!やめろ!こっちへ来るな!」
危ないと思ったが、何故か魔族のほうが怯えていた。いったいどうしたというのか。
「キュウー!!」
「なっ......うおおおおおおお」
ひときわ大きな声で鳴いたブランから目が眩むほどの光が放たれた。なにやら魔族の叫び声も聞こえるが、光のせいで何がどうなっているのか分からない。
やがて光が収まると、そこには息を荒くしたブランと目を見開いたまま動かない魔族の姿があった。その体の中心には赤く光っている小さな玉のようなものが見て取れる。
「ブラン!大丈夫!?」
「キュ、キュゥ......」
体はフラフラで鳴き声もか細い。しかし何かを訴えるように魔族に指を向けていた。
「いったい何がどうなったのじゃ。これは......ブラン、どういうことじゃ?」
「キュウ、キュ、キュゥ......」
「なんと......主、この赤く光っているのが魔族の核のようなものらしい」
「それを壊せば倒せるってこと?色々聞きたいことはあるけどブランも心配だしさっさとやっちゃおうか」
「妾に任せておくのじゃ」
狐火を出したかと思うと、その形が変わっていき槍のような形になった。そんなことも出来るのか。
そして炎の槍が魔族の体を貫いて赤い玉は見事に砕かれた。すると魔族の体にヒビが入っていき、割れていったかと思うとどんどん砂状になっていった。




