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35.



「——主様!緊急事態だ!街に向かって魔物の群れが迫っていやがる!」

「場所は!?」


 ウルスから突如入った通信で衝撃の事態がもたらされた。場所はペルディアの先にある街だ。ウルスにはそのまま手を出さず様子見にとどめるように指示しておく。


「ククーとリュシオルは領主館に報告して待機!ルナ、可能な限り急ぐよ!」

「任せるのじゃ!」


 走ってペルディアを出たところで変化したルナに乗って次の街へ急行する。ついでにエリィにも来るように連絡しておく。一応、ドラゴンの庇護下にあるという(てい)だし、空から援護してもらおう。

 

『——あの街だな』

「っ!ここからは何も見えないな......街の反対側か!」


 久しぶりのテレパシーに少し驚いたが止まっている暇はない。そのまま街に沿って走っていくと、ちょうどペルディアとは真逆の方向の街道に黒い塊が見えた。

 街のすぐ外には武器を持った人々が今にも応戦しに駆け出そうとしている。それをウルスがなんとか必死に止めていたところだった。間に合って良かった。


「待ってください!ここは僕らに任せて皆さんは門の守りを!」

「妖狐!?し、しかし......」

「これが噂の......心強いが君も危ないぞ!」

「大丈夫ですよ。まだ味方はいますから」


 初めて見る妖狐に驚くのも無理はない。僕を心配する声もありがたいが、エリィもじきにくるし問題はない。

 魔物の群れを見ると、種類はバラバラのようだが全員が黒っぽい色をしているのが分かる。


『焼き払うか?』

「牽制程度でお願い。様子を見たいんだ」

『了解だ』


 こんなにも種類がバラバラの魔物が一斉に街を襲うなんておかしいと思う。よくあるパターンならスタンピードって線もあるけど、おそらくそこまでの規模では無いし。

 体が黒っぽくなっているのが何か関係あるのか分からないけれど、魔物の強さ、連携、目的、調べることはたくさんある。

 ルナの周囲に火の玉が3つ出現してグルグルと回転している。さすが妖狐だ、狐火というやつかな?

 火の玉はまっすぐ魔物の群れに飛んでいき着弾した。先頭にいた魔物はそれをまともに受けてしまい、一瞬のうちに丸焦げになってしまった。

 うーん、ルナが強すぎて魔物の強さが分からないな。よし、ここは次の手だ。


「アニフィ、魔物を何体か生きたまま捕えられる?」


 お願いすると、アニフィはすぐさま触手で丸を作ってくれた。

 狐火を見ても魔物たちは進軍を止めないようなので、先頭にいた魔物を触手で絡めとった——と思ったのだが、少し引きずったところで魔物が触手を引きちぎった。

 まさか......アニフィの触手を力づくで?僕とルナの眷属なんだぞ?ええい、こうなったら......。


「ルナ、先頭のやつだけ僕が相手をするから、他は少し残して焼いちゃって」

『主......大丈夫か?』

「うん、強化も使うから大丈夫だよ。お願いね」


 素早く接近して、アニフィの触手を引きちぎった牛顔の人型魔物を投げ飛ばして群れと引き離す。

 ルナを見ると、三又の尾が更に3つずつに分かれて9本になった。なるほど、ルナは九尾の狐だったのかぁ。

 9本の尾が揺らめくと、ルナの周囲には9つの炎の塊が現れた。先程の火の玉など比べ物にならない。


『アニフィを傷つけた報いを受けるがいい』


 炎は確実に魔物を焼いていくが、それ以外の草木にはなんの影響も与えていなかった。これが九尾の狐火か。

 牛顔の攻撃を躱しながら焼かれた魔物を見ていると、どれもが真っ黒に染まって動かなくなった。

 炭になったというわけではないだろう。それはまるで、魔薬を服用した者の末路にそっくりだった。

  これで魔物の死体が消えた謎は半分解けた。あとは真っ黒な物体が魔物と同じだと認識出来なかったのか、もしくは誰かが持ち去ったのかだ。

 

「さて、あとはこっちか」


 攻撃は躱すか受け流すかで直接受けてはいないが、それでもすごい力だというのは分かる。それに、長兄のギャルドほどでは無いがこの硬さ......やはり魔薬だとしか思えない。

 何故魔物が魔薬を?いったい誰が?疑問は絶えないが、今は考えても仕方ない。

 牛顔が突っ込んできたのをひらっと避けると、そこには穴があって見事に落ちていった。僕の背後でアニフィがものすごい勢いで掘っていたのだ。


「やったね、アニフィ!」

「(プルプル)」

『主、残りはどうするのだ?』

「ああ、もう焼いちゃって——あ、ちょうどエリィが来るみたいだから譲ってあげよう。わざわざ残してあげたのに撤退しないみたいだし。どこから来たのか分かるかもって思ったんだけど」

『ちっ、仕方あるまい』


 やはりというべきか、魔物たちの知能は高くないようだ。命令に従うだけなのか、本能のままに戦うだけなのか。

 牛顔も穴からはい上がろうとしてはいるものの、体が硬質していて上手くいっていない。そこへ巨大な影が落ちた。エリィが到着したのだ。


「主殿、すまない待たせた」

「んーん、ルナもいたし問題ないよ。残ってるのはエリィの分だよ~。薙ぎ払え!」

「承知!」


 片手を翳して命じる。1度はやってみたいよね、これ。

 上空から放たれた圧倒的なエネルギーに、魔物たちは蹂躙され絶命するしかなかった。うんうん、余は満足じゃ。

 さて、残った牛顔君はどうしようかな〜、と考えていた僕らを地響きが襲った。ブレスの衝撃とは別のものだ。これは……。

 

 

 

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