34.
「——ってなわけなんだけど、何か変わったことない?」
「魔物だと?俺たちも森の中で例のアジト探してばかりだったからなぁ。全然気が付かなかったぜ」
「そっかぁ、ウルスたちも分からないか。やっぱりどこかに巣があるのかな」
次の街——ペルディアに向かう途中でウルスたちのいるアジトに寄ってみたけれど、こちらでも魔物には気が付かなかったようだ。
もうひとつ気になることがある。魔物の死体が消えてしまうということだ。誰かが持ち去ったのか溶けるように消えてしまったのかは分からないが、どうにも気になる。
「こんなところに巣を作る命知らずな魔物がいるなんて思えないけどな」
「それは同感だよ。それに、どうやって監視をかいくぐったのかも気になるしね。ともあれ、皆もちょっと一緒に来てほしいんだ。他の街や村を守るためにね」
「そりゃ構わねえぜ。主様のおかげで俺たちの力も上がってるしな。ようやく役に立てそうだ。馬ならここにもいるし、先に行って様子を見てくるぜ」
「それもそうだね。何かあればすぐに連絡を。くれぐれも気を付けて」
人攫い以外にも、次兄の部隊から保護した馬がここにはいる。テイムしておけば体力も問題ないし、僕は僕でゆっくり回ることが出来る。
孤児院にいるシーニュとハーゼを除いて4人。4方向に散ってもらって伯爵領の街や村を偵察してもらい、異変があれば報告・防衛してもらおう。これで敵の正体や狙いが分かるかもしれない。
僕らは予定通りペルディアへ行こう。あそこでは色々とやることもあるしね。
「お待ちしておりました、ライ様」
「うん、久しぶり。あれから街の様子はどう?」
ペルディアに到着した僕たちを迎えたのはジェニーの執事であるガイスト。今はペルディアにて仮の代官を務めている。なにせ王都には文官を寄越せと言ったのに、調査隊以降なんの音沙汰も無いのだ。
妖狐やドラゴンにビビっているのか、自分たちの利益を考えているのか知らないけれど、放置されている民のことを考えてほしいものだ。
「はい、ご指示通りにシュヴェールと同様の政策を実施しておりますので住民の生活も変わりつつあります。ただ、スラムに住む者たちはどうしようもなく......」
「そこは僕がなんとかしてみるよ。ところで街の周辺で妙な動きはない?魔物が現れたとか......」
「魔物ですか......いえ、私のところにはそのような情報は入っておりません。ドラゴンの庇護下にあるのでここが襲われるというのは考えづらいですが......」
「そうか、エリィの影響というのもあるか。......分かった。少し街の様子を見てくるよ」
買い物をしつつ話を聞いてみたのだが、やはりここでは魔物が出たという話は無かった。ただ、夜になるとたまに妙な音がするという人がちらほらいたのが気になる。
そして問題のスラムだ。伯爵がいなくなって街には笑顔が増えているが、スラムに住む人にはあまり関係が無い。そもそも税を納めてもいないしね。
ここに新しい孤児院とかを作るから、今あるボロボロの建物を解体して整地したいんだけどなぁ。よーし。
「ここに住むみなさーん!お仕事でーす!手伝ってくれたら食料と新しい住居を提供しますよー!」
「......なんだ?」
「仕事だと?」
建物から出てきた人たちは疑わし気な眼差しで睨んでくる。座り込んだまま動かない人も多い。さすがにそう簡単には信じないか。
「その前に腹ごしらえしましょー!はい、まずは串焼きとルナ焼き1人1本ずつね!」
さすがに食べ物を目の前に出されては無視することも出来ないだろう。じわじわと寄ってくる人たちに配っていく。
1人が恐る恐る口にすると、次々に勢いよくかぶりついていく。うんうん、やっぱりお腹が空いてちゃ駄目だよね。
「......で、俺たちに何をさせようってんだ?」
「簡単なことですよ。ここ一帯を整備したいから、まずはゴミ拾い。ひとまずここに集めてくださーい」
元孤児院に集めてもらってアニフィに食べてもらう。大きなゴミさえ無くなればあとは後日、解体と掃除だ。スラムの人たちも食料と新しい住居の為となればやる気は出るし、体を動かすのは健康にもいい。
あとは清潔感をどうにかしたいところだね。皆いっぱい汗かいたことだし、ここはやっぱりお風呂でしょ!
だいたい場所に見当を付けて簡易的なお風呂を作ってもらう。誰に?もちろんアニフィにね。
明日からはガイスト主導で解体をしてもらおう。働いたら賃金を支払って、それでごはんを食べてもらう。そうすればスラムも綺麗になるし街の経済は回るし良いことづくめだ。
1度シュヴェールに戻って再びここへ来る頃にはだいぶ綺麗になっていることだろう。そうしたらいよいよ新孤児院の建設だ!




