33.
「こんにちは〜!」
「............」
う、言葉すら交わしてくれないとは、これはまたやりにくそうだなぁ。
ここは伯爵領に入ったところにある村。1つ前の村も最初は警戒されていたが、一応言葉は交わしてくれたのに。
「新しく出来た商会なんですけど、ご挨拶に来ましたー!お困りのことがあれば言ってください」
「......」
うーん、これは困ったぞ。口を聞いてもらえないと何に困っているのかすら分からない。よーし、こうなったら......。
「よいしょっと。みなさんちゅうもーく!今からBBQをやりまーす!早い者勝ちなのでどんどん食べてくださいね〜!」
アニフィから取り出したのはBBQセット。もちろんアニフィお手製の物だ。そして解体済みの魔物のお肉。こちらも解体を見学していただけでアニフィが習得してしまった。恐るべし。
野菜はあまり無いけど、お肉なら沢山ある。巨大カエルの肉というのはわざわざ言う必要もないだろうし、今日はこれでいいだろう。
しかし、やがて煙が上がり始めると村人たちが怒り始めた。
「やめろ!村を滅ぼす気か!」
「貴様も魔物の手先か!」
「え、ちょ......待って待って!お肉焼いてるだけだってば!」
「何を言っている!煙とにおいにつられて魔物が寄ってくるだろうが!」
「......ん?魔物?どういうこと?」
魔物ならこの辺りにはいないはずだ。元々森に眠るルナを恐れてか生息していないのだから。今はサボがいるしね。
「言葉の通りだ。最近、魔物どもが度々襲って来やがる。死人こそ出ちゃいないが、怪我人や作物の被害はかなり出ている」
「魔物か......それは気になりますね。魔物の種類とか特徴とか何か分かることは?」
「魔物なんざ今まで見たことないから種類など知らんが、人型が多いな。肌の色が濃い緑......というより黒に近いか。それと角が生えているな」
緑色の人型で角がある......ゴブリンってやつかな?しかしそれならルナやサボを恐れる程度のレベルだろうし気になるね。
おっとお肉が焦げてしまう。危ない危ない。
「とりあえず今は安心して大丈夫だから食べて食べて。その魔物の死体とかって残ってないんですか?」
「いや、残っていない。ある程度暴れると去っていくのがほとんどだ。なんとか倒せてもいつの間にか死体が消えちまう」
「死体が消える?いったいどういうことだろう......。そういえば最近って言ってたけど、具体的にはいつ頃からです?」
「そうさな......ひと月前ってとこか」
ひと月前といえば、ペルダン伯爵がいなくなった頃だ。伯爵領に入った途端にコレだし、関係がないとは言いきれないよね。
「よし、皆さん不安でしょうし、ここは頼もしい用心棒を付けましょう。アニフィ、サボとシエルに繋げて......サボ、シエル、ちょっと来てくれる?」
アニフィを通じてサボとシエルを呼ぶ。近くだしすぐに来るだろう。その間にお肉を食べながらアニフィにお願いして、空いてるスペースに小屋を建ててもらう。
「キュエッ!」
「早かったね〜よしよし」
サボたちはすぐに来たのだが、村人たちは怯えて言葉も出ないようだった。ようやくお肉を食べ始めていた手も止まって、貴重なお肉を落としてしまっている人までいる。
「あ、この子たちは僕の仲間なんで安心してください。ヒッポグリフのサボっていいます。サボ、この村が魔物に襲われているみたいなんだ。シエルたちと協力して守ってくれるかい?」
「キュエ~」
「ありがとう。見つけたらどこから来てるのか調べるのと、念の為に1体は殺さずに捕獲しておいてね。この小屋を使っていいから、村の人たちと仲良くするんだよ」
しっかりとコミュニケーション取れますよアピールをしておく。初めて見る大きな魔物だから最初こそ恐怖を感じるかもしれないが、人の言葉を理解するし好戦的というわけでもないから慣れれば大丈夫だろう。
しかし最近は魔薬組織の捜索でこの辺りの警戒が手薄になっていたとはいえ、まさか魔物が出るとは。
仮にゴブリンだとしたら飛んでくるとは考えづらいし、どこかに巣でもあるのだろうか。
フクロウ隊に警戒してもらいつつ、見つけたらサボに対応してもらおう。シエルもテイムで一応能力が上がっているとはいえ動物だし、敵も未知数だから戦闘はサボに任せたほうがいい。
これでこの村はもう大丈夫だろう。だが他の街や村も同様に襲われていた場合、対処が追い付かない。早いところ原因を突き止めないとね。




